【感想・ネタバレ】ひげの殿下日記 ~The Diary of the Bearded Prince~のレビュー

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Posted by ブクログ 2022年11月25日

寛仁親王殿下が、会長をされていた福祉団体「柏朋会」の会報に毎号寄せられていたコラムをまとめたもの。寛仁親王殿下が普段どのようなことを考え、行動されていたかが理解できる。国家への想いは深く、病気と闘いながらも常に前向きに活動されているお姿に感銘を受けた。障碍者も自分の力で立とうとする姿勢が大事であって...続きを読む、国や他人から支えられることを前提としてはいけないという厳しいお考えには、全面的に賛同する。寛仁親王は、「間違っていることは、断固として正すべき」との強い信念をお持ちであり、その姿勢が素晴らしい。勉強になる一冊であった。

「健常者による同情心やほどこしの気分をベースにした行為があり、極論すれば差別になってしまう。我々は、このような福祉はもう結構といいたい。ではどのような福祉であればいいのかというと、以下のようになる。障害を持った人と付き合う場合、その人の障害部位に対して「さぞご不自由でしょうね」といったところでその障害が治るわけではなく、本人は確かに不自由であるが、前向きに一生懸命生きているのに、と思うに違いない。健常者は身障者の障害部位をよく認識し、運動機能の範囲をよくつかんだ上で、両者で何ができるかを考えていけばよい」p24
「よく見られる点に、健常者の親切の押し売りがある。私の経験だが、多くの施設を回っている間、よく訪問のお礼に、言語障害の人の謝辞があったが、たどたどしい発言力が可哀想で、途中で話をこちらで取ってしまい、少しでも早く終われせてあげようとしたことがよくあった。これは大きな間違いであって、言語障害の人は、多分謝辞をのべる何日も前から、必死の練習を繰り返していただろう。もし時間がかかったとしても、私の前で言い切ることができたら、大変な自信になったであろうに、私の間違った親切心のために、全てはパーになってしまったことになる。聞く人の方に時間さえあれば、最後まで聞いてあげることが最大のヘルプとなる」p25
「本来地道にやるべき福祉団体サイドにあっても、便乗主義の風潮が、多々見れます」p57
「自分の物は自分で持つのが当たり前で、滑る時、お供がスキーやストックを持ってついて歩くなどということは皆無です。例外的に、数年前北海道警察本部長が、初めてスキーをした時、秘書官共がスキー靴の着脱を手伝っているのを見て「三笠宮妃殿下(私の母)ですら自分でやっているのに、貴様ごときが何事だ!」と怒ったところ、その後左遷されたのか、私の目の前には現れていません」p63
「(大山名人から将棋三段免状授与)その授与式の時に大山名人から聞いた話ですが、歴代の総理大臣は、佐藤さん、田中さん、福田さんが六段位で、どういうわけか三木さんだけが五段なんだそうです。そこですかさず私は、「本当に彼らは強いの?」と聞いたところ、大山名人の言うには、「私が色々な人から聞いた殿下の腕前なら、彼らよりは、はるかにお強いですよ」ということでありました」p68
「私共の正月風景をいくつか書いてみようと思います。元旦はエンビ服に勲章をぶらさげて皇居にカンヅメとなります。我々がまず両陛下に新年のごあいさつを申しあげます。次に両陛下のお供をして、宮殿の各部屋を回って参列者の祝賀を両陛下がお受けになるのに供奉(ぐふ)します。総理大臣と閣僚・衆参両院議員・最高裁長官と判事・各国外交団という風に順番に祝賀をお受けになります。中曽根さんは、緊張のせいかちょっぴりつまりましたが、ほぼすらすらとあいさつをしました。最高裁長官は、とうとうと始めたので、本年一番かと思って聞いていたところ、途中で、何でもないところでつまった途端、簡単な言葉、「新春のおよろこびを」か、なにかが出てこなくなってずい分長い事止まってしまいまいた。衆参両院議員の部屋では両院議長が、二人で代表してあいさつをし、うしろに出席を希望した両院議員がずらりとならんでいるわけですが、私の立つべき所にいって、ザアーとながめたところ幾人も知った顔がいましたが、私からみて右手の3列目位に、麻生太郎(ノンチの長兄)がみえたのでニヤッとしたら向こうも、しゃっちょこばって拝礼を返してきました。出口に向うとき、ノンチに太郎がいるぞと教えたら、ノンチにも拝礼をしていました」p123
「元旦はこういう風に一日中皇居にるために、年賀のお客様をわが家で迎えることができません。従って2日が、各宮家ともその日にあたります。3日は元始祭(げんしさい)といって、我々一般皇族が、初めて賢所に参拝します(陛下は元旦の明け方からお祭りをなさいます)。賢所のお祭りには大祭と小祭があり、大祭の時は私はフロックコートを着ていきます。その上にインパネスと呼ばれ、通称二重回しといわれるオーバーを着て、シルクハットを持ちます。このお祭りが済むと丁度、3日は高松宮殿下のお誕生日なので伯父様のお宅にうあがってプレゼントを差し上げ、祝膳をいただきます。今年は、お祭りが終わって家にもどってきたら年賀の客が来ていて話し込んでしまったので、私にとっての昼食を伯父様の所で食べたというかっこうになりました」p124
