【感想・ネタバレ】一億総ガキ社会~「成熟拒否」という病~のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

精神科医として臨床現場でお仕事をされている筆者が、近年増えていると感じる「打たれ弱い人間」「他責的な人間」「依存症の人間」の三者を対象喪失の克服という観点から見直している本です。
この本はすごく参考になりました。私自身、「喪失」の過程にいたものですから、それをどうやって乗り越えるのかが参考になりましたし、元気も出ました。同時に今という時代の残酷さや生きづらさもヒシヒシと感じ取ることが出来て、生き方を見直す良いきっかけになりました。
「諦める」というよりも「挫折を受け入れて努力すること」が大切なのであって、同じ失敗を繰り返しても諦めないでしがみつき続けるということは、学習能力がないと言わざるを得ません。失敗から学ばないのがダメになる原因だったんです。また、挫折したからと言って全てを放り出してしまうことも愚かなことです。
まず何よりも挫折を自分の痛みとして受け入れること、受け入れてなおやる気があるなら頑張れということなんだなぁと。
痛みから立ち上がるのはとても大変なことですが、頑張らないとなぁと気が引き締まりました。

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2011年02月08日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 自分がまさに積極的に成熟を拒否したいと思う人間なので手に取った。大変示唆に富む内容で、自省を促される指摘も多々ある。また、大人=理想的人間とはどうあるべきか思惟を喚起してくれる。
 ただ、冒頭で筆者自身も「成熟における『対象喪失』という側面に着目して、~一つの切り口を提示してみたいと考えている」と言っているため、分かった上であえてそうしているのだとは思うが、いくらなんでも全てを「対象喪失論」と結びつけすぎではないだろうか。こじつけと思える部分もいくらかある。
 例えば、幼児的万能感の喪失に耐えられない大人がモンスタークレーマー化するとの主張だが、そもそもその万能感を持っている当の幼児はモンスタークレーマーだろうか。むしろ知らない相手に対しては萎縮するのではないか。子どもは車に轢かれても「轢かれ逃げ」する。電車内でトラブルを起こすのも幼児でも未成年でもなく、決まって成人だ。そういった意味で、幼児は確かにある種の万能感を持ってはいるが、モンスタークレーマーと言われる大人の持つ万能感とは少々質の異なるものなのではないだろうか。
 薬物依存についても、対象喪失に耐えられないためというケースも多々あるのだろうが、単純にカッコイイからとか、フィジカルな快感を求めてとかといったケースもあるのではないだろうか。
 「対象喪失論」の流れに全てを収束させようとするあまり、どうも安易なこじつけに見えてしまう箇所が少なからずあり、論理的に突っかかってスムーズに頭に入ってこないところが残念だった。テーマ自体は大変興味深いので、このあたりが改善されたらより面白い内容になったと思う。

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2020年06月20日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「打たれ弱さ」「他責的傾向」「依存症」という三つの問題の根源に横たわるのは同じ病理であるとして、「成熟拒否」の人々、「対象喪失」をきちんと受け止められない人々が増えているという近年の社会現象を、精神科医の立場から読み解いた一冊。このような社会を「一億総ガキ社会」とばっさり切り裂く著者についても興味が湧いた。

(要旨)
著者(精神科医)が最近の臨床現場で感じている、三つの特徴的な傾向がある――1.ひきこもりの増加にみる打たれ弱さ、2.何でも他人のせいにして切り抜けようとする他責的傾向、3.覚せい剤や合法麻薬などにすがる依存症の増加……。これからの根源に横たわるのは、実は同じ病理である――いずれも、「こうありたい」という自己愛的イメージと、現実の自分とのギャップが大きすぎ、ありのままの自分を受け入れられないのである。「自分は何でもできるんだ」という空虚な幼児的万能感をひきずったままの若者・大人の増加。その「成熟拒否」の背景には、親の過大な期待と、現在の幼・青年期には失敗や喪失体験が少なく、精神分析でいう「対象喪失」が機能しなくなっていることがある。本書では、臨床例・事件例をもとにこの問題を分析。喪失を受けとめ、地に足のついた真の再生を果たすための処方箋を示す。


子育てや教育は、「いかに失敗させるか」ということがとても重要であることを再確認。チャレンジを推奨して、一方では失敗した時のケアをしてあげる大人の存在が必要不可欠。
日本社会全体的にトライ&エラーができ易い教育の仕組みを構築することが急務なのだけど、なかなかそうはならないのが日本社会のメンタリティの部分での根深い問題。

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2012年02月26日

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