【感想・ネタバレ】カタブツのレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

ミステリベースの短編集。
カタブツという話があるわけではなく、各話の主人公の頑なさを象徴している。

『バクのみた夢』
不倫カップルがこの不適切な関係を終わらせるためにはどちらかが死ぬしかない、と決意するところから始まる。
妙に生真面目な二人の出会いから暴走する愛の結末まで。
一歩引いた視点だなあ、と思って読んでいたら、最後になんともうまいオチがつけられていた。
物語としては一番好き。


『袋のカンガルー』
面倒見の良すぎる主人公が、失恋のたびに家に転がり込んでくる亜子に振り回される話。
主人公の成長物語か、と思わされたけど、これまた最後にひっくりかえった。
亜子は明らかにボーダーな女で、共依存の二人を見ているとイライラするから話としては気に入らない。
けど亜子と主人公の関係が徐々に明かされ、最後にタイトルの話と繋がる、これまたうまい。
でも後味は非常に悪い…。


『駅で待つ人』
意外なオチが用意された、男の一人語り。
待ち合わせ相手を待つ人を眺める人が好き、という感性にとても共感。
物語のプロットよりも、本文で語られる内容がとても好きだった。


『とっさの場合』
強迫神経症気味の母親が主人公。
「絶体絶命の状況に陥った息子を目の前にして何も出来ない」自分の夢を見、妄想する。
この話はいくつも仕掛けが施されていて、
オチのつけ方が秀逸。
「いざというとき助けられないからといって、愛情が足りないわけじゃない」というテーマがどう使われるのか、その意外性がよかった。


『マリッジブルー、マリングレー』
婚約者の実家へ挨拶に行くため福井に来た主人公。
初めて来る土地のはずなのに、車窓から眺める日本海に奇妙な既視感を覚える。
3年前、主人公は交通事故に遭い、事故直前の数日間の記憶をなくしていた。
既視感と空白の記憶に関係があるのではないかと疑心暗鬼になる主人公のお話。
これが一番ミステリっぽかった。
最後の一行のびっくりもあり。


『無言電話の向こう側』
意固地なほど公明正大で誠実な友人の秘密を知った主人公。
最初からオチが見えすぎているし、登場人物たちにもイマイチ共感できなかった話。
それにちょっと説教がましいところが鼻についた。
ただこれが一番評判が良いようで、たぶん私の感性がひねているのだろう。


最後のお話だけあまり好きではなかったものの、他はどれもよかった。
見事などんでん返し。
どんでん返しマニアにはたまらないかも。
想像よりもかなり面白くて嬉しい驚き。
沢村さんはファンタジーよりミステリ路線の方が好きかも。
『黄金の王白銀の王』、『瞳の中の大河』の中の、ファンタジーにしては重すぎる、遊びが足りない部分が、こちらではほどよいストレスとして効いている。

派手さはないけど、とても丁寧なお話。
これはおすすめです。

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2012年04月09日

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