茶懐石「辻留」二代目主人である著者が、料理にかんするさまざまな所感をつづったエッセイです。
とくに前半には、俳句を織り込みながら「食」の歓びを語り、道元の「典座教訓」に言及しながら「道」としての料理のありかたを述べるなど、エッセイとしてすぐれた内容の文章が多く収録されています。著者の日本語の美しさ
...続きを読むも印象的です。
ただ、わたくしにとって本書に書かれているような「食」との付き合い方は、やや高尚にすぎると感じてしまったのも事実です。有元葉子の料理にかんするエッセイを読んだときのように、そこで提唱されているライフ・スタイルにあこがれるというスタンスで読むことはできなかったのですが、あくまでエッセイとして文章の妙味をあじわうことのたのしみは十分に得られたように思います。