西山厚のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
奈良では、古いものほど黙っているように見える。
仏像は語らない。石も、瓦も、千年のあいだそこにあるだけだ。その沈黙の奥から、人の声が聞こえてくる。一文一文が深く、時の重みを伴っている。
祈った人がいた。つくった人がいた。壊れれば直し、焼ければ再び建て、次の世代へ渡した人がいた。千年残ったのではない。千年、誰かが残してきたのである。
奈良を歩く。鹿の脇を過ぎ、古びた石段を上り、寺の鐘を遠くに聞く。ふと足元の石にも、見上げた軒にも、自分よりはるかに長い時間が流れていることに気づく。
歴史とは、過ぎ去ったものではないのだろう。誰かが残し、誰かが受け取り、また誰かへ渡してゆくもの。
千年前を歩いている