あらすじ
剣に将来を託し、武市瑞山の命ずるままに暗殺剣を振るい続けた岡田以蔵の末路(「魔剣」)。武士の魂である刀を交換した友に、公卿誤殺の罪を負わせた酒井兵庫の苦悩(「魂無き暗殺者」)。時代に殉じ苛烈に生きた刺客たちの命運を刻む時代短篇集。全八篇。
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Posted by ブクログ
自己の野望を叶えるため、以蔵を利用しようとする武市。愛する師の命ずるまま、以蔵は暗殺の道を走る。「暗殺が面白くてしかたがなかった」とあるように、進んで剣を振るう以蔵像が構築される。されど彼は、このまま暗殺をこなすことへの懐疑心も持ち合わせている。そうした以蔵の心情は、ひょうひょうと生きる龍馬や、勝の思想に惹かれていく彼自身の姿を通してうかがえる。
武市に裏切られたことを知る以蔵は、激しい憎しみの情を抱くようになる。以蔵が武市を刺し殺し、自害するという描写はフィクションであるが、師(あるいは人間と言ったほうがよいだろうか)に裏切られた男が抱く、凄まじい憎愛の深さを感じることができる。