あらすじ
認知科学で見る、人間の知性
推し活、二次創作、2・5次元、モノマネ、応援上映、ぬい撮り……
漫画やアニメの登場人物に感情移入し、二次元の絵や映像に実在を感じる。
はたまた実際に出会い触れることはほとんどないアイドルやアーティストの存在に大きな生きる意味を見出す。
これらの「推す」という行為は、認知科学では「プロジェクション・サイエンス」と呼ばれる最新の概念で説明ができる。
「いま、そこにない」ものに思いを馳せること、そしてそれを他者とも共有できることは人間ならではの「知性」なのだ。
本書では、「推し」をめぐるさまざまな行動を端緒として、「プロジェクション」というこころの働きを紐解く。
はじめに
第一章 ♯「推し」で学ぶプロジェクション ―応援―
第二章 プロジェクションを共有するコミュニティの快楽 ―生成―
第三章 「推し」との相互作用が生まれるとき ―育成―
第四章 ヒトの知性とプロジェクション ―未来―
第五章 とびだす心、ひろがる身体 ―拡張―
第六章 プロジェクションが認識世界を豊かにする ―救済―
(本文より)
「推し」に救われたという経験は、「推し」が自分に直接なにかしてくれたということではありません。
「推し」によって自分がなにかに気づいたり、自分がなにかできるようになったり、自分をとりまく世界のとらえ方が変わったということなのでしょう。
あらためて考えてみると、このような自分のありようとこころの変化は、本書のテーマである「プロジェクション」がもたらす事象そのものです。
はじめて聞いたという人が多いと思いますが「プロジェクション」とは、こころの働きのひとつで、認知科学から提唱された最新の概念です。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
著者は愛知淑徳大学心理学部教授。
推し活の心理を通して、プロジェクション・サイエンスとは何かを紹介している本。
この本によりプロジェクション・サイエンスに興味を持ったので、関連書籍を読もうと思う。
Posted by ブクログ
面白かった。
研究と二次創作の共通点、ずっと考えてたことなので同じことを言っている人がいてにっこり。
二次創作と、二次創作コミュニティ、推しとプロジェクション(各種の投射)との関係も語られてていい。我々は投射をしているのだ…。
Posted by ブクログ
おもしろかったー!推しがいる人におすすめ!自分と推しとの関係がよりわかる本。刀剣乱舞やキンプリなど実在のジャンルが取り上げられていてうれしかった〜。応援上映やぬい、腐女子など身近な例が多かったのも楽しかった!文もとってもわかりやすかったです。応援上映とか普段私たちオタクがしている事が先生の客観的な文になることによってより狂ってるのがわかって笑っちゃった。先生の新しい本も読むつもり。
Posted by ブクログ
とてもとても面白かった。夢中で読んだ!
二次創作をはじめとするオタク文化が好きなので、そのメカニズムについて詳しく説明してくれたのがとても嬉しかった。自分の行動に理由を教えてもらった感覚。
あと著者の話の引き出しの多さにも驚いた。一つの学問を追求するだけじゃなくて、いろいろな学問に目を向けて深掘りする能力って凄いなぁ。そんな人間になりたいものよ……尊敬です。
文章もわかりやすくてスラスラ読めました!
特に第二章が好きです。
Posted by ブクログ
「推し」を科学的視点からみるってなんて新しくておもしろい!
