山下博司のレビュー一覧
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ネタバレ身体の操作により精神の究極の解放を目指す。悠久のインド文明とともに生まれ、現代せれぶたちに愛好されるまでに世界的ブームとなったヨーガ。豊饒にして混沌たるインド思想を通底する特異な身体観とその背景にある哲学的思弁の本質を、インド思想史の専門家の立場からわかりやすく解説する。
インダス文明の頃には存在していた瞑想の風習は、やがて侵入してきたアーリア人の信仰にも取り入れられていく。4~6世紀に『ヨーガスートラ』が成立し、ヨーガは体系化される(古典的ヨーガまたはラージャヨーガ)。それは生活習慣や坐方、呼吸を整え、次第に自己の内面へと意識を向けていき、最終的に主客の滅却、心の働きの停止を目指す。13世紀には坐方と呼吸法に重点を置くハタヨーガが成立する(古典的ヨーガの予備段階という位置づけ)。エクササイズ系の現代ヨーガは、このハタヨーガを源流としている。
1970年前後に流行した第一次ヨーガブームは、そのころ活躍したヨーガ師の傾向や当時の風潮も相まって瞑想や精神性を重視するものだった。1990年代、ハリウッドに端を発した第二次ヨーガブームは肉体的要素を重視している。
本書の後半では近現代のグルが詳しく紹介されている。
主な人物は、
・ラーマクリシュナとヴィヴェーカーナンダ
・オロビンド・ゴーシュ
・スワーミー・シヴァーナンダとスワーミー・クヴァラヤーナンダ
・アーナンダ・マイー・マー
・パラマハンサ・ヨーガーナンダ
・マハルシ・マヘーシュ・ヨーギー
・オショー・ラジニーシュ
・バクティヴェーダーンタ・サラスワティーとクリシュナ意識国際協会
・B・K・S・アイヤンガール
・ビクラム・チョードリー
など。
また、著者がシンガポールで受けたレッスンの様子がなんとも大らか(いい加減)で面白い。 -
Posted by ブクログ
まずエスニックジョークが面白すぎる。インド人というのはどうしてここまで日本人と真反対なのか、、。マジで見習いたい。その忍耐力、その自己主張、その英語力。
私がとりわけ関心をもったのは英語だった。インドはヒンドゥー語だけじゃない。民族の言葉が数多ある。そして英語がステータスになってるように優秀な人はバンバン英語で話すし、そういう社交の場になっている。やばい。
よく考えなくても、日本語は日本国でしか話されない。いっちゃえば超ドマイナー言語だ。それで世界の人とコミュニケーションとれるか?答えは、否だ。ただ、英語じゃなくても母国語で学問を修められる日本ていうのは結構すごいし稀有な国ではある。しかし世界の国々が追い越せ追い抜け引っこ抜け状態な今では、英語を話せないとけっこうキツい(世界を目指すならね)。
日本国内で完結していいのか?と疑問に思う身としては、やはり危機感を覚える。ていうか、英語も操れた方が仲間が増える気がする。マジで英語やんなきゃと思う強烈な1冊だった。 -
Posted by ブクログ
思想・宗教の内容というより、それが生まれた自然環境や歴史的経緯を中心に解説している。モンスーン気候によって育まれた植物に囲まれ、それに馴化し同化する生き方や輪廻の考え方が生まれたこと、遊牧民族だったアーリア人が定住して農耕生活に変わる過程で、信仰の対象が天から地界へと変化し、都市の発展によって自由な思想活動から仏教やジャイナ教が生まれたとしている。
インドでは、非常に多湿な赤道西風が夏季には北上して南西モンスーンとなるが、冬季は東風帯に入って乾燥する。デカン高原の土壌は肥沃で保水力が高い。国土の55%が農地で、世界の耕作地の1割以上を占める。概ね年降水量1000?を境にして、北部で小麦、南部で稲が栽培されている。
インド人は、肥沃な土壌と豊かな植物が生育する環境の中で、それに馴化し同化する生き方を選んだ。労働や生産の倫理より分配の道徳が強調され、勤勉より気前よさが求められ、布施や喜捨が讃えられ、ものを手放す度合いで人間の価値が測られる。行為をやめること、無為が哲学的・宗教的価値を帯びた。
インダス文明に見られるインド北西部の小麦、大麦、豆類の栽培と牛、ヤギの家畜化は、9000年前まで遡ることができる。また、沐浴、女神への崇拝、動物や樹木への畏敬は、ヴェーダの時代には見られないが、後の仏教、ヒンドゥー教の時代に現れてくる。紀元前2000年頃、インダス川河口周辺の地盤が隆起したため、洪水が多発して川筋も変わった。乾燥化も急激に進行して、インダス文明の崩壊を招いたと考えられる。アーリア人の侵入は紀元前1500年頃と推定され、紀元前1900〜1800年のインダス都市文明の衰退期は年代的に異なるため、アーリア人による滅亡説は否定されている。ドラヴィダ語の南方への拡大は、紀元前一千年紀以降。
