あらすじ
文京区の長い路地を抜けるとバーだった。大学教授の曽根原は、ふと気づくとバー〈スリーバレー〉に足が向いている。女性バーテンダー・ミサキの魅力なのか、文学談義のせいなのかは判らない。ある晩、まだ客の少ない時間にミサキが繰り出した質問は、川端康成の『雪国』についてだった。登場人物の行動から『雪国』はミステリではないか、というミサキの疑問に、途中からまたしても入店してきた宮田が、珍妙な説を披露し始めて……。『雪国』に加え、田山花袋『蒲団』、梶井基次郎『檸檬』、三島由紀夫『金閣寺』と、日本文学界の名作の新解釈で贈る、鯨統一郎最新作。
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Posted by ブクログ
こちらは『蒲団』以外は読んだことが無い作品ばかりだったけど、なんとなく内容は知っているので楽しく読めた。『雪国』はミステリとかちょっと面白いな。とりあえず梶井基次郎の『檸檬』から読んでみようかな。
Posted by ブクログ
文学ミステリー第2弾。
原典を知らないこともあり「雪国」「檸檬」はすんなり納得させられました。雪国の冒頭で国境を越えて、長いトンネル、たどり着いたのが白い世界ですから異界感ありますし、檸檬はそのままなるほどと感心してしまいました。歴史ミステリーとも「ビブリオ」とも違った文学ミステリーでジャンルとしても新鮮でした。読み解き方はいろいろあるなと思う一方、著者の言いたいことや狙いが著しく外れた場合本人はどう思っているのだろう。自身のせい?読者の読解力のせい?
Posted by ブクログ
スリーバレーといえば、鯨統一郎の出世作『邪馬台国はどこですか?』の舞台になった店ではないか。同書を何度も読み返した自分としては、否が応でも期待が高まる。
バーテンダーが松永からミサキ嬢に交替したのは、早乙女静香を欠いてヒロイン成分が不足したせいだろう。
『雪国』は未読なのでピンと来なかった。それでも冒頭の一節は暗唱できるのだから、名作の波及力は凄い。
田山花袋が日本のラノベの原点という指摘は、解決も含めて面白い。自分も『電波女と青春男』を、純文学まであと一歩の設定、と感じたものだ。
梶井基次郎の『檸檬』が文壇に投じられた爆弾というのは、ちょっと苦しい気がした。強引な力技を楽しむべきなのだろうか。
表題作。全ての小説は自伝へのグラデーションだと思う。こと三島作品に関しては、大半が遺書のように読める。『金閣寺』に限らず、他の作品でも成立しそうだ。