橋本勝雄のレビュー一覧
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題名からしての推測を大きく離れた読後感。
スタジオを開いたコルソの最初の客はパロディ夫人(ここでなんか笑えるところ)汗顔の時間となった最初のセラピーはコルソの心に澱を残した・・で後日上がった死体。夫に嫌疑~その後は操作や背後事情の語りが無く、コルソの商売ぶり?が淡々と続く。
乾いた語りながら コルソの教養の凄さに圧倒されるばかり。
まるで手相観のお婆さんの様に「読んだ本の履歴を聞くだけ」ばっちりの相性本を推奨できるという天才肌。
とはいうものの、ド・パルデュー似を数か所で呟く彼・・装丁からすると細身イケメンのイタリア人と結構のずれが有る。
読書セラピストという民間資格が有る無は別として、この -
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元国語教師のヴィンチェは、恋人と別れ、職もなく、ローマのワンルームで読書セラピーを開業する。
癖の強い女性客を相手に内心冷や汗をかきながら対応する日々。
そんな中、階下に住む、老婦人が失踪した。
警察や隣人たちは同居の夫が殺したのではと疑うが。
ヴィンチェは行きつけの本屋の友人から、失踪したパロディ夫人が残した小説のリストを手に入れ、彼女の失踪を考え始める。
心理的症状を緩和する本を薦める読書セラピストが、失踪した老婦人の謎にせまるというので、もっと淡々と冷静に展開していくかと思えば、生い立ちから彼女との確執とか悶々と長々と語られて、何度も挫けそうになった。
欧米文学もあまり読んでないから、 -
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編訳者によれば、
リアリズムが重んじられたために発展が遅れたものの、
19世紀半ば、E.A.ポオ作品の輸入と、
独自の文学運動の波によって花開いたという
イタリア幻想小説から選りすぐられた9つの短編が収録されている。
主なテーマは「死者の帰還」「強迫観念」「奇譚」といったところ。
もっと“変な話”を期待していたが(笑)
意外にアッサリした理知的なトーンで、やや拍子抜け。
以下、ネタバレしない範囲で全編についてザッと。
■イジーノ・ウーゴ・タルケッティ「木苺のなかの魂」
Uno spirito in un lampone,1869
狩猟に出た青年男爵Bが喉の渇きを覚え、
木苺を摘んで食 -
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20世紀イタリアの小説家ボンテンペッリ(1878-1960)による児童文学作品、1922年。ボンテンペッリは、未来派のマリネッティ、形而上絵画のジョルジョ・デ・キリコ、メタ演劇のピランデッロなど、20世紀イタリアの前衛運動の影響の中で創作し、のちに「魔術的リアリズム」と称される幻想的な作品を多く発表することになる。
鏡というモチーフには底知れぬところがある。それは鏡によって生起する二種の区別のイメージから来るように思われる。
■第一の区別、形而上学的区別或いは超越的・存在的区別
第一に、個体とその像とに重ねられる階層的区別・対比・隔絶のイメージである。例えば、現実/幻想、現/夢、実/虚、 -
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よく考えずに手を出したらとんでないお話だった。
主人公はユダヤ人嫌いの祖父に育てられたシモニーニ。祖父の死後、公証人のもとで文書偽造に関わった彼はやがてその腕を買われ、各国の秘密情報部と接点を持つようになり、守備範囲を政治的な文書へと広げていく──というストーリー。主人公以外の人物はほぼ全員が実在。さまざまな人種、思想が入り乱れての陰謀、策略の上塗り大会。
構成も凝っており、主人公とある神父の書簡のやり取りから始まる。主人公はこの神父と自分が同一人物ではないかと疑っており、そんな主人公の曖昧な記憶を埋めるかのように「書き手」が物語を補足する。書簡の中には身に覚えのない死体が登場し、時系列も