小菅桂子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
カレーライス愛好家必読の一冊。
本書では、西洋料理であるカレーライスが、如何にして日本の国民食になり得たかを辿っている。日本文化でよく論じられる、外国文化の受容と改良という特色が、カレーライスという食文化においてもよく表れていると感じた。
本書で特に興味深かった箇所は、第三章のカレー日本史事始である。日本食化したカレーライスは当然インドカレーやイギリスのカレーとは似て非なるものであり、相違点の一つにジャガイモ・ニンジン・タマネギといった具材が挙げられる。これらの野菜は江戸時代までは日本で積極的に栽培されておらず、明治時代になって栽培が進み、徐々にカレーライスに取り入れられていく過程が面白か -
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国民食ともなった「カレーライス」の歴史をたどる名著。
カレーライスとは何か? というところから、明治期にはじめてカレーライスと出会った人たちの感想、そして手軽で美味しい洋食として広まり、レトルトカレーの登場で一気に国民食になった流れが良く分かる。カレーライスの歴史は結構明らかになっている部分が多くて、目新しいと感じた部分は少ないけれども、概説として良くまとまっていて、一家に一冊欲しいなぁと思わせるものがあった。
今や宇宙食にもなっているカレーを通じて、日本人の創意工夫を刺激してやまない美味しさの魅力に迫る。カレーライスって大好きなので、この本を読んだら「今日はカレーを食べよう」という気にな -
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Posted by ブクログ
タイトルのとおり。カレーが日本でこれだけ根付いたのは何故か。しかもルーツであるインドと異なるテイストで。の研究を行ったもの。
外国のものなのでそりゃ明治時代くらいから始まったんだろうくらいの想像はついたが、それ以上の事情があった。今や料理初心者がまず作るくらいの庶民的料理が、高級路線だった時代があるとは。関東と関西でカレーの食べ方の違いがあるのも初めて知ったが高級路線と庶民路線から違っていたとは。また、レトルトどころか固形のルーなんて戦後に生まれたとか意外と新しいとは。何故か、は本書を読んで欲しい。
カレーにとどまらず、その具材や同時代に誕生した他の西洋料理のこともへえ!と思うことが書かれてい -
Posted by ブクログ
インドで生まれ、イギリスを経て「洋食」として日本へ入って来た、オレらが大好きなカレーライス。
その、受容と日本化のプロセス・歴史が全部わかる本。
日本のカレーの特徴として野菜(芋玉にんじん)があるようだけど、明治に入って北海道で川田「男爵」やあのクラーク博士によって普及が始まったということもあり、そのくだりが特にエキサイティングだった。玉ねぎなんかも歴史は意外に浅くて、始めは「こんなラッキョのオバケみたいなのが食えるか」という感じだったらしい。カレーでも、当初は白ねぎが使われていた由。
東京の高級化(中村屋)・大阪の大衆化(阪急百貨店、小林一三)や、ライスカレーとカレーライスの呼び名の経緯 -
Posted by ブクログ
まさかの講談社学術文庫でカレー。しかもこの表紙、素晴らしく美味しそう。伝統的な、食堂で出るようなとろみのあるカレーっぽいですね。
日本のカレーはイギリス経由、というのは美味しんぼを読んだ(ほとんどの)日本人のリベラルアーツと言ってもいいですが、そこらへんから戦後までのカレーの歴史を読みやすく纏めています。
個人的には、ビーフカレー、ポークカレー、チキンカレーのどれが日本のカレーライスの正統なのかを確かめておきたかったのですが、明治5年刊の「西洋料理指南」によると、「鶏海老鯛蠣赤蛙等のものを入て能く煮」という記載があるそうで、鶏の文字があったことよりも「赤蛙」の2文字の強烈さが印象に残ります。 -
Posted by ブクログ
前の副将軍水戸光圀ー日本人なら誰知らぬものもない史実と巷説に縁どられたこの人物の生きた時代は、泰平の世を謳歌する町人文化が華麗繚乱に絢を競ったときであった。なかでも食の世界は象徴的な展開をみせ、その潮流はあらゆる階層の人々を巻き込んでいく。光圀とても例外ではない。起伏に富んだ生涯のなかで、こよなく酒を愛し、味覚へのこだわりさえ感じさせる光圀の日々の暮らしは、近世食文化の黎明を如実に物語っている。(1992年刊)
・はじめに
・序之章
・壱之章
・弐之章
・参之章
・あとがき
読みやすい文体である。水戸光圀の記録をとおして、元禄時代の食文化がうかがえるが、どんな料理なのかいまいちイメージがわか