荒川洋治のレビュー一覧
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ネタバレ荒川洋治さんが選んだ「昭和の名短篇」戦前篇の登場である。これは読まないわけにいかない。
各作品について感想を述べる。
芥川龍之介「玄鶴山房」
芥川は昭和2年7月に自ら命を絶った。昭和の文学は芥川の死に始まったと言ってもよい。玄鶴という小資産家の「山房」には娘のお鈴と銀行員の重吉夫妻が同居している。玄鶴もその妻のお鳥も老齢で結核を病んでいる。ある時、山房のかつての女中であり、玄鶴の妾でもあった二十代のまだ若いお芳が、子を連れて玄鶴の「看病」にやってくる。この微妙な関係にある縁者たちが、一つ屋根の下で過ごす。娘婿の重吉や住み込みの看護婦・甲野の視点も絡みながら、彼らの心理が描写される。怪奇や幻 -
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荒川洋治のエッセイが気に入っているという記憶があって本書を手に取る。読み始めてこのエッセイがその記憶とどう繋がっているのかが解らなくなる。
本書の中で、荒川洋治は具体性の人である。どこに落ち着かせるべきかがあいまいな事柄を、そのままに放っておくことができない。人口や地名が内包しているかも知れない隠された真実が気になる。そんな人であることが強烈に伝わってくる。あれれ、こんな感じのエッセイを書く人だっただろうか。
しばらく読み進めると、荒川洋治がことばについて語り出すのを目にする。ああこれだ。この感じが気に入っていたのだろうな。
時に荒川洋治の評は厳しすぎるように思えるときがある。こと -
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「本を読むのが遅いんです」そういう人に、このエッセイ集を薦めたいと思っている。
作者は荒川洋治という詩人である。だから自然と、詩や文学についての話が多くなる。けれど、困ったことがある。そこであげられた作家のほとんどを私は知らなかったのだ。
彼が口にするのは、忘れられた作家なのである。文学史にも残らない、皆に忘れられた人々。荒川はそういう作家の小さな声を聴き取ってゆく。こんなひとがいたそうですよ、あんなひともいたそうですよ、荒川洋治はそう語る。
本書には何かを「教えてやろう」という気配もないし「主張するぞ」という意気込みもない。ただ静かに、荒川洋治は語っている。
冒頭に「読むのが遅い」人 -
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荒川洋治・編『昭和の名短篇 戦前篇』中公文庫。
現代詩作家である荒川洋治が厳選した昭和の名短篇13篇を年代順に収録した文庫オリジナル・アンソロジー。解説では昭和の名長篇も紹介される。
昭和は遠くなりにけり。昭和から平成、令和と時代は移ろい、令和という新しい時代を迎え、昭和の価値感は全て崩壊してしまったと言えるだろう。日本人が戦後の焼け野原から立ち上がり、身を粉にして働き、高度経済成長期を経て、ものづくり大国としてその地位を確立したのが昭和であった。
今や働き方改革などと言って、残業規制や様々な休暇制度が導入され、労働時間は減少の一途を辿り、それに物価高も相まって実質的な賃金は減少している -
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日記のいろいろが紹介されています。本文のまず始めのページには、イタリアの働く子供の日記の手書きのページが紹介されていて、それだけでもう、やられた!という気分になりました。
筆者が小学生のときの日記に書かれた担任の先生の、気の利いた優しく鋭い赤インクのコメントを読んでは、「担任の先生ってえらいなあ・・・」と思う。
名作に登場する日記の記述。それも日本だけではなく海外の作品からも紹介されています。また、文豪が実際に綴った日記も。
日記というものが、こんなにもさまざまな形、ありとあらゆる重さで書かれている事実も興味深く、そして、自分のために書いたものであっても、時を経て他人に読まれるものである -
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[ 内容 ]
絵日記、交換日記、旅日記…人はどんな日記をつけてきたか。
日付、天気、あとは何を書くのも自由。
あとで忘れてしまうことを記しておく。
書きたくないとき、続けられないとき。
日記から文学が生まれる。
[ 目次 ]
1 日記いろいろ(絵日記;日記へ ほか)
2 日記はつけるもの(「書く」と「つける」;日付と曜日 ほか)
3 日記のことば(手書きの文字;はじめての日記 ほか)
4 日記からはじまる(まず、つけてみる;夕立の二人 ほか)
5 あなたが残る日記(一〇大ニュースを決める;東京の日々 ほか)
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆ -
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詩人、荒川洋治のエッセイ集。タイトルが『日記をつける』だけれど、別に日記の書き方云々という話ではない。いろんなひとの日記をちょこちょこ引用しながら、荒川さんがぽつぽつと語る。これはそういった本である。
それにしても世の中には様々な日記があるようだ。たとえばある著名な文学者は、「…姪を犯そうと思ったんだけどあの野郎逃げやがった強引に押し倒せばよかったぜ…」なんてことを赤裸々に書いていて、極悪非道ぶりが伝わってきて楽しい。(ちなみにこの日記はあんまりにも酷すぎるため、遺族が「公開しないでくれ」と頼みこんでいたはずである)またある作家は、ひそやかに家族のことを書いている。時々その中には娘が書いた