【感想・ネタバレ】円安が日本を滅ぼす 米韓台に学ぶ日本再生の道のレビュー

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Posted by ブクログ

まさに日本は円安傾向が激化。諸外国のインフレ抑制策としての金融引き締め策となる金利上昇に対し、日本がグズグズしている所為で、どんどん円が流れていく。理屈は分かるが、円安ってそんなに悪い事だっただろうか。輸入コストは上がるが、輸出額は上がる。海外生産が日本生産に回帰するという意味でも良いイメージもあり、積極的に円安政策を取っていた気もする。しかし、足下は全く良い兆候には無い。勉強したいと思った。

結果、無茶苦茶勉強になったし、面白い。野口悠紀雄の著書を他にも読み漁ろうと思った程だ。メモも沢山取った。韓国と台湾との比較という分かりやすい構図も良かった。

例えば、インフレの話。物価上昇率が低いと年金のマクロ経済スライドを実行できないが、インフレ率が一定率以上に高まれば実行でき、年金の実質額を減少させることができる。公的年金の総額は20年間で1000兆円を超える。年金財政の維持のためにも物価上昇率が高いことが望ましく、国はインフレを志向する傾向を持っている。

円安の絡繰について。輸出産業から見ると企業利益が増加する円ベースの売り上げが増える一方で、原材料価格の高騰しても、それは製品価格に転嫁できる。しかし、円安は技術開発を阻害するため、長期的に見れば経済の成長を妨げることとなる。2000年以降日本は円安政策をとった。その間、輸出は増えたが、輸入も増え、貿易収支は悪化した。また賃金も上昇しなかった。20年以上の期間にわたって円安政策がとられてきたが、結果、古い産業が温存され日本経済の衰退がもたらされたという事。

また、日本経済の衰退はバブルの崩壊と言うよりも中国の輸出が増加したことが原因。日本の輸出国としての世界シェアは1986年にピークとなりそれ以降低下。日本は中国に対して円安で古い産業を残そうとしたため経済が衰退。

他にも半導体不足の真相、テスラのビジネスモデル、経済安全保障において重要な事など。読後、視界がよりクッキリしてきた。

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2022年09月07日

Posted by ブクログ

ネタバレ

政府の補助は逆効果。農業、国立大学、半導体など。アメリカのIT産業、大学は補助はなく、規制がないだけ。
日本の地位低下は、円安と低成長のため。

購買力平価は、相対的購買力平価と絶対的購買力平価がある。ビッグマック指数は絶対的購買力平価。
IMFやOECDは、絶対的購買力平価を計算している。
日銀の統計サイトは、2010年を100とする実効為替レート指数を発表している。

GDPの中の賃金比率はほぼ一定。株価は過大評価。ゼロ成長で賃金が上がらない。
生産性は就業者一人当たりのGDP。
賃金構造基本調査、毎月勤労統計調査、民間給与実態統計調査、法人企業統計調査、家計調査、など。
OECDは、パートタイムの労働時間を勘案している。FTE(フルタイム当量)という考え方に基づく。アメリはは、FTE方式によるデータが公表されている。日本にはない。

実質賃金上昇率と、一人当たり実質GDPの増加率はほぼ等しい=儲からなければ賃金はあがらない。労働分配率はほぼ一定。
消費者物価の上昇率と実質賃金の上昇率は相関しているが因果関係にはない。
資本整備率はGDPの増加の主要な原因ではない。生産性の上昇の結果、実質賃金が上がる。
製造業ではハイテク製品の比率が、台湾韓国の方が高い。人材が確保できない。

円安は古い産業を温存し、長期的に見れば技術力を奪う。
韓国は、外需への依存度が高い(40%程度)。日本は10%程度。通貨安を求めていない。日本だけが通貨安政策をとっている。韓国は通貨安ではないが経常収支は黒字。輸出競争力が向上している。
1995年頃に比べると、輸出は2倍程度だが輸入はもっと増えている。日本製品の競争力が落ちている。

