岡野八代のレビュー一覧
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10年前に出された書を文庫化することにより現代の状況を補筆されたものである。9・11に対して著名ねフェミニストがいかに反応したか、そしてその問題点はリベラルの根本的な問題点について考察が進む。続き慰安婦問題に関する問題についての論考に進み、個人の尊厳と戦時下の性暴力についての歴史的論考に進み、「修復的正義」によって正義を語る。ジェンダーフリー問題から立憲主義について語り、最後は戦争に抗するために国家の問題についてホッブスから解き明かす。最後の三牧聖子氏との対談も良い。ケアの倫理と題名にはあるが、直接的な論考が少ないのは10年前の書であるからか、しかし、その後の著者のケアの倫理についての論考の楚
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今更ではあるが…『ケアの倫理』という観点を知りたいと思い手に取ってみた。
岡野八好さんが7年の歳月を掛けて書かれた『ケアの倫理』。
日本の中で、これだけ『ケアの倫理』領域を深く理解をし、学び続けている人はこの方以外には居ないのではないかと思う。
熱の籠った熱い想いを感じざるを得ない渾身の著。
書くのにも時間が掛かったそうだが、読む方も結構、時間が掛かった。
今年の春に一度読み始めて挫折し、11月から再び気を取り直して読み直し、やっと読み終えた。
こんな話は理想論。
と、決めつけてしまうのは簡単。しかし、フェミニズムに限定しなくとも、「必要なケアをお互いに大切に考えて行く社会」はより住みやすい -
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第2波フェミニズムからケアの倫理までの展開。硬めの文章だけど読みごたえがすごい。以下は付箋を貼った箇所の引用。
“すでに触れたように、ケアはわたしたちの社会に遍在している。だが、女性たちが歴史的に担わされてきたケアは、その価値を貶められ、人間らしい活動とも考えられてこなかった。女性にふさわしいとされたケアを担うがゆえに彼女たちは、人間的に価値ある活動や領域から排除され、あるいはそこにアクセスすることが叶わなかった。その歴史とそこでの葛藤から、フェミニストたちが紡ぎあげた思想が、ケアの倫理である。” pp.11-12
“むしろ、本書の意図はその逆に、ケアという営みよの特徴を分節化することによ -
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このところ利他とかケアとかというキーワードを書名に掲げる本をこの本棚に登録しています。積み上がる一方ですがなんとなく読んだりもしています。同じようにジェンダーとかフェミニズムとかについての読書もそろりそろりとしています。ということで「ケアの倫理ーフェミニズムの政治思想」このビッグワードがクロスする、なんかでっかいタイトルに惹かれこの新書に取り組みました。なかなかキツかったです。キツイけれど読むの止められませんでした。止められないけど受け取りきれませんでした。頭ではそうですが、なんとなくお腹の辺りがゾクゾクする感覚を得ました。読み進めるにつれ利他とかケアとかジャンダーとかフェミニズムとか…今まで
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現時点で「ケアの倫理」を学ぶために最もまとまった書籍、ただ読みこなすためには、ある程度の基礎知識と粘り強さが必要である。「ケアの倫理」を読み解くためには、現在の社会を理解するための基礎たきな考え、マルクス、フロイト、そしてフェミニズムの歴史、そしてロールズの正義論、これは押さえておくべき基礎理論である。「ケアの倫理」が示す民主主義的な態度は、主流とは異なる「もうひとつの声」に耳を傾けること、それが今後の私たちの未来を照らす声になるし、そのこと自身でケアを問い直すことが新しい社会を作っていくことにつながる。新自由主義に基礎付けられた現状を続けるのか、「ケアの倫理」に基づいた社会を構築するのか、今
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この本は、アイリス・マリオン・ヤングの晩年の最後の著作で、私の考えでは政治的に非常に重要な意味を持ってくるテクストだと思う。参照先はデリダ、アレント、レヴィナス、フランツ・ファノンなど、錚々たる面々で、フェミニズム的な主体性の問題、あらゆる差別や政治的選択の自己責任などが網羅的に論じられる。
政治的選択は本当に自己責任なのか。(言ってしまえば視野の狭い)生活保護で生活しているような貧しい人たちの政治的選択は自己責任にしていいのか。きわどい問題を論じている。私には、この本は良い意味で、他人事ではなかった。政治の問題を、自分のこととして考えるいいきっかけになる本だと思う。 -
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読書会のために読んだ。
読書会用だからメモしながら丹念に読んだのもあるが、新書なのにとても時間がかかった。フェミニズムの歴史を知っている前提で盛り込まれており、リズムも悪いので非常に読みにくかった。
しかし、ほとんど知らなかったフェミニズムの歴史や功績を知ることができたこと、そして、女性がケアを担うことが「自発的に選んだ」となってしまう恐ろしさ。つまり、法的には平等で制度的には整っているのだから「あなたが選んだのよ」となるのであることを初めて認識しできた。法的な問題ではなく家父長制を含む社会構造の問題であるのを知ることができたのは大きな一歩である。 -
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育児、教育、医療、障碍者福祉、介護など、今の日本はどのケアの現場も強烈な人手不足。
将来的にも解消されていく見込みもない。
膨らんでいく焦りや恐れに対する何らかの処方箋はないものかと本書を読んでみる。
もちろん、ケアの「倫理」なので、今すぐにできる何かを説くものではないとはわかっているが。
ケアをめぐって明らかになる、人間社会の在り方、政治の在り方を考える。
それが「ケアの倫理」ということのようだ。
ギリガンの『もう一つの声で』が、この分野の原典であり、重要な著作だとのことで、著者はこの本が書かれ、受容されていく経緯を丁寧に跡付ける。
たしかに、歴史的にはフェミニストたちが問題として立ち上