「プロジェクション」という言葉、初めて知りました。
著者の視点がおもしろく、推し活、二次創作、腐女子、モノマネ、応援上映、コスプレなどからプロジェクションということを学ぶことができました。
私は子供の頃から常に何かに「はまり」、いわゆる「推し」がいて、世界が広がったり人生をキラキラ彩ってくれています。
本を読みながら、共感ポイント多数、この気持ちは認知科学的にそういうことなのね!という納得ポイント多数。
楽しめました。
特に、二次創作と研究活動の共通点の話、マンガやアニメの実写化におけるプロジェクションがおもしろかったです。
「『推し』に自分の時間や労力、時にお金をつぎこんで、直接的な見返りがあるわけではありません。けれど、そんなことはまったく問題ではないのです。そうすることが人間としての幸せであり、その行為だけでもう十分な見返りをもらっているのですから。」
Posted by ブクログ
「推し」のタイトルに惹かれて読んだ。
対象に自分なりの意味を加えることが「推し」と理解したが、「推し」だけでない、身の回りにあるもの、起こるものも「推し」の思考につながっていることが見えて面白く読めた。
推しがあった人、ある人が読めば「そうそう!」となると思うし、今推しがない人も「そういう見え方なのか」と発見がある一冊。
Posted by ブクログ
私は推し活したことがないので、どうかな?と思って読んでみたが、プロジェクションという考え方はとても腑に落ちた。特に「ぬい」のところはなるほどという発見があって面白かった
Posted by ブクログ
「プロジェクション」という認知科学の概念を、推し活を通じて分かりやすく説明した本。プロジェクションは2015年にはじめて提唱された新しい概念で、「作り出した意味、表象を世界に投射し、物理世界と心理世界に重ね合わせる心の働き」を指すのだという。このプロジェクションという概念を用いて、腐女子たちがいかにして既存作品を元に異投射を行い(プロジェクション)、作品から立てた仮説的推論(アブダクション)を元にした二次創作を共有するかという説明は今まで見たことがなくて、とても興味深かった。そこにないものを見るだけでなくそれを他人とも共有するという人間の心の働きはそれを共有しない者にとっては奇妙に映るかもしれないが、人間の社会と文化に欠かせない働きなのだ。
Posted by ブクログ
プロジェクションサイエンスについては、こないだオーディブルで聴き終わった「心と現実」でなんとなく理解し、面白いな、と思ったので「推し」に特化したこの本を手に取りました。なんと作者さんが、「心と現実」を引き継いで刊行させた方の配偶者さんということが最後に明かされて、それがいちばんの衝撃でした。この事実を先にプロジェクションしてからこの本を読んでいたらどんな感じだったかなー、と思います。自分はこういう学際的な分野に興味があるので、これからの類書の発刊を注視します。あと、プロジェクションって、某レンガ本の新書ミステリィ作者の第1作のメイントリックに使われているよね?とも思いました。場合によっては人によって見えるものは全く違ってくるのですね。
Posted by ブクログ
「推し」についての心理学からのアプローチ。
主に「プロジェクション」についての論考。「投影」とは違うようだ。どちらかというと「共同幻想」に近いものかもしれない。
宗教もある種の「推し活」なのだなあ。
キーワードは「一体感」。
<アンダーライン>
★★★
「推し」に救われたという経験は、自分をとりまく世界のとらえ方が変わったということなのでしょう。
★★★★
「推し」を応援すると、行動でも感情でも「推し」との一体感が生じる
★★★★★
プロジェクションとは、作り出した意味、表象を世界に投射し、物理世界と心理世界に重ね合わせる心の動き
★★★
二次創作は創造的誤読
★★★
プログラムどおりに動かないのは、現実世界はノイズだらけだから
★★★★★
洞窟の中の壁画や彫刻は、仲間たちと物語を共有することで、集団としての絆をより強固なものにしたのではないか。この物語がプロジェクション。
★★★
サードマン現象
★★★★
ぼんやりした投射はその場にいる人に共有される。それが「マナー」です。
★★★★★
お守りはプロジェクション
★★★★★
物語とは不条理な出来事を受け入れるために、秩序を正しくしたい気持ちからできるのではないか
★★★★★
その人のプロジェクションによって見えているものを否定するのは、その人を否定すること
Posted by ブクログ
『推し』という概念を通して、人間がなにかに何かを投影する『プロジェクション』の営為とその精神的力強さを説明。具体例は少々冗長かもしれないが、言いたいことはとても良いと感じる。