インフレ税は最も過酷。

90年代中ごろ以降、名目GDP、企業の売上高は横ばい。原価率も一定。分配率は変わらないから賃金も一定。
日本の輸出は80年代中頃がピーク。バブル崩壊前から問題が生じていた。
中国の工業化に対して、価格で対抗しようとした。=賃金の上昇を抑え、円安誘導した。ボリュームゾーンを狙ったため安売り戦略にならざるを得なかった。
韓国台湾はハイテク製品にシフトした。
株価は、国際的に見れば場部府崩壊後、落ち込んだまま。時価総額をドル換算する。
バブルの崩壊のせいではなく、技術革新ではなく安売り戦略をとったため。

時価総額トップ100で入っているのはトヨタだけ。ドイツの自動車は全部外れた。ドイツはSAPだけ。製造業はファブレス企業が主流になった。

トップの企業は従来型産業分類になじまない。GAMMA。どれもスマートフォン産業。テスラは自動車ではなくソフトウェアに価値がある。
時価総額は、日本の銀行がバブルであったように万能の指標ではない。
ビジネスモデルを変えない企業の時価総額が増えることはない。
サムスンとTSMC。
GAMMAの時価総額だけで日本市場の1.5倍。
TSMCの日本工場は、最先端のものではない。
台湾の輸出は40%が中国向け。
「アメリカのIT企業が設計し、台湾のEMS企業が受託し、中国で組み立てを行う。それをアメリカに輸出する。」

台湾と韓国の問題点
産業構造は情報化に向けて変化したが、製造業の割合がまだ多い。貿易依存度が高い。人口減の問題。
2040年までGDP成長率は韓国は2%超。資本技術要因によるもの
韓国の人口減少は急激だが、資本蓄積や技術で緩和できる。
日本の大学進学率は54%程度。アメリカは88%、韓国は95%。
アメリカは人口増加率が高く女性の就業率も高いので、労働供給の面から成長が阻害されない。
韓国は出生率が低下しているが、教育によって質的向上を図っている。
日本は、出生率が長期にわたって低迷。経済成長の重荷になっている。

シャープの亀山工場は、垂直統合。コスト削減を目指した。量を追求するためにボリュームゾーンを狙った=価格競争に陥ってサムソンやLGに負けた。戦艦大和と同じ。円高と法人税が問題だとされた。
TSMCの熊本工場への補助金は、古い技術のため復活することはない。最先端の技術に補助金を出さなければ意味はない。実際はソニーに対する補助金。
補助金がないから弱体化するわけではない。補助金を出すのは弱体化した産業だから。

食料自給率を高めると凶作の時食糧不足になる。供給源をできるだけ分散することが食糧安全保障の基本。サプライチェーンも同じ。自国生産ではなく供給源分散化。

技術が強ければ、つぶれない。最強の取引材料。
中国のレアアース戦争は、日本が都市鉱山からの回収を行ったことで収まった。技術が勝利の源泉。

日本はアッセンブリの技術にたけている。自動車など。水平分業化で誰にでも組み立てができると強味を発揮できない。EVは水平分業が可能。
テスラは購入後、インターネット経由でアップグレードできる。バッテリーの容量、シートヒーター、ナビゲーションなど。ハードはあらかじめついている。お金を払ってアップグレードできる。ソフトとハードの切り離し。

政府の役割は、補助金ではなく既得権をなくすこと。政府は将来を見通すことはできない。追いつく時代とは違う。
エコカー減税とエコカー補助金、家電の購入への補助金など。
農業は、生産者米価が保証されたから改革が進まんかった。旅行業、タクシー業界も同じ。参入制限がある。フィンテックのための金融業の規制緩和が必要。

東大の農学部のウエイトは異常に高い。コンピューターサイエンス学科は東大にはない。
スタンフォード大学は21世紀の大学。IT革命はスタンフォード大学から起こった。グーグル、ヤフー、シスコ、サンマイクロシステムズなど。
農学部は都心に広いキャンパスを持っている。
高度成長期は、学部学科を新設できた。今はスクラップしないと作れないがスクラップができない。

