茉莉のレビュー一覧

砂漠のロマンス

池戸裕子 / 茉莉

砂漠の国を舞台の中心に、国を越え身分を越え、時を越えて紡がれる、ロマンチックな王道ラブストーリーです。
物語が予定調和的に進むため驚きや意外性は控えめですが、その分安心して読むことができます。

砂漠の王国に住むイシュタルがヒーローで、高い身分を持っています。
いわゆる俺様キャラで、ヒロインに有無を言わせないほど強引に迫りますが、その実純粋な心でヒロインを一途に想っていることが伝わってきます。
実年齢以上に見える落ち着きの合間に無邪気な一面を見せることもあり、ヒロインより年下であることも手伝って、微笑ましく思えることもありました。

ヒロインは緑豊かな王国に住む貴族の令嬢、サラです。
自分を確立しているところと、優しく純粋な心を持っているところに好感が持てます。
純粋であるがゆえに生じる数々の悩みも、可愛らしく思えました。
問題を自己完結させてしまうところがあり、それが余計に事態を悪化させている節があるので、自分の気持ちを素直に伝えてと思わず応援したくなるキャラクターです。

イシュタルとサラの気持ちの純粋さ、砂漠の王国で輝く宝石、お伽話のような世界観、全てが合わさりキラキラとしたお話だと思いました。
強引な年下、俺様好きな方におすすめの作品です。

魔の森の乙女と美貌の子爵

春野リラ / 茉莉

魔物が住むと人々から恐れられる森にひとり暮らしているヒロイン・エリスが、森の中で倒れていたイケメン子爵イザークを助けたことから展開していくラブストーリーです。

父と祖母の言いつけから、人と関わって相手も自分も不幸にしてしまうことを避けるべく、誰も近づけることなく森の中でひっそりと暮らしていたエリス。
これ以上親密にならないように、愛しているの言葉さえ伝えられないエリスの葛藤は、読んでいるこちらも苦しくなります。
自分の中の自分と対話しながら思い悩むヒロインは健気で、切ない気持ちにさせられました。
子爵イザークは奇跡のように整った顔立ちであるうえに、爵位持ちというキラキラとした人です。
エリスへ向けられるまっすぐな愛情が熱く、年上なのにどこか少年を思わせるような言動も素敵。
エリスもイザークも思い込みで行動しがちで、それがお話を掻き回し、どきどきしながら読み進めました。

ヒロインがひっそりと魔の森に住むようになったことの秘密が、このお話の要です。
次から次へと新事実が明らかになるとともに、エリスとイザークの関係が変わっていくのが面白い。
最後まで、次の展開はどうなるのかとわくわくしながら読める作品です。

魔の森の乙女と美貌の子爵

春野リラ / 茉莉

お伽話みたいにきれいな雰囲気の物語。
森の中に一人で住むヒロインは、タイトルでは「乙女」、作中では「森の魔女」と言われるシーンもありますが、あまりの健気さと清らかさ、そして何より序盤のイザークとの二人きりの生活シーンで、私の中では妖精のような印象です。
「愛するものができても愛していると言ってはいけない、愛する人を不幸にしてしまうから」という父の教えを守って、イザークから愛を乞われても答えることができず、自分の名前すら偽っているエリス。
この戒めの正体は後々明かされるのですが…
イザークのちょっと強引な感じもよかったです。後半は、エリスの態度にイザーク自身も傷ついてしまっているので、ちょっと意地悪。でもその二人のすれ違いというか…想いが少しずつずれているところが切なくもどかしく、楽しいお話でした。

砂漠のロマンス

池戸裕子 / 茉莉

砂漠の国の王子様と父親の作った借金のある貴族令嬢のサラ。年下男っていう設定ですけど、イシュタルは10年前に一度会っただけのサラを思って、結婚するためにいろいろ準備をして、意外と純情で真面目です。

初恋の女性と再会して、浮き足立ってるイシュタルに、いくら覚えていないからと言って「下手」っていうのは、この手の話としてはちょっとひどいかな。

ただ妃が10人とかっていうのは、お国柄仕方がないとして、サラへの気持ちでお妃たちに手はつけずってして欲しかったかなぁって思いました。