Posted by ブクログ
最初は「KING OF PRISM」の推しの話だったのに、人間の認知の仕組み(認知科学)から、キリスト教の最初の教義の伝わり方、果ては3万2000年前に作られた彫刻「ライオンマン」やホモ・サピエンスが大航海をして居住地を広げた話にまで繋がってきたりして、途方もない広がりです。「プロジェクション」の例で「人間国宝が作った茶碗」の話は分かりやすい。「ロボットが落語を楽しむのは難しいかも」にはなるほど。日常生活において、「亡くなった人との“会話”=プロジェクション」からは、「すずめの戸締まり」を連想した。
Posted by ブクログ
非常に身近な例を使って書かれているので、プロジェクションとは何か、大変分かりやすかった。自身の趣味(推し活)について、興味の対象について、新しい視点から俯瞰することが出来た。腐女子からノーベル賞まで話題も幅広い。
Posted by ブクログ
「プロジェクション」という聞き慣れない言葉だけれど、推しを推す行為に重ねられると、すごく腹に落ちました。自分自身、二次創作もぬい撮りもコスプレもするので、「この行為すべて、プロジェクションなのか…」と思うと、面映い気持ちになりました。
Posted by ブクログ
流行に乗った安易な本かと思いきや、思いがけず深く広大な世界を垣間見させてくれた。「推す」とはすなわち「プロジェクション」(投影・投射)であり、二次創作や2.5次元、ぬい撮りなどもすべてこの心の働きで説明できる。そしてこのプロジェクションこそは、社会という「物語」を成り立たせている人間特有の現象である…。考えてみれば神話も宗教も貨幣も国家も法人も、人間の心が作り出したイメージの「投影」なのだから。「推し活」からこんな壮大な人類史がひもとけるとは思いもしなかった。
Posted by ブクログ
プロジェクションとは作り出した意味、表象を世界に投影し、物理世界と心理世界に重ね合わせる心の働きを指している、という鈴木宏昭の定義が説明されていた。それだけではなく、ファンの心理も実験で紹介されていた。心理学以外の認知心理の概説本としては良い。
Posted by ブクログ
面白かった!
腐女子をやっていたこともあるし推しもいる身なので共感しながら読めた。
応援ひいては分け与えることの幸福と、プロダクションやそれに伴う物語は感覚として感じたことがあったものの言語化した事がなかったので実験の話と共に読めてとても勉強になった。
トラウマ的体験に対し、物語を作り出すことで解消や折り合いをつけようとする様は梶井基次郎の『桜の樹の下には』も思い出す。
物語は感情を変化させる術かもしれないと思いました。
Posted by ブクログ
二次創作の話は心当たりがあることばかり書かれていて恥ずかしかった。
ぬいぐるみへの投射は理解できなかったけどこの本にも書かれていた通り他人のプロジェクションを馬鹿にしてはいけないなと思った。でも本人ではなくぬいぐるみに旅させる「ウナギトラベル」は面白い発想だなと思った。病気で旅行に行けない人でも擬似体験できるから良いサービスだと思う。
ネアンデルタール人が全滅して私たちの祖先であるサピエンスが生き残った理由の話が一番面白かった。「推し」とは程遠いことを語っているようで、人々が推しに熱中できる理由がしっくりきた。今そこにないものを想像し、そのために行動できるって人間ならではの知性なんだなと思った。二次創作も結局は空想なんだけど考えずにはいられないし形にしたくなる。
著者の別の本では推しに入れ込んだ末路が書かれていたけど、何だかんだ推しがいるっていいことだと思う。私の場合今の推しがきっかけで絵の練習を頑張れているから人生の良いきっかけになっていると実感してる。何事もポジティブに活かせればいい。
Posted by ブクログ
いわゆるオタク側に属した研究者としての主張が(著者の本来の専門とは異なるとされているが)最終的に効能的であるという結びつきに至るとご都合主義に思えてしまうのは、趣味の延長上でゲームやSFを語る場合に比べて生々しいからだろうか。プロジェクションの概念はおおよそ認知科学的なものと理解したが、推しあるいはファン活動的な振る舞いにおいて、プロジェクションの効用なるものがアンケートベースでの解答に依拠する部分などは果たしてといった感じもあり、あまり面白みも感じなかった。
Posted by ブクログ
「推し」を通して「プロジェクション」を学ぶ。
なるほど…「投影」ね。
「推し活」の不思議を解明してくれた。
特別に変なことではない、ってこと。
ただし、その「投影」は人それぞれであって、多様性を認めないとコミュニティとしては成り立たないわけだ。どの世界も多様性を学ばないといけないね。
推し活で、人生に彩りを!
