あらすじ
薬物やアルコールの「依存症」は、「意志の弱さのせい」ととらえられがちだ。現代の資本主義社会において「依存をめぐる行動はこの社会の中で必然的に生じる行動パターンのひとつ」と著者は説く。本書では、当事者コミュニティ(薬物依存の回復支援施設「ダルク」、依存症からの回復のための世界規模の共同体「十二ステップ・グループ」)における回復実践をみていきながら、これらが示す人類の新たな共生のあり方を描き出す。
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Posted by ブクログ
調和によって成り立つ自然環境の中において、儲けという一つの変数を無制限に求めていくことがいかに異質かということが、ベイトソンの分裂生成理論を使って述べられていた。
世界には、競争が性に合っている人間とそうでない人間がいるということで、後者であればあるほどAAの理念に親和性があるのだろうと感じる。
生きてるだけで命がけ…そんな社会と言っても良いのだろう。
『スリランカの悪魔祓い』や『里山資本主義』と合わせて語りたい内容であった。
固定化した自己は、ナルシスティックに肥大化するしかない。ただその自重につぶれそうになっている人も多いのではないだろうか。依存症とは、そんな人間の持つ潜在的な悲しさに触れるきっかけになる病だとおもう。
Posted by ブクログ
筆者は依存症を取り巻く社会と回復過程を分析し、現代社会に内在する目的のために自己を制御できないといけない前提が社会にあると捉えた。この前提を変えるために、自己の弱さを共有できる対等な関係性を広げていくことが必要としている。
読後は生きづらさを共有できる依存症患者がある意味で少し羨ましく、こんな関係性を自分も築きたいと思った。
Posted by ブクログ
今日を生き抜くことの積み重ね(今日だけは薬物を使わない)
人間はみなネガティブ要素を持っている。たまたまそれが酒をやめられないという要素だったのがアル中の人。
回復は人間の深部に潜る。ストレスやその他が、酒やクスリという形で表れているので、そこだけでは意味がない
Posted by ブクログ
あるシステムが、何かひとつの要素を最大化させようとすると、必ずより大きなシステムを壊し、元のシステム自体も壊れるというベイトソンの洞察の射程は遠大だ。
資本主義の運動を考え、その内での依存症の増殖を考え、そこからの回復を考える上で、極めてパワフルな思考原理になりうることを鮮やかに示す。
ベイトソンを再読したくなった。