草間彌生のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
p38 肛門の退行と固着の妖気の中で男たちは、魂の自由からかどわかされ、ナルシズムの囚人カーテンの中で秘かにさまよっている。
草間彌生も小説を書くのか、と思って読んだら、意外とちゃんと小説だった。幻覚と現実が混じり合って詩的ではある。水玉の印象が強くて、そんな衝動的な感じの人が言葉を操れるのかと思ったけど(たまに良く分からない場面はあるけど)渡米してただけあって、ニューヨークの雰囲気を肌で感じて、そして絶妙な狂気と感性の言葉で表現されている。
愛の渇望と、性の衝動と、茫漠な自己の風景。ミルク色のカーテン。蛾の銀色の鱗粉。腐ったネズミと花。蒸れた体臭。ドラッグとホモの夜のニューヨーク。 -
Posted by ブクログ
やっぱりアーティストは「変人」でなければいけない。笑
おそらく、日本の現代アートシーンで国際的にも評価されている数少ないアーティストのおひとり。かぼちゃに代表される作品は知っていたけど、実際に草間さんはどんな人なんだろう?ということを知りたくて手にした一冊。
ある意味、予想通りでしたが、想定上に変人だった。すごく自分に対して自信を持っていて、ひとつひとつの動きは戦略的なんだろうなあ〜ということが文章から漂っていました。
最近、「成功する(=作品の値段が上がる)アーティスト」の法則ってなんだろう?ということを考えることがあります。国内、海外/日本人、外国人というカテゴリ分類をして過去の成功者の軌跡を丹念に追っていけば、一定の方程式が見つかるのではないか?と思っています。既にいるかもしれませんが、研究テーマにしてみたいものです。 -
Posted by ブクログ
大学の取手キャンパスでの現代美術論の講義で、講師が「草間彌生は頭がチョットね…」と言っていたのを思い出す。自身の精神病理を克服する手段としての表現でとどまるなら、それはアウトサイダー・アートに過ぎない。しかし本書を読めばわかるように、草間彌生は、「頭のおかしさ」を無尽蔵のエネルギー源にして絶え間無く制作しながら、アート・シーンに食い込む行動を選択する冷静さがあった。もしも仮に黒の下地の巨大なキャンバスに白の絵の具で延々と網を描いていた頃、最初のニューヨークの個展が成功しなかったら、自殺していたであろう。今では同じような気質の人が同じようなことをしても、まずこれほど露出することはない。草間の圧倒的な行動力と先見性と、そしてそれを根本で支えた病理性などが時代を吸い寄せたように思える。強烈な個性。一日に原稿を160枚も書くスピード[p238]が自伝をまとまったものにしたのかもしれない。昔は違ったかもしれないが、今はもう草間彌生は自身の病理性を演じているのかもしれない。そうでなければ、これほど冷静で完成度の高いまとまった自伝が書けるだろうか。所詮、草間彌生もアーティストに着地するということか。
-
Posted by ブクログ
芸術、芸術家、前衛芸術、都会、男娼、そういう文化の息づく都市、というものに興味をひかれる。ニューヨークの男娼窟の物語である表題作が私は一番好きだ。男娼をやって大学を出た、という主人公の経歴がまた何ともいえず惹かれるものがある。男娼窟のあるアパートの様子とか、凄くかっこいい。本を読んでいて頻繁に思うことがある、こういう風に書きたい!と思う個所がクリストファー男娼窟にはいっぱいあった。
草間彌生の芸術作品を見に行くと、いつも猛烈にやっぱり芸術家が好きだ、と思う。芸術家の書く文章って、どんなものなんだろう、という興味も手伝って手にした本。文章は独特で、所々主人公の本当に観ている光景と幻覚が混ざり合っている感じの個所も出てくる。クリストファー男娼窟ではあまりなかったけど、離人カーテンの囚人では読んでてちょっと疲れた。
芸術を生み出す人の脳味噌の中には、やっぱり興味があるな。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ芸術家の草間彌生さんの自伝。
アメリカに渡り、地獄のようなひもじい体験をされていたとは知らなかった。全然食料がなくても作り続けて、精神病院に数度送られてしまうなんて、信じられない。
そんな中でも個展を開催し、あるとき大成功。それから、様々な場所で個展を開くようになる。ずっと水玉を書き続けた執念を感じる。取り上げる新聞等が絶賛ばかりなのだけれど、きっと批判もあっただろうと想像する。
性的なオブジェの創作は知らなかった。やはり壮大な芸術家さんは、作り上げるものが普通ではない。
最初のページにある、小さい頃に自分で選んだ花と撮った写真は、花のバランスが本当に素晴らしかった。 -
Posted by ブクログ
水玉の人,カボチャの人というイメージしかなかった.ほとんどの人がそんな印象を抱いているんじゃないんだろうか.
