【感想・ネタバレ】「テレビは見ない」というけれど エンタメコンテンツをフェミニズム・ジェンダーから読むのレビュー

あらすじ

執筆者(以下、本書の掲載順)
西森路代、清田隆之、松岡宗嗣、武田砂鉄、前川直哉、佐藤結、岩根彰子、鈴木みのり

かつては「娯楽の王様」と呼ばれ絶大な影響力を誇った地上波テレビも、SNSや「YouTube」の普及、ライフスタイルの変化に伴い、かつてほどの勢いを失っている。その原因には、視聴環境の変化だけではなく、アップデートされていないジェンダー観や「やらせ」などの演出面の問題、そしてマイノリティへの配慮やコンプライアンスなどの様々な問題が複合的に絡んでいて、テレビはマスメディアとして変革を迫られている。

一方で、ドラマでは、野木亜紀子、宮藤官九郎、坂元裕二などの作家たちは、自らの作品で新たなジェンダー観を描き、バラエティー番組では「お笑い第7世代」が活躍するなど、従来の価値観に縛られないコンテンツも相次いで登場して、テレビの新たな可能性を感じさせてもいる。

「テレビは見ない」「「YouTube」は見る」といった二者択一の議論ではなく、テレビのどこがダメで、どこが面白いのかを正面から語るために、昨今大きな注目を集め、また社会的な課題でもあるジェンダーやフェミニズムの視点からバラエティーとドラマを中心としたエンターテインメントコンテンツを問い直す。

様々なジャンルで活躍する書き手がテレビの「いま」に切り込む、「テレビ好き」も「テレビ嫌い」も必読の新しいテレビ論。

2020年に放送され話題になったドラマ『チェリまほ』(テレビ東京系)のプロデューサー本間かなみへのインタビューも所収する。

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Posted by ブクログ

気になるドラマが立て続けに始まり、社会人になってから今1番テレビを観ているので気になって購入しました。
テレビを観る人が年々減ってきているなか、特にジェンダー意識に焦点を当てて今のテレビの問題点を洗い出していくという内容。
テレビが面白くなくなったのは、言いたいことが言えなくなったからではなく、時代の変化に合わせず昔は良かった精神で価値観をアップデートしないからなのではないかと書かれています。概ね賛同ですが、お笑い第7世代の台頭やテレビドラマではジェンダー意識が洗練されたものも増えつつあり希望も微かにあるということです。話題に上がる作品や番組を観ていなくても勉強になり、むしろ観るきっかけになるかと思います。これを読んでからだとテレビの見方が変わりそうです。

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2021年05月01日

Posted by ブクログ

お笑い、ドラマの演者、作り手側の意識の変遷が見られた。◯世代とカテゴライズされることにより消費が早まる、なるほどな。

女性、というものは男性によって面白おかしく観察され消費されるためだけの存在だった。女向けはこんなもんでいいでしょ、と舐められていたものが、近年の女性向けドラマ作品ではそうでないものが生まれてきた。シスターフッドの章では女性のための物語には必ずしも男性は必要ない或いは障害として描かれているものが紹介されている。

「ワイドショーは議論されない」
確かに。
どうせくだらないことしかやってないから見ない、論ずるに値しない。それで切り捨ててしまうと、この世界は永遠にこのまま変わらない。出演者の個など無きに等しく、いかに役割が決められていて、中心に座った男性の意見を持ち上げ補佐するためだけに周囲特に女性が存在している閉じた世界。あえて指摘し続けたいと筆を執ってくれたことに感謝したい。ほんとに気づかなかった。どうせくだらないと思っていたから。

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2025年09月17日

Posted by ブクログ

面白い!もう10年以上テレビのない生活をしているので、いまのテレビエンタメコンテンツがどんなものか薄っすらとしか分からない。けれどテレビを見ずとも、テレビの影響を色濃く受ける社会で生きている私たちは、直接的にも間接的にもテレビの影響を受けているのだろうと感じた。

複数の著者の共著なので、それぞれのコラムは短く、もっと深く知りたいとも感じたが、エンタメをフェミニズムとジェンダーから見つめ直すために、広く辺りを見回せてくれる良書だった。

とくに感銘を受けたのは2個目のコラム。テレビに限らずSNS、映画などでも引っかかる部分について、男性の著者がここまで敏感に感じ、文章にまとめ、世の中に発信しているということに嬉しく思う。こんなふうに「当たり前」として蔓延っていることを「おかしい」と感じられる人が男性にも増えていくと本当の意味でフェミニズムやジェンダー平等の感覚が広まっていくのではないだろうか。

