神永曉のレビュー一覧
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いやあ、これは読みごたえがあった。新聞広告にあった「人一倍って何倍?」というコピーが面白かったので、言葉についての軽い読み物かと思って読み出したのだが、著者はあの「日本国語大辞典」の編集者、実にみっちり濃い内容であった。
言葉の誤用や揺れについて書かれた本はよくあるが、ここまで多くの語や成句が挙げてあるものはあまりないだろう。また、「これこれしかじかの理由でこれは誤用です」と指摘するだけでなく、どの程度そうした使われ方が一般的になっているか、なぜそのように使われるかなどについても考察されていて、そこが面白かった。
著者は仕事柄か、「言葉は変化していくもの」といたって柔軟な考え方をされている -
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「がたい」はいまだに語源が不明
「ぐっすり」=good sleepが語源、はウソ。江戸時代に「十分な、すっかり」の意で使われている
「ざっくり」も語源不明。セーターなどの目の粗い様子が転じたか
「松竹梅」は等級を表す語でなく、「歳寒の三友」=めでたいものという意味だった
「少年老いやすく学成りがたし」は朱熹の作品でなく、室町時代の僧によるもの。辞書の思い込み
「滾る」は水と関連し、火や炎とは結びつかない
「谷」の漢字に「や」という読みはない。江戸近辺の方言
「堪能」は「たんのう」とも「かんのう」とも読めるが、この2つはまったく別の言葉から生まれた
「ずくめ」=その物事ばかり、「づくし」=同種類 -
Posted by ブクログ
今まで3冊読んできた『悩ましい国語辞典』(シリーズ)の神永曉さんが監修者でした。
30代までの若者が多く使っている意味と、40代以上の人の多くが認識している意味、の2つに分けている。
確かに「あれっ、□◇▼〇って言ったのに、何かおかしいな」ということはある。
例えば、こんな言葉。
・煮詰まる
30代まで:行き詰って、これ以上新たな展開が望めない状態。
40代以上:十分に議論がなされて、結論が出る状態。
・潮時
30代まで:引き際。諦め時。
40代以上:ちょうどいい時。チャンス。
私の感覚だと線引きする年令は、30代までと40代以上でなく、40代までと50代以上かもっと上にシフ -
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コロナの流行で注目された言葉「収束」と「終息」、漢字を見るとなんとなく違いが分かる。
「収束したが終息はしていない」とは言えても「終息したが収束はしていない」とは言えない。
口頭で述べられるとどちらも「シュウソク」か「シューソク」でどちらか分からない。
国会での発言を速記者が記録したものを調べたら「収束」と「終息」がほぼ半々になっていたそうだ。
漢字がどちらかに関わらず、3年経ってもコロナは収束も終息もしていないですね。
「ちちんぷいぷい」は使わなくなった。
「チャンネルを回す」「テープを回す」はどれくらいの認知度?
「チンする」はいつまでもつか?「ゼロックスする」は使わなくなったしね。
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「悲喜交々」悲しみと喜びが入り混じることだが、あくまでも一人の人間の心境を表現する言葉。「天地無用」は上下を逆にしてはならないという意味、これは問答無用、立ち入り無用、開放無用と同じ使い方で、無用は行為を禁止するということ。愛嬌は雰囲気だし、愛想は行為。言葉の意味や用法が揺れ変化していくのにはそれ相応の理由がある。辞書編集者ならではの切り口で言葉の深層に迫る。文化庁が実施している「国語に関する世論調査」からの引用が多く「文化庁国語課の勘違いしやすい日本語」を読んだ後では、かなりの既視感もあったが、辞書編集者の視点で新たなスポットを照らしており、また違った興があった。あいうえお順の辞書形式もなか