ツイッターで表題作を作者自らアップしているのを目撃して、ずっと気になっていたので本を購入。
よかった。
間違いなく写真を活用している漫画だが、
写真を絵に起こすとき、点描やシンプルな線やから、立ち上がってくるものが、ある。それも、ずいぶん大きいもの。
2009年から2021年までの随筆漫画。
以下、18編読み返しながら、思ったことをメモしてみた。
(ざっくり4分割してみると、幼少期。)
・映画の思い出
・おてがみ
・ひとごと
(青年期。父母。)
・ユートピア ……なんと藤子不二雄A 「まんが道」の高岡に聖地巡礼!
・城山 ……母のだし巻きたまご。
・デジカメ
・父の母
(恋人。結婚。)
・デート ……三好銀「三好さんとこの日曜日」のテンポを連想。林静一「赤色エレジー」でこういう汗の表現があったかもなーとか。
・フォトグラフ
・遠回り
・一年目
・きんかん
(長女。長男。妻。……素晴らしい。)
・急がなくてもよいことを ……あったあった子供って散歩するとき要らないものを持っていきたがるよね。指さして言うのが好きな時期。そして「そんなに急いで大きならんでもええからね」成長し得ることと失うことはコインの両面のようなもの。この言葉の実感力よ。ルイス・キャロルが「鏡の国のアリス」でハンプティ・ダンプティに代弁させた、成長なんて7歳で止めておけ、という例のヤバめフレーズも、通じていると思う。
・空白期間 ……人が目を伏せたり目を瞑ったりする姿に聖性を感じるが、子供の寝顔はその極致。
・まだ今日
・夏休み ……出ましたー「キャバキャバキャバキャバ」!(「まんが道」の森安氏) 人を思い出すとき、ついバストショットで笑顔や澄ました顔が浮かびがちだが、子供の全体をちゃんと描いている。特にひーちゃんの脚の表現が凄い。子供って足を持て余すように動かしているというか。大人と大人は顔と、せいぜい手くらいでしか触れ合わないが、子供は足まで含めて全身でぶつかってくるもので、遊んでいるとあー人間って足があるんだなーと気づかされる。
・柿の木
・海 ……このラスト一コマ! 一冊通しての感想にもなるが、ただの日常の一コマであるあるほっこりーみたいなことではなくて、生活を見つめることで聖性が立ち上がってくる瞬間が表現されている、というか。ゴッホが想像で描くことを自らに禁じたのはモデルを描くことでキリストを表していた、とか。大袈裟に書いてしまったが、忘れないでいたいという描画の手つきが祈りに似ているというか。自分には絵を描く能力はないけど、いま自分が体験しているかけがえのない生活を、代わりに漫画にしてくださって、作者様に感謝。
◇あとがき