フェミニズムって禁句のように語り合いにくいテーマになってしまっているし、「女性が不当に自分の権利を振りかざすこと」みたいな間違った認識が広がってしまっているのが残念だけど、テレビという身近なコンテンツから見直してみるのはどうだろう。そのきっかけに、とても良い一冊だった。


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2025年02月22日

Posted by ブクログ

どこで紹介されたのか忘れてしまいましたが、2023年2月7日に「読みたい」に登録していた本。

自分はあまりテレビを見ないので、タイトルの『「テレビは見ない」というけれど』という文言が気になっていたのですが、実はサブタイトルになっている「エンタメコンテンツをフェミニズム・ジェンダーから読む」の部分がとっても重要な本でした。

複数の著者からなる本ですが、「フェミニズム・ジェンダーから読む」ことを重視していることもあってか、著者は女性やゲイの方が中心。
いずれの著者も、(テレビ番組に対して)ジェンダーに関する自身の立ち位置を大切にした考え方や見方を持っていて、それらに力強さを感じましたし、そのような考え方や見方は、結果として、ジェンダーの多様性の受容につながっているように思いました。

ジェンダーに対する世間の理解度はどんどん上がってきており、テレビドラマには、その上昇が反映されてきている一方で、情報番組は、ジェンダーの捉え方が旧態依然としている、という見方には同意します。
が、ジェンダーに対する捉え方は、とっても複雑なので、理解が追いつかない人がたくさんいても不思議ではない、とも思っています。

ジェンダーに関する自分自身の捉え方をアップデートし続けるためにも、ジェンダーに関する本は定期的に読まないといけないな、と思った一冊でした。

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2024年10月14日

Posted by ブクログ

お笑い、バラエティー、ワイドショー、ドラマの中でのジェンダー問題を西森路代さんをはじめとした著者の方々が解説してくれる本。今まで漠然と触れてはいたがここまでまとまっているのは貴重。

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2021年09月26日

Posted by ブクログ

最近のテレビドラマやバラエティにおいてのフェミニズムやジェンダーについて考えていくとても面白い内容。
テレビ離れしている若者が増えている、とは報道されるものの、細かくなんで?ということはあまり説明されていない。もちろんYouTubeやNetflixのように自由な時間に観れるコンテンツが増えたからと推測されるが、最近のテレビが時代に追いつけていなくて若い人たちが違和感を感じて離れていってしまっているのではないのかと話している。
お笑い界でここ2年くらいで出てきた「第7世代」やフェミニズム観点で見たバラエティやドラマ、「愛の不時着」「梨泰院クラス」をはじめとする自粛期間でとても人気になった韓国ドラマのジェンダーロール、BLのドラマ、など数多くの視点で考察されている。
とても充実した内容だったので、もっと深掘りしてほしいくらい物足りなさを感じた。
最近芸人さんのYouTubeにハマっているため比較的周りよりバラエティ番組を観ることが多いと思うが、ジェンダーなどからは切り離して観ていることが多いため、受け入れてしまっているものもあるかもしれないと反省した。もっと注意して見ていかなければならないと感じた。
本の中で繰り返し紹介されていた「問題のあるレストラン」をまず観るところから始めたいと思う。

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2021年07月20日

Posted by ブクログ

なんとなく嫌な予感がして、手に取っていなかった本書。しかし、週末猛烈に『問題のあるレストラン』に関する批評が読みたくて、ついに読んだ。

予感は確かに当たっていて、「個人的な見解をまとめてみたい。(清田隆之)」p53に留まっているように思うエッセイもあった。

が、ラストの鈴木みのりさんの章でがつん。とやられた。がつん。
これを載せたことが、全てですね。

(あ、それでも、シスターフッドの話とか、わきまえない女たち、は、楽しんで読んでましたけど。。。)

#テレビは見ないというけれど #読書記録 #鈴木みのり #西森路代 #武田砂鉄 #岩根彰子

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2022年03月07日

Posted by ブクログ

執筆者8人が13の章をそれぞれ担当しているため人によって読み応えの差が激しい。
その中でも鈴木みのりさんが担当する最終章だけは群を抜いている。問いかけや指摘が耳に痛い。

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2021年12月31日

Posted by ブクログ

武田砂鉄さんの文章が読みたくて手に取った。
フェミニズム、ジェンダーって女性でも難しい。

常に感じてしまうのは、子供を産んで育ててないと女としてダメなのかとか、異性に選んでもらえるようにしないと、という地下の強迫観念。家族という概念が多様化しつつある現代だが、育ってきた環境がそう思わせないのか。自立して独立して生きていけるはずなのに、なぜそんな文脈を持ち続けないといけないのか。とはいえ、ちやほやされることは快である。この矛盾。

