【感想・ネタバレ】永遠の平和のためにのレビュー

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Posted by ブクログ

カントを読んだのは、高一の時に純粋理性批判でやられて以来である。確か100ページもしないうちに、その難解な訳文に耐えられず、結局読まずじまいに終わった。それ以来、カントのことは、頭の片隅に追いやっていた。
しかしこの偉大な作者の晩年の作品は、驚くほど読みやすく、親しみやすい文体が流れていた。軍事強国となったプロイセンのケーニヒスベルクの街で、フランス革命の動乱とナポレオンの国民軍の足音を遠くでこだまさせながら、71歳の哲学者は「永遠の平和」を問うた。それがたとえ、無意味だと揶揄されようと、彼には考えずにはいられなかったのであろう。
カントは、永遠の平和の確定条項として、①共和国制②連邦主義的国際法秩序③万人に対するもてなしの心をあげた。よく、ホッブスやロックと対比され、「世界政府」構想と言われるが、実はカントもまた人間は自然状態においては暴力的で好戦的であるという、リアリズムのアナーキー原理を大前提にして出発しているのである。そしてそのうえで、自らの生が尊重されるならば、隣人の生を当然に尊重しなければならないというリベラリズム理論を敷衍し、理性に基づいた行動を、我々に求めるのである。カントのこの論理には、良い意味でも悪い意味でも、流石哲学者と舌を巻いてしまう。
勿論当時と今の状況の違いに、注意を払う必要はある。18世紀と21世紀、この3世紀の間に、「永遠の平和」なんて訪れやしてないではないか。結局「机上の空論」でしかない「駄作」だと、そう評価したいならすれば良い。
しかし、私は、だからこそこの名著にあたる必要があると考える。我々が我々の人生を、この世界を、「善く生きたい」と願うならば、「永遠の平和」への希求を、心のうちに少しでも持っているならば。現実にどれほど絶望しようと、無関心でいようと、我々はそれでも希望を探し続け、どこかでつながろうとしているのだから。「ゆっくりとだが、ステップアップして、」(本書 90)問い続けなければならない。

昨今の情勢は、とても平和とはいえない。この国の行く末もどうなるかわからない。自分の人生など、いわんやである。自分のものででしか決してない、一度きりの人生を「我々はどう生きるか」というカントのまっすぐな問いに、今こそ真剣に向き合わねばならないのではないか。

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2024年04月28日

Posted by ブクログ

1795年に公刊された平和論の古典、『永遠平和のために』の新訳。既存の、言ってみればお堅い翻訳を一新することを狙っているであろう訳語・訳文が随所に散りばめられており、従来の邦訳とはだいぶ違ったイメージをもたされる。また文庫本ながらアカデミー版のページ数が記載されており、研究の役に立つだろう。

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2022年02月27日

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