とても田中希実らしくて良かった。
声が聞こえるような程。
半分エッセイ、半分詩という形の日記。
エッセイ部分は日記の解説も兼ねている。
明るい話題はほとんど無い。
終始暗いしネガティブによくぞそこまでと感心する程ずぶずぶ深く落ち込む。
陸上選手という、結局は自分との闘いになる競技者故か。
ならばこの気性はこの競技に向いている。
打ちのめされ、落ち込み、傷付き、生きている資格はあるのか私はなぜ人間として生まれてきたのかとまで自問する。
そしてそのままならない思いををぶつけられるお父さん(笑)
この父娘関係はもっと厳しいものかと思っていたが、意外に田中希実の方が自分にはお父さんしか居ないのだと日記では素直で、それは少し悲壮さも滲むがテレビから想像していたものとは違っていた。
今年は実業団に所属したので、本人もお父さんも心の衝突は緩和するのでは?するといいなぁ。
1年、また1年と強くなる田中希実に私は毎年ワクワクしている。
インタビューでも垣間見せるネガティブさは裏を返せば自分への厳しさ。どれたけの不安と闘っているのだろうと興味があった訳だが、この本でそこに触れる事が出来る。
その意味では期待以上の本。
とことん落ち込むし出口のなさに苦悩しているが、不思議と闇は感じない。
それは時折見せる気の強さによるものか。
もしくは孤独のようで愛する仲間がいるからか。
『怒りたかったのに
時代が許さなかった
うるさいうるさいうるさい!
それら全てにこそ怒れよ!』
と叫ぶそれは自分と大事な仲間の為に叫んでるように聞こえる。
日記は思いのままそして思いの丈を綴っており、だんだん主軸が逸れている場面も多々あり、その整理されてないリアルさが面白い。
自分の不甲斐なさに悩みつつ、同時に仲間の不運さ、もしくは世の中(というよりマスコミとそれに踊らされてるSNSではなかろうかと思う)の愛の無さへの憤懣やる方ない思いが日頃から渦巻いているのが伝わる。
きっとこんな日々がもう少し続くはずだ。
そして彼女は先日、ホクレンディスタンスで1日に1500mと5000mの両方で優勝した。
あっぱれでした。