Posted by ブクログ
2024.03.04 とても楽しく読ませていただいた。プロジェクション・サイエンスをよく知らなかったのでとで勉強になった。著者の方の人間性が本のそこかしこに出ていて、とても素晴らしい研究者の方なんだなぁと思いました。
Posted by ブクログ
本書の「おわりに」の中に、「私の『推し』はプロジェクションだったんだ!」という筆者の言葉が書かれています。そして、自分自身プロジェクション研究に対して行っていることそのものが「推し活」そのものであったのだという筆者の気づきが表明されています。
本書の特徴は、このエピソードに語り尽くされているように思います。
「『推し』の科学」というタイトルから誤解されることもあるようなのですが、本書は、むしろ「(誰か・何かを)推す」という行為のありよう、「推し」文化といったものについて科学的に解説した書籍ではなく、むしろ「推す」という行為やそれにかかわる文化現象を入口に、プロジェクション・サイエンスの魅力をより広い人々に発信しようとすることをねらった書籍だと思います。
まさに、プロジェクション・サイエンスの「推し」活として発刊された書籍といえるでしょう。
プロジェクション・サイエンスに魅了され、その「推し」活として書かれている本なので、同じ対象を「推す」ことができず、見えているものどころか、世界の「見え」そのものが異なる私のような人間にとっては、見えている世界の異なりばかりが印象に残ってしまいました。
もっとも自分の中で受け容れがたかったのは、「通常の投射」「虚投射」「異投射」という考え方です。本書を最後まで読んでいくと、一人ひとりによって異なるものとしてのプロジェクションについて言及されていると思われる箇所もあり、そうであればなぜ、「通常の投射」という考え方を提示する必要があったのだろう…としばらく悶々と考え続けてしまいました。
他の人々と共有可能な「通常の投射」なるものを想定できず、世界の「見え」の多元性を前提に議論してきた人間にとっては、何が「通常」で「虚」で「異」であると言えてしまうのか、というところで引っ掛かってしまい、それ以降の議論をしっかり理解しきれなかったところがあります。
この他にも、用語の意味がいつの間にかずれてしまっているように感じるところがあり、最後まで、自分が「きちんと読めた」「理解できた」と思えないまま、「おわりに」に辿り着いてしまいました。
一方、プロジェクション・サイエンスっていろいろなことが分析できそう!すてき!という魅力そのものを伝えることには、成功しているのだと思います。「プロジェクション・サイエンス」という言葉を聞いて「なにそれ?」と思った人が「面白そう!知ってみたい!」「もっと関わりたい!」と思うためのルートはしっかり確保されているように思います。そういう意味では、新しい認知科学のキーワードを知って、自分の身の回りの現象を語りあって盛り上がりたい方には、おすすめだと思います。
Posted by ブクログ
「推し」=受け身的な愛好だけでなく能動的に何か行動してしまう対象
応援すると行動でも感情でも「推し」との一体感
プロジェクションと その共有
意味表象を世界に投影、物理世界と心理世界を重ね合わせる心の動き
妄想 アダプクション=最善の説明への推論
二次創作 科学理論の醸成
認知科学と人工知能
モデル 情報の流れの図示
推し=お守り 認知活動
Posted by ブクログ
プロジェクションという概念は、「大好きなもの(推し)の世界」と現実(自分)とを結び付け、いろいろなモノ、コト、ヒトを価値付けることで、見えないものが見えてくることというのが面白かった。