紀元前1500年頃、地球上で一斉に気温が低下し、インダス河流域は乾燥化した。中央アジアからアフガニスタンに進出していたインド・イラン人の一部が、馬や軛のついた二輪戦車をもってパンジャブ地方に侵入する。讃歌・詩節から成るリグ・ヴェーダは、紀元前1200年頃から編まれ始めた。ヴェーダの中の宗教観念や儀礼体系がバラモン教。紀元前800〜500年には、哲学的内容を持つ聖典ウパニシャドが成立し、その後のインド哲学やヒンドゥー神学に大きな影響を及ぼした。
アーリア人が進出した頃のガンジス平原は、現在よりも湿潤で、熱帯性の森林で覆われていた。こうした自然の中で、すべては循環し、歴史は繰り返す輪廻の思想が生まれてきたと鈴木は考える。紀元前1000年頃、鉄器が用いられるようになって農業生産が高まり、王侯、武士、司祭、修行者、商人、職人などが活動するようになった。農業との結びつきが強くなると、主たる関心は天界から空界・地界へと漸移し、思惟も思索や瞑想など自己の内部に向けられていった。一般に、農耕社会の方が他の社会に比べて宗教儀礼が多く、入念になることが確認されている。紀元前600年頃には、アーリア人はガンジス平原の広い地域を覆うようになり、いくつかの都市が形成されて繁栄し、商工業の活況により身分秩序も緩んでバラモンの地位やヴェーダの権威も形骸化した。自由な思想活動が展開される中で、仏教やジャイナ教が興った。ガンダーラ地方で仏像が出現したのは、紀元1世紀半ばのヘレニズム時代。
インドでは、いかなる行為もそれにふさわしい結果を生み出す因果応報の考え方があり、後期ヴェーダ時代に支配的になった。しかし、現実社会では必ずしも成り立たないため、その弱点を補強するために来世や輪廻の概念が組み込まれた。何人も行為の結果から逃れられないというカルマの法則は、行為そのものから身を引く道を選ばせる結果となった。行為と結果の連鎖を断ち切る解脱の考え方が生まれ、解脱によるハッピーエンドを効果的にするために、前段階の苦しみや哀しみが強調されるようになった。 -
Posted by ブクログ
成功しているインド人に焦点を当てているため、もしインドを知らずにこの本だけを読んだら「インド人ってすごい!」と誤解してしまうかもしれない。現実には、そうでもないインド人のほうが多い。
インド人の英語力についての章の内容には、個人的には同意しかねる。英語で書かれた新聞を読むと「職業ジャーナリストがこのレベル!?!?!」と唖然とすることが多い。とにかく文法がめちゃくちゃ、組織としてクオリティコントロールもない。一般人についてはいわずもがな。もちろん筆者の言うようにごく一握りのエリートは立派な英語を駆使するのだけど、それがインド人全般に当てはまると思ってはいけない。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ古代インドの多様な思想について、自然や環境との関連から概説した書。インダス文明(ハラッパー文明)から初期仏教までの古代思想を、インドの気候風土や地理的環境などの視点から読み解く。
本書は、インドの古代思想を自然・社会環境から考察したものである。気候学や環境考古学などの知見を引きながら、著者は「無所有」・「輪廻」等インド思想に特徴的な思想が自然環境の影響の中で育まれてきたと説いている。特に著者が重視しているのは乾季と雨季を繰り返すインドのモンスーン気候と、インドに侵入したアーリヤ人と先住する「森の民」の遭遇である。厳しい乾季と恵みの雨季の繰り返しは輪廻的思考などを生み出し、またアーリヤ人と「森の民」の接触は両者の思考法に大きな影響を与え、後のインドにおける多様な思想発展へと繋がっていった、と著者は主張する。
古代インド思想の概説書と言うよりかは、本書は自然環境から見たインド思想を論じたものと言ったほうが正確である。自然・社会環境、特に前者から思想史を論じるという試みは興味深いもので、インドの多様な気候環境など様々な情報が紹介されている。ただ環境と思想の関連については(直接的な証明が難しいということもあり)推論に推論を重ねたように思える点もいくつか見受けられた(特にインダス文明)。また、インドの地名や地形が頻出するので、それらを一つにまとめた地図があるとありがたかった。