水妖記の戯曲版としてあまりにも有名であり、ラストシーンは傑作である。
水の精霊オンディーヌと騎士ハンスの悲劇的な恋愛を描いた物語で、人と人に非ざる者との恋は始まりから破局を予感させる。
これは東西の異類婚の物語同様、予定調和ともいえる筋書なのであろうか。
水の精霊といえば人魚姫を思い出すが
...続きを読む、オンディーヌのように悲劇的な結末を辿る。人魚姫ばかりでない。日本の昔話で言えば、「鶴女房」「天女の羽衣」「雪女」など、異類婚の行く先は幸せなものではない。
ハッピーエンドに終わる物語は果たしてあっただろうか?(美女と野獣は元々どちらも人間だし)
人は異種と結ばれるということにロマンを感じる一方、心の底で「禁忌」を覚えるものだ。禁忌だからこそ惹かれ、また、激しく拒絶する。そのような相反した心理が数多くの異類婚譚を生むのではないか。
そしてこの物語は単なる異類婚による祖語だけにはとどまらない。魂というものは決して分かち合うことが出来ない、永遠にわかり合うことの出来ない男女の虚無的な愛がある。
女の純粋さは自らの魂の死を招く。オンディーヌは自分の魂を破壊することにより、愛から救われるのである。
この物語は愛からの救済なのだろうか?冷たく横たわるハンスを艶然とした表情で見つめるオンディーヌ。そこに果たして希望はあるのだろうか。