旗手啓介のレビュー一覧
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1993年5月4日、国連カンボジア暫定統治機構(UNTAC)に派遣され、現地で「文民警察官」としてPKO(国連平和維持活動)に従事していた岡山県警の高田晴行警部補らの一行は、任地のカンボジア北西部で何者かに襲撃され、高田警部補は残念ながら亡くなられた。それから、23年。2016年8月にNHKが、NHKスペシャル「ある文民警察官の死~カンボジアPKO 23年目の告白~」、更に同年の11月にBS1スペシャル「PKO 23年目の告白 前編・そして75人は海を渡った/後編・そこは"戦場"だった」を放送した。この番組は大きな反響を呼ぶと同時に、多くの賞を受けた。本書は、その番組を書籍
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ネタバレNHKの取材班が、PKO隊員の死の真相を解き明かし、その死の意味を国民に問うノンフィクション。
やっぱりこういう本は読むのに覚悟が要ります。
けれど、当時の関係者たちに話を聞きながら、冷静に過去を掘り起こす文章は、とても読みやすいものでした。
だから余計に、意識的に読むことを中断して、自分なりにいろいろと考えました。
世界中から日本の国際貢献が批判を受けていたこと(金だけ出せばいいのか論)、国連の常任理事国入りを狙っていたことなどから、PKOの名のもとに自衛隊と文民警察官(丸腰の景観)とボランティアがカンボジアに送られた。
国民の関心のほとんどが自衛隊の海外派遣に向けられ、安全をアピールする -
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【297冊目】読んで良かった。国際社会において名誉ある地位を占めたいと願う日本国憲法を持つ我ら国民は、本書の内容を吟味すべき。
UNTACの機能不全と現場軽視の官僚文化、日本政府の非紛争地域であるとの建前維持のための現実無視など、本書から学ぶべき教訓はとてもとても多い。そして、2017年の南スーダンPKOにおける自衛隊日報問題にみられるように、その教訓は過去の話とはなっていない。
240ページからの数ページは、紛争地で活躍することを志す日本人や、それを他者に望んだり指示したりする人たち全員が必ず読むべき。「国際貢献」の美名の背後にある現実は本来筆舌に尽くしがたいはずで、この記載ですら現 -
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PKOで邦人に死人が出ていたこと自体知らなかった。カンボジアPKOだけでボランティア1名、文民警察官1名。
建設業者でなく各国軍隊の工兵部隊、自衛隊の施設科部隊を送っているあたり、派遣先が安全なわけがなかろうとは常々予想していた。
PKO法制や安保法制は、先進各国のやり方が現代社会の「多数派」とみなされているのだから、やるべきと思うならそりゃやれば良いんだけど、そもそも前提データ、知識が無いとか、あっても隠すとか、そんな状態で法整備をして最後は現場に責任丸投げ、というのは勘弁してやれやと思う。
そのあたり、文民警察官も似たような状態だったようだ。護身の品はたとえ防具であっても武器に該当す -
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とにかく、こんなにカンボジアの為に尽くしてくれた日本の警察の方がいたこと、知らなかったことがはずかしかった
そもそも、警察官がカンボジアに派遣されていたなんてニュースになっていたのだろうか
何ごとも初めに関わる人間は大変な思いをするが、これは、日本の官僚の能天気さによる苦労がほとんどだった
語ることすら許されなかった方々の証言が生々しく苦しかった
23年も胸に抱えてきたなんて、どんな日々だったのか
読むのが苦しかった
でも、日本人として知るべきことだと思った
現在も活動中のPKOは、本当に必要なのだろうか
意識もバラバラで、寄せ集めのチームが、本当に平和を促すことができるのだろうか
私なら -
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中田厚仁さんがカンボジアで襲撃されて亡くなったのは知っていた。でも、文民警察として派遣されていた男性がなくなったことは知らなかった。その無知を、いや無関心を恥じた。
この本を読んで憤りを感じるのは私だけではないと思う。「国益のため」「平和に貢献するため」と言いながら、自分は安全地帯から一歩も出ず、丸腰の警察官を派遣する。しかし、まともな情報収集も事前準備もせず、まともな防弾チョッキも支給しない。「ここは戦闘区域」という現地の声に耳を貸さず、「平和条約は守られている」と平和ボケした議員に官僚。人の命をなんと思っているのか。
国益、国際貢献、人、命、国ということについて考えさせられた一冊。 -
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1993年、日本が初めて国連のPKOに人員を派遣したカンボジアで文民警察官の高田氏が殉職されるという悲劇を覚えておられる方は少ないのではないでしょうか。
政府は自衛隊を初めて国外に派遣することになったこの機会に万が一戦闘に巻き込まれる様な事態を恐れていました。自衛隊が配置されたのは治安も良い地域に全員が1か所に派遣されるという恵まれた状況であったのに対し、文民警察官の方は政府の関心も自衛隊ほどではなく、事前の根回し不足もあって数人ずつの小グループで各地に分散し、タイ国境付近の治安の悪化した地域にも配置されました。彼らが派遣されたのはポル・ポト派が支配するまさに「戦場」だったのです。「支給された -
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NHKはたまに残しておかなければならない隠された真実を、ドキュメンタリーとして放送することがある。
本書に書かれているのは、日本が初めてPKOに人を出したカンボジア選挙のこと。
そして、その活動中に命を落とした文民警察官の事。
政府、警察組織、そしてそれらに阿るマスコミ達は、カンボジアPKOで何があったかを覆い隠し真実を語らない。
それは、本書の元となったドキュメンタリーが制作された時点でも変わらない。だから本書には現役警察官の証言は語られていない。
本書に書かれているのは、組織の一員として、現場でないがあったかを隠し続けてきた元警察官、他国の軍人、そして当のカンボジア武装勢力たちの言葉で綴 -
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初めて日本が自衛隊を海外派兵したカンボジアPKO。あのとき、文民警察官75名もまた派遣されて、そして一名が殺された。
派遣のための条件である「停戦合意」が事実上破綻していたのは明白にもかかわらず、政府は都合のいい解釈を続け、国民世論を欺き、したがって撤収することをせず、一名を見殺しにした。現場の隊員からは、実態は内戦状態にあること、具体的な命の危機にさらされていること、そして実際に多くの「事件」(ほんとうは「戦闘」)が起こっていることが報告されているにもかかわらず、「面子」にこだわり、何もしなかった。ほんとうに何もしなかった。そしてそれは、UNTACも同様だった。
生きて帰ってきた隊員た