齋藤陽道のレビュー一覧
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ことば、は意味をやりとりするためのものではないのかもしれないと思った。もっと、形のないもの、を伝えあうことのようなきがした。
自分自身のことばをもつ、ということは、苦しさを生き抜くうえで、救いにもなるし、唯一息がしやすくなる、よりどころにもなる。
助けられてばかりの弱い自分じゃない、自分の足で立って、やっていくんだという表明にもなる。
うちのなかにあるものを表現するとき、それはことばでも、手話でも、写真でも、絵でも。意味を伝えたいのではなく、わからなさのままでも、「何かが相手に伝えることができた」の一瞬そのことがコミュニケーションなのかもしれない。
めにはみえない、きこえない、それでも -
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ろう者の著者は写真家で文筆家でプロレスラーなのだとか。著者と妻のまなみさん、樹さんと畔さんという2人の息子の4人での生活が綴られている。期待していたような心にゆとりがあるというか、見えなかったもの聞こえなかったものに気づかされるようなことばや出来事が散りばめられている。たとえば、手話ができると水の中でも会話ができるんだ。考えてみれば当たり前のことだけど、聞こえる自分ではなかなか気づかないことだと思う。聞こえない家族がいる家庭という、いわば普通でないのが当たり前の家庭だから、かえって常識的なものに縛られずに自分ための気持ちに素直に丁寧に暮らせるのかなとも思ったりした。
それから、p.120からの -
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ことばは存在を分類する。著者のあとがきの言葉である。が、この本を語る上で欠かせない分類。著者本人とその妻まなみさんは、聴覚障害者で、
コーダである二人の子と去年の夏生まれたばかりの第三子と暮らしている。手話のこと、毎日の暮らし、子育てについて、自分で撮った写真とともに(著者は写真家)綴ってるのが本書だ。非常に繊細な清らかな文章で綴られる日常で感じていること、出来事は深くこちらの胸を打つ。耳が聞こえて話せる自分は、言葉をどれだけぞんざいに扱ってきたのか?と、愕然とさせられる。この本を読んで、何ができるか?は、わからない。ただ、今まで知ろうとしなかった、手話のある暮らし、手話にまつわるさまざまなエ -
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おかあさんといっしょのエンディングテーマの作詞者さんということで身近に感じて手に取った。
ご自身は聾で、同じく耳が聞こえないパートナーとの間に、耳の聞こえる所謂CODAのお子さんが2人の、合わせて4人家族の日常の様子が写真とともに綴られてる。
光を感じるキラキラとした言葉。家族の体温を感じる温かくて切ない言葉。五感のうちのひとつがない著者から紡がれる日常世界はとても感性豊かで刺激的だった。
そしてCODAであるお子さんとのやりとりは、すごく愛情深くて、純粋に「あ、子育てっていいものなんだな」と思えた。自分と違う生き物とこんなに深く心を通わせられること、不安な夜も体温を感じられること、成長が -
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齋藤陽道(さいとうはるみち)さんを知ったののは何だったのか覚えてないけれど、興味を持ったのは、ろうの写真家だというプロフィールだった。
無音の世界で、目を凝らし、写真を撮る。
どういう感覚なんだろう。
その後、文章を読んで、その文章にも惹かれた。
世界に対して、真摯に向き合い、パートナーのまなみさんとも、小さなお子さんたちとも、真剣に、誠実に向き合っている姿に感動する。
また、ときおり登場するオノマトペが独特で面白くて、思わず二度読みしてしまう。
エッセイと響き合う写真は、不思議な感覚を呼び起こされた。
こんな一瞬があるんだ、という驚き。
やっぱり、子どもは自然の中にいると生き生きするな、とい