初田哲男のレビュー一覧
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2020年に行われた特別講義を文章化した本。
第一線をいく科学者の考える、役に立つ研究と役に立たない研究について。役に立つとは何か。目先の役に立つことだけでいいのか。学ぶということへの自分の価値観を振り返れる本だった。
大学生の頃の研究室は、役に立たないとは言わないけれど、役にたつまでに時間がかかる領域だった。もっと、目に見えた社会の変化に近い分野に進みたくて、大学院では外部進学を選択した。
大人になって、ありがたいことに社会人ドクターのお誘いを何度かいただいたことがある。もっと学びたい気持ちはあるから、すごく惹かれたけれど、結局その道に進まなかった。その理由は、「役に立つ」を強く求められるから。まあ、社会人で学位を取るとはそういうことだと思う。でも、いくら考えても、仕事を見据えて学位をとる選択を私にはできなかった。自分にとっては、学ぶということはもっと尊いことで、探究心や知りたいという欲求の先にあるものだと思っている。ある人には神聖化しすぎ、とも言われた。でも、譲れなかった。
役に立つ分野に進みたかったのに。いつの間にか、役に立つことと、学びを強く結びつけることを拒んだ。
この拒否感は、本書の中に出てくる、科学と技術の違いだったのかな。仕事を進める上で、技術を学ぶことは重要。一方で、科学は「面白い」とずっと感じていたい。面白いんだよってワクワクしながら話せる大人でいたい。 -
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文系の存在意義を考えるために読んだ。理系の学問でも、研究資金獲得競争に邁進せざるを得ずに有用性という観点に合致する分野に研究領域が収束しているという指摘になるほどと思わされた。ノーベル賞受賞者の、「楽しいと思える研究をする研究者が増え、研究の多様性があることが大切」という言葉は「それって何の役に立つんですか?」という社会における日常的な問いかけを見直すという示唆を与えてくれる。科学史の専門家から提示された、貴族的な国家と民主主義国家での学問・芸術保護のスタンスの違いは斬新な視点であり、歴史上繰り返される衆愚政治や近代の大衆社会における孤独・閉塞感などの民主主義国家のマイナスな特質を考えさせられる観点であった。
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岩波ジュニア新書なので中高生くらいが主ターゲットなのだろうか。素数、AI、数理生物、ダークマターなどの興味深い話題が非常にわかりやすく書かれていた。
特に素数のところの数論幾何の解説はとてもわかりやすくてよかった。数論幾何がなぜすごいのかというと、グロタンディークがスキームというものを生み出すことで、整数論の問題を空間の問題へと変換し、幾何学の分野で蓄積されていた膨大な研究成果(コホモロジーなど)を整数論の分野に適用可能としたから、とのことで、数論幾何やスキームへの興味を喚起する。解説は理化学研究所で数論幾何を研究する宮崎さん。数学を理解するうえでこうした理論が生まれた背景、モチベーション、を理解することが非常に重要だと思うが、そうした解説はなかなか少ない印象である。 -
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ネタバレ「研究」に対して、役に立つ・立たない、といった場合、その話している人の頭の中がそれぞれ違うので、話自体が噛み合っていないことも多い。そんな中で、異なる分野の研究者、ここでは数理学、生物学(ノーベル賞の大隅先生!)、人文学の3名の研究者が講演後、座談会形式で課題と具体的な取り組みを話し合っている本。
ナビゲーターは、研究者を応援するクラウドファンディングを経営しているとのこと。基礎研究は、選択と集中と相性が悪く、説明責任を果たす上でも相性が悪い。一方で、説明責任自体は、果たすべきだが、何を説明すべきか、まったく関心がない人にどのように説明するかの工夫や方向性をしっかり議論すべきというのは、とても納得。
役に立つ/立たない、説明がつく/つかないの文脈でいくと、世の中には、説明がつかないけど成り立っているものがあり、例えば、地方のお祭りなんかがそう。その土地ならではのお祭りがあって、地元の人が大事にしていて、じゃあ、その価値はどこにあるかというと誰も「説明責任」は果たしていない。若い人も楽しんで参加しているという現状は、感情面としてアタッチしているということ。逆に言うと、感情面で納得がいっていないときに、「説明責任を果たしてほしい、他者に対して自分が納得できるようにしてほしい、それによってお金を出すことを納得したい」という問題が起きているのだ、という指摘はとても鋭いと思いました。役割として説明責任は果たすべきだが、○○の役に立つとウソに近いようなことは止め、一方で純粋に頑張っている人を応援したくなるような感情を醸成できると基礎研究の環境が良くなると感じました。
他に科学と技術を分けて考えるべきであるということ、国の果たす役割の重要性、一般市民が”推し研究者”を応援できる体制など、示唆に富む話が多数あるとともに読みやすさもあり、基礎研究、引いては好奇心が原動力になって研究に取り組める環境を構築できるような活動を継続して欲しいと思いました。 -
