感情とは、扁桃体に象徴されるように理性ではコントロールできない獣を飼っているようなものだという表現を思い出す。後悔も恐怖心も嫌悪感も、考えたくもない出来事が何度も頭に浮かんで、その度にネガティブな感情に支配される。自分の身体なのに、自分で統制出来ないものだ。それでも何とか、クヨクヨしても仕方ないとか
...続きを読む、悪く考えないようにしようと、後天的な理性で、それを飼いならそうとする。いずれ、獣は時間と共に消えていく。
では、心の監獄とは何か。著者はアウシュビッツに強制収容され、その過程で両親も殺されている。本では自らの体験を語るよりも、著者に対する相談に答える形で展開される。監獄とは、トラウマでもあるが、自己防衛のために形成した内なる聖域とも言えるのかも知れない。そして、その中において自らを保護したのは良いが、そこに囚われてしまう。恐怖の内側の自由にいながら、恐怖の境目には触れられない。それを乗り越えるのは「許す」こと。勘違いしてはいけない、他者ではなく、自分を許す事が重要だというのだ。
許すとは何なのか。ここからは私感だが、自分に課した約束事や思い込みを解き放ったり、もう少し力があれば事態は避けられたのではとか、因果を自らの責として考える事から解き放つ事ではないだろうか。背負っている荷物を下ろす事ができれば。