お笑いや、ワイドショーはホモソーシャル感が強いのは昔から変わらない。

その構造追従は認めるが議論は認めない、そして自分の周りには通常してくれる女がいるだから議論をする女は困る。要するに自分の意見を言えるしかしその場の意見が固まってきたときにはそちらに合わせることができる女が出演している。
ワイドショーは基本的に追従の連鎖。差配する男性の優位性がとにかく強く保たれている。追従Aと追従Bと追従Cを並べ、どの追従が最も納得できますか?という構造になっている。
え?何?そんなに真剣に怒っちゃってるの?と生真面目さを茶化すことで、議論を本格化させずに済ます。

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2021年08月15日

Posted by ブクログ

第7世代がどんな存在であるかをあまり考えずにぼんやりバラエティを見てた者なので、西森路代さんの指摘をはしめ、彼らが相対化したエンタメ業界の問題点などを俯瞰する一冊になった。ドラマの章は見ておくべき作品のリストが充実したのと、楽しみ方、見るときの視点を得られたのでまぁまぁ満足。

点数低めなのは、リアルタイム性を意識したためか、各々のフィールドから語るのみにとどまってしまっている印象があるゆえで、とても良いことを書いてるので、わかりにくく、伝わりにくいものをもっと伝える努力があってもよいような、と思ったからである。わかりにくいものはわかりにくく、文脈も複雑なのは承知の上で。

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以下は散漫的に思ったことを。

バラエティについて。何がホモソーシャル的な振る舞いなのかを、敏感に感じ取って、なんとなく受け流される空気に違和感を残しながら生きるのではなく、スッと冷静になりたいものだと思う話しだった。

女性芸人のキャリアの話も興味深い。the Wをようやくまともに観た昨年、女性のお笑いキャリアをどんなふうに見ればいいものかいろいろ考えたが、女優ほど異世界に住む人ではない、自分たちの世代のロールモデルということばが結構しっくりきた。自分が吉住をみてちょっと元気が出たり、渡辺直美やプルゾンちえみの海外展開へのエネルギッシュな姿を見てまたそれはそれて心が元気になるのもそういうことなのかもしれない。

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ドラマの批評では、「身近な共生している恋人や家族による知らずしらずの加害性と、そこからのいきづらさ」についての章が個人的な関心の真ん中だった。リアルな社会はどちらかというとそっち側(自分も実親による「オンナの人生」の固定観念と日々静かに戦っている)なので、ドラマが逆に辛くて見られないとか、深く共感する人々がSNSでハッシュタグを介して思いを吐露する姿に繋がる。

そして最後の章、周縁化された人々、マイノリティの物語のリプレゼンテーション(再現前性)というのは自分に足りない視点だなと内省する。この本に登場される方々の地道な批評活動と、視聴者がその視点を内在化することの繰り返しが、コンテンツ側を変えていくのだろうか、視聴者側として努力を絶やさないようにしなければ。

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2021年06月13日

Posted by ブクログ

最近のテレビ番組をフェミニズムやジェンダーの観点から批評した一冊。ドラマ編は膨大な作品群を基に考察されておりとても勉強になった。ただ、バラエティ編はそれに比べると物足りない。P.71に「女性同士のゆったりした時間のなかで生まれるたわいない会話を楽しみたいというファンもいる」と書かれているということは男女で笑いの感性に違いがあることは認める立場に立っているわけで、それであるならばもっと根本的に男性的な笑いや女性的な笑いといった笑いのメカニズム・暴力性から論じないとフェアではないだろう。また「ほとんどテレビを見ない」と自ら宣言する人がこのテーマで書くのはさすがに無理があるのではないか。桃山商事は好きなので尚更残念だった。個人的にはフェミニズムにも濃淡や流派のようなものが生まれてきており、一括りで論じるには主語が大きすぎるようになってきたと感じる。

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2021年06月06日

Posted by ブクログ

若い人がテレビを見ないと言われて久しい。それでもテレビの影響力は少なくない。
男女平等やジェンダーに関して社会が大きく変わる中、男性中心のテレビづくりや番組の現状と問題を指摘する。
特にフェミニズムとドラマは、恋愛中心のドラマに見える変化を分かりやすくまとめている。
テレビの見方が変わるはず。

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2021年05月23日

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