【感想・ネタバレ】ブラームス「音楽の森」へ<CDなし>のレビュー

あらすじ

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ブラームスは気になる作曲家!でも、膨大な作品数。どの楽曲から聞いたらいいのか判らない……という方のためブラームスの生涯を辿る楽曲を選曲。有名な交響曲第一、第三より抜粋した楽章から、「子守歌」「ハンガリー舞曲」、さらには普段あまり聴く機会のない「ドイツ・レクイエム」なども。また、本書のためにドイツ、オーストリア各地で撮り下ろした美しい写真をふんだんに盛り込みました。ブラームスは夏の間、避暑地で作曲にいそしんだそうですが、まぁそこの風光明媚なこと!湖と森、アルプスの山々など、この絵のような風景があの音楽を生んだのか……と思わず納得のビジュアルも必見です。※電子版にCDは付属していません。あらかじめご了承ください。

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Posted by ブクログ

「名作曲家・ブラームスの『ハンガリー舞曲集』が生まれた経緯」

「ハンガリー舞曲第5番」というタイトルに見覚えはありませんでしょうか。ピアノを習うと必ず通る道。そうでないかたも、一度クラシック音楽の道に足を踏み入れると、やはり通る道。タイトルに見覚えがなくとも、耳にすれば「この曲は……!」と知っておられるかたも多いはず。

どことなくせつなさを醸し出すこの曲の旋律は、多くのかたの支持を得て現在も世界中で奏でられていますが、この曲、実は“いわく”付きなんです。ご存じでした? 今回はその“いわく”の内容について、少しお話をいたしましょう。作曲したのは、ドイツの作曲家でピアニスト、指揮者でもあったヨハネス・ブラームス(1833-1897)です。

 * * *

情熱的で哀愁を帯びた曲がずらりと並ぶ≪ハンガリー舞曲集≫。全部で21曲から成るこの曲集は、≪ワルツ集≫同様もともと連弾用に書かれ、4集に分けて出版されました。

タイトルに「ハンガリー」と付いているのは、この曲集に、当時のハンガリー領にその多くが住んでいたロマ民族の音楽(ジプシー音楽)の特徴が取り入れられているからで、この頃ハンガリーと二重帝国を築いたオーストリアでは、それまで他国で排斥されがちだったロマ民族を受け入れる政策をとり、彼らを「新ハンガリー人」と呼んでいたのです。

そもそもブラームスがロマの音楽と出合ったのは、ハンガリー出身のヴァイオリニスト、レメーニがきっかけでした。以来ロマ音楽の旋律を聴く度、メモに書き留めるようになったのです。もっとも、ブラームスは民族音楽だけでなく、かねてから民謡にも深い関心を持っていました。(中略)

今や≪ドイツ・レクイエム≫で、作曲家として名声と不動の地位を築いたブラームス。が、さらに同じ年(1868年)、この≪ハンガリー舞曲集≫の第1集と第2集で、その名がより広く世に知れ渡るようになります。(中略)

ブラームスの生活もようやく安定し、作曲だけで生計が立てられるようになりました。当時は著作権のシステムが確立し始めた時代。それまで作曲家は、楽譜を出版しても最初の契約時以外報酬を保証されていませんでしたが、ブラームスの時代になり、作曲家はようやく自分の著作に対し、正当な報酬を主張することができるようになったのです。

もっとも、そんなブラームスの成功に横やりを入れる人物もいました。かつてブラームスにロマ音楽を聴かせた当の本人レメーニが、≪ハンガリー舞曲集≫にはそれぞれ原曲があり、ブラームスはその旋律を盗用していると抗議したのです。

この問題は後に裁判沙汰にもなりますが、もともとブラームスがこの作品集を編曲として発表し、作品番号を付けていなかったことから、ブラームス側の勝訴に終わります。

~『ブラームス「音楽の森」へ』より

 * * *

ブラームスが作曲家として名を成すまでには、長い長い苦悩を抱えた年月が必要でした。しかしひとたび成功すると、数々の名曲を世に送り出していくようになります。そんな彼の根底にあったのは、“自らが理想とする音楽”への揺らぐことのない情熱。

ベートーベンの系譜を継ぐ音楽性を表現しながらも、「ハンガリー舞曲集」のような民俗音楽に基づく作品でもその思いの丈を表したブラームスは、この舞曲集をもって音楽家として確かな道を歩み始めたのです――。

「知ってる、あの曲でしょ!」と思い浮かぶあの一節(ひとふし)。それが心に残っているのは、ブラームスの人生を駆けたそのすべてを、聞いた人の心が受け取ったからこそのもの。私たちは、知らぬ間にブラームスの思いを受け取っていたようです。

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2012年02月13日

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