日本は、年功序列賃金が続いている。アメリカは35歳以降、ほとんど年齢差がない。
大学院の教育に対価を払うアメリカ、日本は価値を感じない。OJTで教えることが一般的。専門知識を軽視している。あるいは役に立つ専門知識を教えていない。

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2022年10月24日

Posted by ブクログ

野口悠紀雄「円安が日本を滅ぼす」
日本の停滞30年の本質・原因を探る→処方の実行は次の世代に託す
1.円安は麻薬 輸出企業へ不労所得・利益 怠惰にする
2.巨大工場は戦艦大和 プラズマテレビ・液晶テレビ 大鑑巨砲主義イデオロギー
3.台湾・韓国に学べ 中国製造大国化への適応 日本は低価格戦略
4.GDP=労働人口+資本+技術・イノベーション 先行投資が大事
5.大学の改革を「農学部偏重 予算・教員7%  就業者・生産1%以下」
いよいよ江戸幕府の最後に似てきた日本

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2022年10月23日

Posted by ブクログ

日本は、先進国の位置から滑り落ちる寸前まで、経済が衰退してしまった。その原因はなんだったのか、今、必要な対策は何かについて、米、韓、台湾との比較や円安政策の過ちといった観点から解説する本。
以下に要旨を箇条書きする。
①最近では一人当たりGDPは韓国、台湾とも日本とほぼ同レベル。このままいくと、いずれ日本を追い越す
②日本は2000年以降、顕著な円安政策をとり、輸出は増えたが、輸入も増え、貿易収支は悪化、賃金も上昇しなかった。
③一方、韓国、台湾は通貨価値を維持、貿易黒字が増え、GDPが増え、賃金も上がった。
④中国の工業化に対し安易な手段で利益回復を図り技術革新を怠った日本企業に比して、韓国はサムスン、台湾はTSMCといった最先端半導体に代表されるように技術革新の努力で輸出競争力が向上し、実質賃金も上昇した。
⑤アメリカでは製造業の比率が低下して情報処理産業の比率が上昇し、賃金が上がったが、日本で相変わらず自動車が大きなウェイトを占め、産業構造は変わらない。
⑥日本は物価も安いが、賃金の低さから介護人材など国際的な人材確保の面で問題が生じる。
⑦アメリカ企業は半導体の設計を行い、工場を持たないファブレス企業。半導体の製造はTSMCなどに任せ、それを中国でスマホやパソコンに組み立て欧米市場に輸出する国際的水平分業体制が確立されている。対する日本は自動車に代表される垂直統合型。
⑧国が4000億円補助して熊本に誘致するTSMCの工場で製造する半導体は最先端ではなく、「レガシー」と呼ばれる22~28nmプロセス。アメリカが誘致するのは5nmの最先端。
⑨日本の半導体産業は補助金漬けになって衰退が加速化。
⑩政府の補助は、従来型の企業の生き残りを助けても、新しい産業や企業の誕生を阻害してきた。その典型が農業。
⑪政府の役割は成長を妨げる既得権益を見直す方向で規制緩和や規制撤廃を行うこと。
⑫自動車産業は日本の最重要産業だが、EVになると、これまでの強みだった「擦り合わせ」が重要でなくなる。テスラは自動車のハードとソフトの切り離しに成功し、「購入後にインターネット経由でアップグレードできる」といった新しいビジネスモデルを確立した。     ⑬経済安全保障を実現するためには、農業補助金のような保護行政ではなく、供給源分散化に目を向けるべき。供給源として生き残るために技術力が必要。
⑭かつて、尖閣諸島で中国人船長を海上保安庁が逮捕した際、中国からレアアース輸出規制を受けた。しかし、日本は都市鉱山からの回収やリサイクルにより切り抜け、さらにより少ないレアアースで性能のよい製品を開発し、勝利した。このような技術力が経済安全保障で最も重要。

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2022年09月18日

Posted by ブクログ

わかりやすい。日本が、ダメな理由が。
成長させないといけないのに、企業も従業員を成長させないといけない。お金を配るだけでは、進歩がない。補助金配るなんて、弱体化まっしぐら。

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2022年07月10日

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