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人を動かす原動力はいろいろあると思うんですけど、研究については、「好奇心」とか「探求心・探究心」とか「興味・関心」であることが望ましいのだと思います。
ただ、世界的に、また、とくに日本では、それらを支えられるだけの土壌や理解、文化が乏しくなってきているように思いますし、その状態を危惧しているのが、本書の関係者だと思います。
一方で、その危惧を払拭するための動きがあるのも事実。
たとえば、この本においてナビゲーターを務めている柴藤氏は、そのような動きを支えている人の一人。
自分もいつかは、柴藤氏のような活動をしたいな、と思っていますので、そこに向けて、いろいろと作戦を考えていきたいと思います。 -
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3人の異なる分野の研究者が、それぞれ微妙に異なる立場から「役に立たない」研究について論じている。
3人それぞれの講演等の中から印象に残ったことを書き記しておく。
まず、理論物理学者の初田さんは、基礎科学の重要性を一般社会や政府に対して理解してもらうためには、科学者自身のアウトリーチ活動をより多様に、効果的に展開していくべきだと主張している。ADKと組んだ独自のアウトリーチの取組み(クリエイターと協力してプロトタイプを作っていくというもの)も紹介していて、興味深い。
次に、分子細胞生物学者の大隅さんは、自身が、当初全く引用されない分野だったオートファジーの研究を続けてきた経験から、安易に「役に立つ」分野を研究するのではなく、自分が本当におもしろいと思える分野を見つけることの重要性を説く。また、大隅さんは自身の財団を立ち上げ、研究者視点での「おもしろい研究」にファンディングしているなど、国の政策とは一定の距離を置いて基礎研究の支援を行っている。
最後に、科学史家の隠岐さんは、「役に立つ」というのは政治的な言葉(説得のための言葉)であり、決して検証のための言葉でないことを指摘している。「有用性」が持ち出されるのは、それが未来に関する言葉だからだ、という主張はなかなか興味深い。また、隠岐さんは、今般の科学技術基本法改正によって人文社会科学がいわゆる科学研究に位置付けられることになったことについて、人文社会系研究者が安易に「動員」されないようにと、警鐘を鳴らしている。「社会のため」と言ったときの「社会」とは何を指すのかが曖昧なまま動員されると非人道的な結果に繋がりかねないという指摘はもっともであり、まさに人文社会系研究者はその点に留意しながら研究をすべきなのでは、と感じた。 -
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ネタバレ役に立たないとされがちな基礎研究について議論された座談会のまとめ。
そもそも役に立つとは何かということ(線引きは不明瞭・恣意的 と理解した)、基礎研究は多様性を認めてこそ将来応用につながるような研究が生まれること(選択と集中はそぐわない)、研究内容に加えて研究者の人となりや生活ぶりを紹介するようなサイエンスコミュニケーションもあるといいこと、市民のニーズにあった研究という視点(シチズンサイエンスや当事者研究)など、盛りだくさんだった。
子供への理科教育は等しく必要としても、大人に対しては、研究にそれほど興味のない層に無理に届けなくてもいいのでは、という提案もあった。そういう視点は大事なように思った。 -
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この研究やっててなんの役に立つんだろう…
そう思ったことは一度や二度ではありません
大隅良典さんがノーベル賞を受賞した時に基礎研究の予算が減らされていることに対して警鐘を鳴らしていたことだけは覚えていました
その時にふと思ったんです
こういった予算を減らして、世界的な賞をとったときだけ絶賛し、評価される
それって何かおかしい気がするって
きっと、今でも予算は減っているのだろうと思います
それでいて、日本の研究の質が落ちたって……
そりゃそうでしょうって思うんですよね
役に立つのか、立たないのか
私もそれを科学や研究に対して思ってしまうことだけど研究の一番最初に取り組むきっかけって
これってどういうこと?
という知的好奇心から始まる
モノサシで測るようになったらそれはきっとつまらないものになってしまう -
Posted by ブクログ
ネタバレ知識は使えば使うほど増えていく資源
違う分野の相互作用が大切
基礎研究=原理の追求:縦糸 × 普遍性(論理体系)の探求:横糸
科学の発展は循環的
波及効果が大きいため、長期的視点が必要 多様性から選択
有用性以前に精神の自由
ゼロを1にするには「選択と集中」は使えない。
古代ギリシャローマの 有用性=ユーティリティ=公共での役割
自分にどう関係するのかを主張する民主的な社会は 高尚な学問に冷たい
説明責任 =感情的アプローチ
公的財源のなかのパイの奪い合い →アカデミアと企業の協業のプラットフォーム
一回は失敗してみる心の余裕