【感想・ネタバレ】話術(新潮文庫)のレビュー

あらすじ

話は誰でもできる。だからこそ、上手に話すことは難しい。日常の座談では、何を、どう話すか。大勢の聞き手を相手にするときに気を付けておくことは。声の出し方、間の置き方はどうする? 一人で喋るな、黙りこむな。お世辞、毒舌、愚痴、自慢は、やりすぎると嫌われる。ほら吹き、知ったかぶりは恥ずかしい。人生のあらゆる場面で役に立つ、“話術の神様”が書き残した〈話し方〉の教科書。(解説・濵田研吾、久米宏)

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Posted by ブクログ

ネタバレ

当初、昭和22年刊行という時代背景や「ハナシ」という表現に古さを感じたが、内容は現代のビジネスコミュニケーションにおいても大変有効な指針となり得るものであった。

本書では、話し方を磨くためにはまず人間性を高め、他者から信頼と好意を得られる人格を養うことが前提とされている。その上で、美しい言葉・強い言葉・正しい言葉を理解し、話す内容を十分に把握したうえで、相手にとって効果的な表現を選択することが求められる。さらに、言葉のみならず態度や動作を含めたバランス感覚を持つため思考力を鍛えることの重要性が説かれている。
 特に注目すべきは「間」の取り方である。会話において適切な間を設けることは、内容の伝達効果を高め、相手の理解を促進する要素となる。ただし、その最適なタイミングに絶対的な正解はなく、相手の表情や会話の流れに応じて臨機応変に調整することが必要とされている。私自身も、相手の反応を観察しながら抑揚を意識的に設計することが実践的なアプローチであると感じた。

1
2025年09月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

本書は実務家教員養成課程で先生から勧めていただいた本です。
確かに僕も研修で喋ったり会議で説明したりします。
でも話し方の勉強はしたことなかったなと思いました。

漫談の本職と素人の違い
「生まれつき話すことが面白く巧い」
「比較にならないほど場数を踏んでいる」
「四六時中材料に目をつけている」
それによって生計を立てているか」
話すことを楽しみ場数を踏み常にネタを探し続けることが出来れば初めて仕事に活かせるんやと思います。
「できるだけたくさんの必要な言葉を知り、できるだけ的確に、それを使用する術を学ぶ」ということなんやと思います。

僕が本書を読んで真髄なんやなと思ったのが
「間の置き方」
です。
張り詰めた神経を鋭敏に働かして、レーダーの如く、正確無比に適不適を計るところの「沈黙の時間」「虚実のバランス」を極める。
これができれば間の取り方は完璧なんかなと思います。

①間の取り方、その感情は表すべく、実に的確であること
②声の強弱、明暗がはなはだ巧みに配置されること
③言葉の緩急、遅速、申し分なく調節されていること
「音楽的にいうとリズムとテンポの理想的な結合」が求められるんやと思います。

話術と間の取り方。
これは極めたいと思います。

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2019年08月12日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 本書は、単なる弁舌の技術を教えるハウツー本ではなく、「話す」という行為を通して人と人とがどう関係を築き、互いをどう理解しうるかという本質的な問いを投げかけてくる一冊である。著者の徳川夢声氏自身が弁士、俳優、作家として多彩な表現活動を展開してきた人物であることを踏まえると、本書に込められた言葉の重みや、話すことへの倫理的なまなざしがより深く読み取れる。
 本書で夢声氏が繰り返し強調するのは、「話術」とは技巧やトリックの積み重ねではなく、相手の心に触れようとする誠意と、自己の内側から湧き上がる言葉との誠実な対話であるという点である。上手く話そうとするよりも、真摯に語ること。話し手が聴衆の知性と感情を信頼し、同時に自らの経験や感受性を信じること。これらの姿勢は、現代におけるコミュニケーションの問題——過剰な演出、情報の洪水、表層的な言葉の応酬——に対して、解決の糸口を与えてくれるように感じられる。
 現代は、AIやSNSを通して誰もが「語り手」になれる時代である。しかし同時に、誰もが「耳を傾けること」を忘れがちな時代でもある。夢声氏の言う「話術」とは、聴き手との関係性に根差した行為であり、そこには対話の倫理が不可欠であるというメッセージが含まれているように思う。言葉を通して世界に働きかけるとはどういうことか。私たちは本当に相手の声に耳を澄ませているのか——そうした問いを、夢声氏の語りは静かに私たちの胸に響かせてくる。
 本書は、話し方のテクニックを学ぶための書物というより、むしろ「語ること」と「生きること」がどう交わるかを示す一つの人生論である。その意味で、今日の情報社会においてもなお読むに値する古びない一冊である。

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2025年07月13日

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