西山太吉のレビュー一覧
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2023年2月24日、ひとりの元新聞記者がこの世を去った。
西山太吉は毎日新聞に籍を置き、1971年に沖縄返還時の日米の
密約を暴露した。
世紀の大スクープではあったが、情報の入手先が外務省の女性
事務官だったことから後の裁判で「男女間のスキャンダル」に
矮小化され、本来であれば全力で彼を守らねばならなかった
日本のメディアは、守るどころか彼を放逐した。
「国家の嘘」と闘い続けた西山が、佐高信を相手に沖縄密約を
はじめ、昭和から今に続く政治と政治家について語った対談集だ。
毎日新聞の記者時代に大平正芳と深い付き合いのあった西山だけ
に、宏池会擁護が多い。だが、自民党を語る上で宏池会と清 -
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1972年の沖縄返還における密約取材を巡り、外務省の女性事務官から機密文書を漏洩させたとして有罪となった毎日新聞記者、西山太吉の本。
密約が存在したことは、佐藤総理の密使として暗躍した若泉敬氏の自戒本や、外務省元局長の吉野氏の告白、さらにはアメリカ側の情報公開で明らかになっている。そうした密約がなぜ締結されるにいたったのかを分析していて、非常におもしろく読めた。
当時のアメリカとの優劣関係、国際・国内情勢から、政府が密約によっていろいろと取り繕ったのはわからないでもない。金銭的な密約は、官房機密費でも出したのかと思ったが、しっかり国会では総額としては通している。その内訳に実際には「払わない」と -
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ネタバレ[ 内容 ]
日米の思惑が交錯した沖縄返還には様々な「密約」が存在したことが、近年相次いで公開された米公文書や交渉当事者の証言で明らかになってきた。
核の持込み、日本側の巨額負担…。
かつてその一角を暴きながら「機密漏洩」に問われた著者が、豊富な資料を基に「返還」の全貌を描き、今日に続く歪んだ日米関係を考察する。
[ 目次 ]
第1章 「沖縄返還」問題の登場―その背景と日米の思惑(池田から佐藤へ ベトナム戦争と沖縄返還 ジョンソンからニクソンへ)
第2章 核持込みと基地の自由使用―交渉とその帰結(1)(明かされた核密約 基地の自由使用と事前協議の空洞化)
第3章 財政負担の虚構―交渉とその帰 -
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先日、ブログで書いた「運命の人」を読み終えてすぐに購入した本。小説の最後で主人公・弓成は言う。「沖縄を知れば知るほど、この国の歪みが見えてくる」。これは一体何を意味するのか。返還以降、対米関係において日本が置かれている状況とは何なのか。弓成のモデルとなった元毎日新聞記者・西山太吉さんが書いた本書は、それらの疑問に多くの示唆を与えてくれた。
著者は、沖縄密約は返還全体を包み隠す虚構だといい、国家による「情報犯罪」と断じる。そして、返還交渉を検証することなく、これまで政府がとってきた道は(宣伝文句に使う)沖縄の負担軽減でも、(他国からの侵略に対する)抑止力の維持でもない。真相は「新たなる負担の追 -
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権力とは恐ろしい。使い方を間違えれば現在のようなウクライナ戦争も起こるし、北朝鮮のように国民が飢えてでも核ミサイルを飛ばそうとするなど、世間一般には間違っていると断言して出来ることが世界中で頻繁に発生する。
我が国の権力の頂点と言えば、民主主義国家だから原則的には国民にあるのだが、その代表たる国会そして内閣総理大臣が実務上の最高権限となる。政治家たるもの誰しも最終的に目指すのは総理の地位であろうし、それを手にするためであれば汚い手、禁じ手を使う。
本書前半は池田総理から佐藤栄作へと権力の移り変わりに際して「利用された」と言っても過言ではない沖縄変換問題、沖縄密約の発生経緯を辿っていく。当然、沖 -
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もともと気にはなっていたけど、書評でも何度か目にするにつけ、これは読んどかないと、と。上梓後間もなく、鬼籍に入られたということだけど、この対談時点では、自身の寿命もネタにしてしまえるくらいに元気そうなのに、分からないものですね。さておき、いわゆる”冤罪”の犠牲者として生きることを余儀なくされた氏から、直接本書のような発言を得られた意義は大きい。さすが佐高さん、って感じ。にしても改めて、一族を挙げての隠蔽体質にはあらためてうんざり。その影響が色濃く残る今の政界では、ハト派の保守本流としての宏池会と言われても全然ピンとこないし、岸田さんからは、その気概なんて欠片も感じられない訳で。
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西山太吉『沖縄密約ー「情報犯罪」と日米同盟』を読む。
読んでいくうちに1972年の西山事件と2010年の一色事件の
共通性に気づく。いずれも国家公務員法違反に問われた。
僕はふと疑問に思う。
僕たちは主権者として選挙のたびに投票を通じて
政党、政治家に権限を託す。
しかし、選挙と選挙の間に託した権力がどう運営されているか、
国民が監視する仕組みは充分なのだろうか。
沖縄返還にあたって日本がアメリカと密約と結び、
税金の使い方を隠蔽し、責任者たちが国会でも偽証する。
対中関係で領土が侵犯されている現実を示した映像資料を
突然「国家機密」として一部国会議員以外には公開しない。
国の未来を憂い、