ところがそのバックグラウンドには複雑な生い立ち,閉塞感からの解放を求めてのアメリカでの渡米,渡米先での成功を積み重ね,欧米を世界を代表する20世紀の芸術家になった人であったということを知ることができた.
あらゆる体験が濃く,芸術に対するストイックさと相まってすごい人生だと思う.
水玉で埋め尽くされた描写には世界,自然と同化し自己が消滅することを描いているらしい.
「戦争とフリーセックスのどちらがいいの?」という究極の2択.
"作る側の立場から見ると、すべてがギャンブルであり、未知の世界だ。かつて何万の芸術家がしてきたように、峰の知れぬ山を何かの引力に引かれて登るのだ。もし、この峰の深みが知れていたら、明日からの私の人生は灰色になってしまう。"
“人前でセックスしたり、国旗を焼いたり、そうしたことはすさまじいと言えばすさまじいだろう。けれどそういう受け取り方そのものが既成の観念なのである。"
前衛的であることとただカオスなだけの違いがなんとなくわかってきた気がする.前者は歴史,文脈,世相,規制の概念を注意深く観察し,それに対するカウンタアークションを絶妙な方法で表現しないといけない.一見無秩序に見えて計算されているところに美しさがある. -
Posted by ブクログ
一年ほど前にルイ・ヴィトンや各種メディアで取り上げられておりました草間彌生先生の自伝でございます。
いやこれがもう何が凄いってすべてですよ。すべて。
日本での活動、アメリカでの活動、世界での活動。それぞれが織り交ぜられながら大まかな時代ごとで分けて書かれておりますが、書かれているそのすべてが規格外でございます。
と申しますのも、先生。幼い頃から幻視・幻聴に悩まされながらも描くことで表現することで生き延びてきたそうなのです。周囲、特に母親からの圧迫に耐え、もともと敏感だったのでしょう幼い頃から無意識化の情動に接し、見えているものを描き表現されてきたのです。
「日本では自分は生きることができない。この狭苦しく閉じこもった日本から早く飛びたしたい」(要約)
そう仰りながらも先生は渡米前に既に日本で業績をある程度認められております。もうスケールと申しますか見ているものが違うのだとワタクシ呆気にとられるばかりでございます。
セックスクイーン草間彌生
さて、そんな草間彌生先生ではございますがなんと若き頃はフリーセックスの伝道者だったのでございます。今では水玉のイメージばかりが強く現代アートに興味がある向きでなければ驚いて腰を抜かしてしまうほどかもしれません。ワタクシも話には聞いておりましたが本書を読むまでは詳しくは存じ上げませんでした。
本書の中でも草間先生が憤っておられたのが日本のマスコミでございます。平気で嘘をつきアートの文脈も読まずに扇情的に非難する。批判ではございません。非難でございます。もちろん当時と現在では外的状況が違うかと存じますが残念ながらワタクシはテレビで当時のセックスシンボルとしての草間先生を視聴したことがございません。結局のところ日本のマスコミの性質自体は変わっていないのではないか。そう考えてしまう今日この頃なのでございます。
そうは申しましても本書は世界的アーティストの自伝としても読めますし、サクセスストーリーとしての文脈でも読めます。それだけ一人の人間の人生、ましてや波乱万丈を絵に描いたような人間の人生となれば多種多様な切り口がありうる訳でございまして、であるからこそワタクシのこの駄文などささっと読み流して頂き、烈火の勢いで本書をご一読することをご提案致します。何しろ「一回の読書は百の書評に勝る」と申しますから。すいません。申しません。今、考えました。ですがまあこれはこれでひとつの真実でございますからして読者様の寛大な御心で許して頂ければ幸いでございます。