【感想・ネタバレ】フーコーの言説のレビュー

\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

初期から晩年にいたるまでのフーコーの主要著作をたどり、その思索の跡を一貫したプロセスとしてえがき出している本です。

著者はまず、1950年代のフーコーが発表した、ビンスワンガー『夢と実存』への序論と、『精神疾患と心理学』という著作の検討をおこない、このときのフーコーが人間学的な地平のもとに捕らわれていたと指摘します。その後、『狂気の歴史』や『臨床医学の誕生』、『言葉と物』、『知の考古学』といった著作を通じて、フーコーが「人間」という主題の歴史的形成を解明するとともに、そこからの離脱を図っていったことが論じられます。

さらに『言説の領界』や『監獄の誕生』、晩年のセクシュアリティにかんする研究などについても紹介をおこない、「人間」からの離脱というテーマが「自己」からの離脱という問題へと引き継がれていったことを明らかにしています。同時に著者は、晩年のフーコーの思索のうちに、新たな主体性についての積極的な言説を求めることを拒否し、フーコーの仕事を、「思考をそれがひそかに思考しているものから解放し、別の仕方で思考することを可能にする」ための道具として受け止めなければならないと主張しています。

フーコーの思索のプロセスを、一本の切れ目のないストーリーとして理解することもまた、人間学的な地平のもとでの思考にほかならないのではないか、という疑問はあるものの、フーコーの思想の概説書としては手際よくまとめられている本ではないかと思います。

0
2019年06月21日

「学術・語学」ランキング