中村隆之のレビュー一覧
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本書は「スミスの挙げた資本主義の道徳的条件を満たすための挑戦として,スミス以後の経済思想史」を平易にだが,本質的に把握しようと試みたものである。
「お金儲けがフェア・プレイの精神とも,社会全体との富裕化とも切れた利潤獲得機械になってしまうことを,いかに抑止するか」という筋で,J.S.ミル,A.マーシャル,ケインズ,マルクスが取り上げられる。
一方,その筋からはずれると著者が考えるハイエクとフリードマンは傍流として位置づけられる。傍流ではあるが,現代の経済政策などに強い影響力をもつ経済思想という位置付けだ。
そして,最後に「組織の経済学ー現代の経済理論における株主の位置づけ」が置かれる。こ -
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1週間以上も前に読み終わったのに、なかなかレビューできなかった。
というのも、本書が扱う事柄がとても広範に及んでいるから。
今でもきちんとまとめられるか心もとない。
ばらばらにトピックを上げるだけになるかもしれない。
そもそも自分がこの本を手に取ったのは、ブラック・ミュージックのことが知りたかったから。
昨年、クインシー・ジョーンズが亡くなり、今年もスライ・ストーンが亡くなった。
その追悼番組を聞いたりするうちに、自分たちが子どものころから聞いていたポップ・ミュージックの中に、もはや影響がまったくない音楽なんてないのではないか、と思われるような状況だったんだ、と改めて思った。
筆者はフラン -
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“Black Lives Matter”がメディアを賑わした際、「まだそんなこと言ってんの⁉︎」と思わず口をついて出てしまった。当たり前のように人種差別の愚かさを学校で習い、「人類みな兄弟」の風潮にどっぷり浸かってきたもんだから、不思議で仕方なかったのだ。
本書を知った時その出来事がフラッシュバックし、気づけば当時感じたモヤモヤもだいぶ大きくなっていた。
著者はブラック・アメリカを専門とするフランス人歴史家。フランスは移民大国で、著者の講義にもかつて領土だったアフリカやカリブ海出身の学生が目立つという。
「生物学的に人種は存在しない。しかし政治的、社会的現実として人種は存在する」
後者の忌ま -
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戦後すぐにユネスコによって否定された「人種」という概念が今なお根強く存在する。本書は人種の起源を奴隷制に置いてその本質を明らかにしていく。
奴隷制は人種差別によって生み出されたのではなく、奴隷制こそが人種概念を生み出した。すなわち、奴隷制が解体される中で支配のツールとして白人、黒人という区別を設けていった。筆者は、奴隷の本質は親族性の否定と言う。そして、黒人は家族や国家の構成員ではないという意味で親族性が否定された下位の人種であり、奴隷と概念的に連続している。
本書は本体の人種に入る前に壮大な奴隷の歴史について論じている。ヨーロッパ諸国が奴隷貿易に関わる前の奴隷制の歴史から始まっていて、直前に -
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カリブ海・フランス語文学の専門家による人種差別についての研究結果をまとめたもの。15世紀以降の西洋を中心に学術的にまとめられている。現在の価値観からすると、ごく最近まで甚だしい人種差別が当たり前のように行われていた事実は確認でき、とても役に立った。ただし、差別イコール「悪」と捉えて全体に論理が展開されているように感じられ、一方的に体制批判的なところには違和感があった。
「圧倒的多数は戦争に反対でしょうが、戦争がこの世界から消滅したことは人類史上ありません。私たちのうちに民族・宗教・性別・文化などの差異がある以上、つまりは私たちが他者と共に生きている以上、他者を差別したり排除したりする言説は永 -
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アダム・スミスにはじまり、ミル、マーシャル、ケインズ、マルクス、さらに現在の市場主義的な常識の形成に影響をあたえたハイエクやフリードマンの思想についてわかりやすく解説している本です。
著者は「はじめに」で、「本書では、あえて経済学の歴史を一筋のストーリーとしてとらえたいと思う」と述べています。著者はまずスミスの思想について解説し、資本主義経済を正当とみなすことができるための条件として、「自由競争市場がフェア・プレイに則った競争の場であること、特に資本を動かす人間がフェア・プレイを意識する人間であること」「資産を事業に活用するのではなく、貸し出して利益(利子・地代)を得ようとする場合、その行動