【感想・ネタバレ】ハレム―女官と宦官たちの世界―(新潮選書)のレビュー

あらすじ

性愛と淫蕩のイメージで語られてきたイスラム世界の後宮・ハレム。奴隷として連れてこられた女官たちは、いかにして愛妾、夫人、母后へと昇りつめたのか。ハレムを支配する黒人宦官と、内廷を管理する白人宦官は、どのように権力を手にしたのか。600年にわたりオスマン帝国を支えたハイスペックな官僚組織の実態を描く。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

中公新書の「ケマル・アタテュルク-オスマン帝国の英雄、トルコ建国の父 」に続いて読んだが、分かりやすく面白い。すっかり小笠原先生のファンになってしまった。淫蕩なイメージのある「ハレム」についてその歴史からその構成員を主軸に描いている。巻頭にオスマン帝国周辺地図と歴代スルタンの一覧があり、本書を読み進める上で非常に役に立った。「ハレム」という王位継承者を確保するのに最適な官僚機構について興味深く学ぶ事ができた。

【第1章 ハレム前史】
王族女性が「トルコ・モンゴル型」から「アッバース朝型」への変遷過渡期に2代目スルタンの寵姫ニルフェルの存在があったとの事だが、その変遷理由が分からなかった。スルタンの妻が衆目の目に晒されるか否かや、名家出身か奴隷かでは全く価値観が違うが。
【第3章 女官たち】
ドラマ「オスマン帝国外伝」を視聴していたため良く理解できたが、奴隷身分である女官がハレムの官吏として働いていた事は改めて面白い。かつてのアメリカの奴隷制度と全く違い、不可触民ではなく単なる身分制度。女官朝に至っては母皇よりも高い棒給を得ていた。
【第5章 宦官たち】
宦官手術の死亡率が25〜50%と高いことから宦官が高価になり、通常の奴隷の2〜3倍で取引されたという話は興味深い。ビザンツ帝国やオスマン帝国から中華帝国まで様々な地域で用いられた宦官だが、中国から強く影響を受けた日本には制度として取り入れられなかったのは何故なのだろうか。
【第7章 ハレムと文化】
宗教的寄進の際、出資者がモスクなどの公共性の高い施設と共にその後の運営のために店舗などの利益を生み出す物件を用意する仕組みには感心させられた。同時代のキリスト教社会では考えられない、この合理的な仕組みは、流石は元商人のムハンマドが創始した宗教である。
【終章 ハレムの歴史的意義】
「ハレムは徹頭徹尾、王位継承者を確保するという目的に最適化された組織だった。いわば、ハレムは官僚組織であり、ハレムに住まう人々は官僚だったのだ。」「皇室を有する日本を含め、世襲君主制を採用している民主国家では、後宮不在の時代にいかに君主の後継者を確保してゆくか、という問題に直面している。現代における君主制は、こうしたアポリア(難問)をかかえて運用せざるを得ないのである」

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2024年12月26日

Posted by ブクログ

ネタバレ

様々な角度からハレムが考察されていてとても興味深かったです。
以下簡単な内容メモ。

・ハレムは構造が果たす役割が大きい
・王子はスルタンになるまで鳥籠の間で暮らす→ほぼ幽閉(至高の存在に至近するものでありながら、制限されている)
・王子は即位の機会がなければハレムにずっと軟禁される
・兄弟殺しが通例だった
・母后の権限がとても強い
・女官はピラミッド型の統率された社会
・白人宦官と黒人宦官がいた
・去勢の過程で化膿もろもろで四分の一が死亡するため、宦官は他の奴隷よりも高値で取引された
・各役職がしっかりと統制されていて興味深い
・「我が獅子よ(アルスラヌム)」→某戦記を思い出しました。

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2023年01月02日

Posted by ブクログ

ネタバレ

私にはどっちかというとガジェットネタかも。いろいろどうしてそういう考えになるんだか、はあるが海に沈められる話はぞっとする。

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2024年06月28日

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