桑原三郎のレビュー一覧
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ネタバレ読みたかった作家が何人もいた。長いお話だと容易に手が出せないけれど、本作は児童文学を集めた名作集ということもあり、とても読みやすかった。色々な作家への入り口を作ってもらえてうれしい。
作品のはじめに各作者の紹介文が入ってるのも個人的にはありがたい。このへんは岩波書店さまさま。
菊池寛、有島武郎、室生犀星、島崎藤村、宇野浩二、内田百閒、椋鳩十、こんなふうに並べて書いてみて、改めてこの一冊を読めたことの収穫が大きかったのをひしひしと感じる。
一作、とても好きだったものを挙げるとしたら、椋鳩十の「月の輪グマ」。作中の子グマがとても可愛らしく、また読み終わった後に通りすがる切なさが心地よい。 -
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児童文学とはいえ、格調高く深読みすればするほどはまっていく。当時の地域や時代なども伺えて民俗学的にもおもしろい。
芥川龍之介『蜘蛛の糸』、菊池寛『三人兄弟』、小島政二郎『笛』、有島武郎『一房の葡萄』、江口渙『木の葉の小判』、秋田雨雀『三人の百姓』、室生犀星『寂しき魚』、島崎藤村『幸福』、佐藤春夫『蝗の大旅行』、宇野浩二『でたらめ経』、豊島与志雄『手品師』、浜田広介『ある島のきつね』、宮沢賢治『水仙月の四日』『オツベルと象』、千葉省三『鷹の巣とり』、内田百閒『影法師』、坪田譲治『魔法』、水上滝太郎『大人の眼と子供の眼』、壷井栄『がきのめし』、椋鳩十『月の輪グマ』、新美南吉『牛をつないだ椿の木』 -
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若い頃に既読済みながら、資料として取り寄せたが、読み出すとまた違う読み方ができて非常に楽しめた。作者略歴、挿絵もありテキストとしても秀逸。
福沢諭吉『イソップ物語抄』、呉文聡『八ツ山羊』、『不思議の新衣装』(『女学雑誌』「子供のはなし」欄、執筆者は不明だが巌本善治の可能性大)、若松賤子『忘れ形見』、巌谷小波『こがね丸』『三角と四角』、幸田露伴『印度の古語』、石井研堂『少年魯敏遜』、押川春波『万国幽霊怪話抄』、国木田独歩『画の悲み』、竹久夢二『春坊』、小川未明『赤い船』『野薔薇』、吉屋信子『鈴蘭』(『花物語』)、鈴木三重吉『ぽっぽのお手紙』『デイモンとピシアス』、小泉八雲(内藤史朗訳)『ちんちん -
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大正・昭和期の日本の児童文学選集。「赤い鳥」に掲載された芥川竜之介「蜘蛛の糸」(1918)から新美南吉「牛をつないだ椿の木」(1943)までの21編を収める。「赤い鳥」には、お伽噺から脱し、鈴木三重吉の審美眼によって選ばれた数々の童話が掲載された。とても流行したようで、この選集にも8編が収録されている。とはいえ、宮沢賢治を選ばないのは今から見るとちょっと偏ってると思うし、トムやハックを野卑なものとして排斥するなんて、三重吉と私は絶対気が合わないな…。
芥川竜之介「蜘蛛の糸」(1918)「赤い鳥」掲載時の鈴木三重吉が手を入れたバージョンを収録。青空文庫が元の版なのかな、読み比べてみたが、改行や -
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明治、大正期の日本の児童文学選集。文語体に漢字も難しく、自分の子ども時代は絶対に読もうとしなかったと思うが、巌谷小波の「こがね丸」などは当時の子どもたちに熱心に読まれていたらしい。全体の印象として、明治期は書物を青少年の教育の近代化に使おうと、教訓的な話を積極的に取り入れた感があり、「赤い鳥」が出てくる頃は、自分の芸術の表現として「童話」という型を使ったのかなという印象を受ける。自分はすでに子どもではないので、大人の視点からの感想になってしまうので、児童がどう思ったかは児童たちに聞かないとわからないが、西洋の物語のローカライズなど工夫を凝らしており味わい深い。
福沢諭吉が紹介したイソップ物語は -
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巌谷小波、幸田露伴、押川春波、小川未明、鈴木三重吉、小泉八雲、他が執筆した、明治~大正時期頃の児童文学モノを集めたもの。
面白かったのは、巌谷小波『こがね丸』。馬琴調の伝奇仇討ち物なのですが、子供向けなので登場人物が全部動物になっており、話のテンポと物語の展開が、歌舞伎の舞台を見ているようで。
それと、教科書で読んだことがある小川未明の「野薔薇」。子供の頃は授業受けを意識して読んでしまうため、ハイハイ教訓モノね-、ぐらいの気持ちで読んでいましたが、この年齢になって読むと、この短さの中でこれだけのモノを描ききってるということに驚き、凄い作品だなあと改めて思いました。