草間彌生のレビュー一覧
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大学の取手キャンパスでの現代美術論の講義で、講師が「草間彌生は頭がチョットね…」と言っていたのを思い出す。自身の精神病理を克服する手段としての表現でとどまるなら、それはアウトサイダー・アートに過ぎない。しかし本書を読めばわかるように、草間彌生は、「頭のおかしさ」を無尽蔵のエネルギー源にして絶え間無く制作しながら、アート・シーンに食い込む行動を選択する冷静さがあった。もしも仮に黒の下地の巨大なキャンバスに白の絵の具で延々と網を描いていた頃、最初のニューヨークの個展が成功しなかったら、自殺していたであろう。今では同じような気質の人が同じようなことをしても、まずこれほど露出することはない。草間の圧倒
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Posted by ブクログ
芸術、芸術家、前衛芸術、都会、男娼、そういう文化の息づく都市、というものに興味をひかれる。ニューヨークの男娼窟の物語である表題作が私は一番好きだ。男娼をやって大学を出た、という主人公の経歴がまた何ともいえず惹かれるものがある。男娼窟のあるアパートの様子とか、凄くかっこいい。本を読んでいて頻繁に思うことがある、こういう風に書きたい!と思う個所がクリストファー男娼窟にはいっぱいあった。
草間彌生の芸術作品を見に行くと、いつも猛烈にやっぱり芸術家が好きだ、と思う。芸術家の書く文章って、どんなものなんだろう、という興味も手伝って手にした本。文章は独特で、所々主人公の本当に観ている光景と幻覚が混ざり -
Posted by ブクログ
水玉の人,カボチャの人というイメージしかなかった.ほとんどの人がそんな印象を抱いているんじゃないんだろうか.
ところがそのバックグラウンドには複雑な生い立ち,閉塞感からの解放を求めてのアメリカでの渡米,渡米先での成功を積み重ね,欧米を世界を代表する20世紀の芸術家になった人であったということを知ることができた.
あらゆる体験が濃く,芸術に対するストイックさと相まってすごい人生だと思う.
水玉で埋め尽くされた描写には世界,自然と同化し自己が消滅することを描いているらしい.
「戦争とフリーセックスのどちらがいいの?」という究極の2択.
"作る側の立場から見ると、すべてがギャンブ -
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一年ほど前にルイ・ヴィトンや各種メディアで取り上げられておりました草間彌生先生の自伝でございます。
いやこれがもう何が凄いってすべてですよ。すべて。
日本での活動、アメリカでの活動、世界での活動。それぞれが織り交ぜられながら大まかな時代ごとで分けて書かれておりますが、書かれているそのすべてが規格外でございます。
と申しますのも、先生。幼い頃から幻視・幻聴に悩まされながらも描くことで表現することで生き延びてきたそうなのです。周囲、特に母親からの圧迫に耐え、もともと敏感だったのでしょう幼い頃から無意識化の情動に接し、見えているものを描き表現されてきたのです。
「日本では自分は生きることができない -
Posted by ブクログ
「幻覚や幻聴」
幼いころからを験する。
スミレが人間のような顔つきをして話しかけてくる。
その光景を残しておきたいと絵を描くようになった。
そのときに感じた驚きや恐怖を絵に描いて静めていく。それが私の絵の原点。
「カボチャ」
祖父の採種場でお目にかかった。
太っ腹の飾らなぬ容貌、たくましい精神的力強さに興味を覚えた。
「サイコソマティック芸術」
コンプレックス、恐怖感を表現の対象にファルス、マカロニ、
その表現の中に埋没し恐怖を克服。オブリタレイト「消滅」。
バックもすべて水玉模様にしてセルフ・オブリタレーション「自己消滅」。
水玉がポジ、網目がネガ。ポジとネガが一つに