笹山裕子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
一気に読んだ。この作品はフィクションで、とのことだが、本当はフィクションではない。証言と記録と記憶を再構成したもの。アウシュヴィッツでの出来事。
残酷な事実が、ストーリーの中でこれでもかというほど描かれる。あのときこんなふうに、あんなふうに“生きていた”人々が、次々と消えていく。どうなったかわからない人、目の前で“処分”される人。命を奪われるより酷い、魂を、尊厳を傷つけられる行為の数々。
そこで、息継ぎをするかのような愛を感じられるラリとギタのやりとり。ラリを取り巻く友人たちとのやりとり。
文庫本の巻末にあった、その後のラリたちの記述や写真を見て、これはフィクションではなかったと再認識する。
私たちは、収容所で起きたことを、知らなくてはいけない。そして、こんな悲しい物語が二度と繰り返されぬよう祈る。
追記
ゲイリー•ソコロフ(ラリとギタの息子)による結びの言葉の中にあった、ギタの言葉が印象に残ったので、引用する。
「何年間も、五分後には自分が死んでいるかもしれないと思いながらすごしたことがあれば、たいていのことは切り抜けられるようになるのよ。
生きて健康でさえいれば、すべてうまくいくものよ。」 -
Posted by ブクログ
2023年、ノーベル生理学・医学賞を受賞。しかし、その話はひとことも出てこない。それもそのはず、本書執筆時にはまだノーベル賞を手にしていないからだ。
1955年、ハンガリーの田舎町の肉屋に生まれる。中学で生物学に魅了され、ゼゲド大学生物学科に進学。見るもの聞くものすべてが新鮮、科学の世界は彼女のまえに開かれていた。しかし、研究の道に邁進するも、30歳の誕生日に生物学研究所を解雇。ここまでが前半。
後半の舞台はアメリカ。研究者として歩み続けるために、夫と娘を連れ、ポスドク研究員としてアメリカに渡る。ペンシルベニア大学には24年在職、しかしPIにはなれなかった。無数に申請書を書き続けたが、研究助成金もほとんど獲得できなかった。満を持して投稿したmRNAについての画期的論文は、Nature誌からリジェクト。Immunology誌に掲載されることになり、爆発的な反響を期待したが、電話はどこからもかかってこなかった。しかし、めげない。その生き方はどこまでもポジティブ、研究の進め方も正道をゆく。そうこうするうちに、mRNAの技術を用いる時が向こうからやってきた。それは途方もない大きさの波として押し寄せてきた。
座右の銘は、ハンガリー出身のハンス・セリエのことば。カタリンと同じく、セリエも北米に渡って研究を続けた。彼が教えるのはストレスを陽転させる秘訣。本書にはそれが何度も登場する。
5歳年下の陽気な夫ベーラとひとり娘のスーザン(北京五輪のボート競技金メダリスト)、このふたりが彼女の生き方に彩りを添えている。 -
Posted by ブクログ
自分なら人生を諦めてしまいそうな場面でも、生きること、愛することを諦めなかったストーリーに感動した。フィクションであるということから、まだまだ描ききれない心情や場面などもあるとは思うが、生活を詳細にイメージすることができた。恥ずかしいことに、これまでユダヤ人、アウシュビッツという名前しか知らず、何が起こっていたかに関心を持ったことがなかった。非人道的なことが行われていたと教科書で知った程度で、そこには温度がなく、キーワードとしてわたしの記憶に残っていただけだった。他の書籍もぜひ読んでみたいと思ったし、宗教というものについても知識をつけたいと思った。DE&Iや多様性という"キーワード"だけを追うのではなく、しっかりと実感したいと思う。
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Posted by ブクログ
生きているすべての人に読んでほしい。
現代に生きる私たちは、ナチス・ドイツが1933年〜1945年まで続き本作の主人公が収容されたアウシュヴィッツは1942年〜1945年までと、始まりから終わりまでを知っている。
本作の主人公は、いつこの日々が終わるのか、解放され自由になるかはたまた5分後には死ぬか、なにもかも分からないまま、アウシュヴィッツでの日々を克明に語る。
結果として、運が良かったとしか思えないような状況をいくつもかいくぐり生き抜いて、現代にこの記録を残している。
髪を剃られ、服を剥ぎ取られ、名前を奪われ数字で呼ばれ、生きるか死ぬか殺されるか、まるで“偶然“が生死を分けるかのような毎日。
生きていくこと、愛する人に会えること、家族と過ごすこと、お腹いっぱいご飯を食べること、本を読むこと、学ぶこと、自由に外を歩くこと、いま当たり前に私の世界に存在する全てが、当たり前ではなかった。
映像としては想像できたとしても映画や写真のような世界で、自分が体験するものとして想像するのはあまりにも難い状況が、過去に確かに起きていた。
これを風化させてはならない。
人間の歴史に二度とあんなことが起きてはならない。
もっと深く知りたいと思った。
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Posted by ブクログ
どの本でもそうかもしれなけれど、特に自伝は学ぶことが多く、著者の人生をたった数時間で振り返ることができ、その人の経験値を読書という形で自分の財産にすることができる。
今回の自伝ももれなく学ぶことが多すぎて、本の要所に付箋が散りばめられた。
自分も生命科学の基礎研究をしていたけれど、カタリンほどの信念や行動力がなければブレイクスルーを起こすのは至難であるだろうなとあらためて実感した。
パンデミック禍でワクチンにより救われた命は、ワクチン開発に至るまでに様々な発見をしてきた名もなき研究者たちに思いを馳せることはないかもしれないが、我々は彼らのおかげで様々な恩恵を享受できていることを忘れてはいけないと感じた。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ1日で、一気に読んでしまった。
収容されたユダヤ人が他の収容された人々にタトゥーを彫る。そんな中ある女の子にタトゥーを入れた際、一目惚れしてしまう。わかるのは彼女の収容番号だけ。
語弊を招く表現かもしれないが、こんなにひどい状況で、そんなドラマティックなことある?という始まり。
手が止まらなかった理由は、ナチスドイツ関連の本や映画はラストが悲しいものが多いが、この本は希望が見え隠れし、どうなるのか本当に結末がわからなかったから。
本の最後に写真が載っており、実話?!と驚いたものの実話をもとにしたフィクションとのこと。
それでも描写はかなりリアルだし、そもそも人類史上最悪の、決して繰り返してはいけない事実がベースということを改めて実感した。
ひどいことをしたドイツ軍、と思いきや(間違いではないが)収容されたユダヤ人と意外とコミュニケーション取ったり、人間味溢れる部分も垣間見られた。実際そうだったんだろうな。