素晴らしい本だと思います.「プログラミングのための」という修飾は謎ですが.
以下に素晴らしい点の列挙です.
1.著者は「数学的にはちゃんとしてない」と言っていますが,正当な測度論的な確率論のロジックが根底におかれており,その意味でかなり珍しい本だと思います.それでいて,初学者には難しいであろう確率
...続きを読む空間の概念を,これでもかというぐらいまで噛み砕いて説明してくれています.
実際の厳密な議論のためには,「面積=測度」「期待値=ルベーグ積分」の置き換えが必要ですが,それは単に本文の流れを数学的に肉付けしていくだけの作業です(それが煩雑なのですが笑).
通常の初等確率論の教科書から測度論的確率論の教科書に移る際のギャップは,初学者泣かせだと思いますが,その意味では,本書は本格的な測度的確率論に進む前の格好の1冊といえると思います.
2.測度論的な見方だけでなく,点推定論・検定論についても,理論的に高級な本で現れる考え方が完全に踏襲されており,それでいて平易に説明されています.
3.多次元正規分布に関する操作が,手順含めて,かなり丁寧に解説されている.ビショップの『パターン認識と機械学習』の2章の行列計算で挫折した人にはお誂え向きだし,それを読破した人にも有用な視点を与えてくれると思う.
4.応用先として,回帰分析・主成分分析・カルマンフィルタ・マルコフ連鎖・情報理論(情報源符号化定理,通信路符号化定理)といった,多岐にわたるトピックに言及されています.もちろん平易な説明付きです.
5.本文中における諸事項のつながりが随所で明示されていて,すごく読みやすい.
分からなかった人はp.xxxを参照,この概念はA節(p.xxx)で用いられるなど.
ーー以上
著者の情熱がこもった素晴らしい本だと思います.
一点言うとすれば,測度論的な見方をする(面積をもとに考える)とどんなメリットがあるのか,がより強調されていると,そういう考え方に馴染みがない読者にとっての良心となると思いました(激ムズな要求だと思いますが...)
なんにせよ,確率統計を学ぶ際の1.5冊目ぐらいの本として,最高だと思います.