「(多忙)手帳を見返していたら、1月15日からGWのスタートまでの間で、驚いたことに、4月8日ただ1日のみが休日と呼べる日であることに気づいた。スキー教師だから、冬が忙しいのは仕方のないことだが、1日しかお休みがなかったというのは、困ったことである」p182
「お見舞いに来てくださって、お別れの時の言葉は、「頑張って」より「お大事に」が適切であると思います」p203
「自ら「ボランティア」をしています、と言ったとたんに、それは真のボランティアではなくなる、という事実に我々は、もっと早く気付くべきだと思います。そのことが美徳であると思ったり、誇らしいことをしていると思った時点で、それは売名行為とはいわないまでも、純粋で高潔なる無償の行為ではなくなるでしょう」p209
「「親子の間」「先輩後輩」「夫婦の間」「友達同士」「日本人と外国人」「会員同士」総ての人々の間を常時円滑な状態に保つ秘訣は、「話し合い・語り合い」から始める以外差し当たって正しい方法論はないと私は思っています。「多様化した社会」「情報化社会」「国際化社会」というふうな耳障りの良い言葉を右耳から入れて左耳から即刻出してしまうことなく、きちんと右脳と左脳で受け止めて、消化した上で自分の意見として身につけ、しかる後に一歩前進する癖を一人一人が実践して戴きたいと思います」p225
「いくつものテーマの中の一つに「障害を持つ者が、健常者と呼ばれる人々によって構成されている社会に飛び込んで、堂々と彼等に伍して、切磋琢磨して、生きていくことの大切さ」があります」p237
「数日後の夕食時に、彬子が「50枚何とか売れました」と宣ったのには、吃驚仰天しました。一両日の間に電話作戦で、仲間たちに連絡をつけたわけです。カミさんのお腹の中で、自衛隊のブラスバンドを胎教として聴きつつ生まれた女の子が、15年後には、親父の仕事を理解し、大人でもなかなか難しい切符売りという作業を、それも50枚も「あっという間」に完売してしまったということは、驚異的ですし、親父としては、何とも言えない感動にただただ浸るのみでした」p240
「人生で、一番大切なことは「人を知る・識る」ことと私は理解しています」p244
「我が国が世界の孤児にならないためには、「日本の常識」を大切にしつつも「世界のコモンセンス」を、我々自身もものにする必要があると言いたいからです。「コモンセンス」とは、「常識」と訳すより、どちらかと言えば、「教養」と解釈すべき言葉と思います。外国では、自国の歴史・経済・文化・芸術・学問といった各分野の大要を、少なくとも、大学生以上の大人は知っています。そしてそれらに関する自分自身の意見を、明確に持っています」p310
「われわれ日本人は、自分の分野のことは、結構詳しく知っているのですが、他分野のことは知らずに、興味もないという人が大勢いるのが現状です。黙ってこのまま行くと、近い将来、我々は世界中から袋叩きに遭う可能性があります」p311
「官民ともに、自分たちのやっていることに、「疑問を感ずること」をせずに、惰性でことを為している弊害以外の何ものでもありません」p312
「「人間を育てる面白さ」「人間を動かす喜び」といったものの感動は、比較するものがないくらい、素晴らしいものだと思うのです」p327
「結局のところ、「人間」または「男」の究極の目的は、ミュージカル『マイ・フェア・レディ』の「ヒギンズ教授」なのだと思います」p327
「暗殺と毒殺の危機を潜り抜けてきた皇族一族には、「水・生野菜・蒸しあわび」程度で変調を訴える人間など、一人もいないのです」p366
「長女を例にとると、幼児のころから読書好きと、勉強大好き人間ですから、「日本語」が豊富な読書量と、家族や友人達との多彩な会話量により、立派に確立していますから、手紙を書く、エッセイを綴る、スピーチをする、どれも見事にこなします」p383
「「民主主義」の原則の一つである「平等」は、誠に高邁な理念ですが、「男女平等」とは、「機会の平等」であって「結果の平等」ではないという事実を国民はわかっていないでしょう」p385
「知ったか振りが一番みっともなく、教わることをしないことは、もっと恥ずかしいことであり、知らずして自己中心に、夜郎自大な挙措動作に走るのは最悪だと思います」p387
「私が今でも大切にしている先輩に叩き込まれた考え方に「二者択一を人間は常にせまられる。その時はどちらを選ぶにせよ、まずその二者についてできるだけ関連する本を読め。次にあらゆる人々に相談せよ。そして最後に自分の頭でそれらを踏まえてトコトン考えてみて、納得がいった時点で、初めてどちらかを選択して一歩踏み出せ」というものです」p462
「日本人位大らかに何物をも受け入れ、小悪は数多あれど、大悪は皆無といっていい国は、世界で唯一です」p489
「基本的な服装のルールはいくつもありますが、まず周囲の人々に不快感を与えないことが第一でしょう。そして「おしゃれ」の本質とは、服装のRMEを全部知りつつした上で、自分流に、「崩す」というところに最高の楽しさがあります」p530
「「万世一系」つまり、「男系」で125代2670年間も継続してきた家系は世界に一つしかなく、歴史の奇跡といえるでしょう」p536
「今は何でもありで、驚くことも差別・区別も少なくなったと思いますが、その分「人間同士の絆」が細いような気がします」p562

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