本書は、2018年7月に総務省の自治体戦略2040構想研究会報告書の方向性に対して、批判的なスタンスである。
本書の中で、特に注目するのが、「6章 自治のゆくえ」のうち「計画による統制」である。国が自治体に策定を求める計画が増加しており、法令上は「任意(できる規定)」や「努力義務」規定であっても、地
...続きを読む方創生の地方版総合戦略のように、事実上全自治体での策定が求められているものがあることを、国と自治体は「対等・協力」の関係とした分権改革と遠い世界になってしまったと表現し、厳しく非難している。単に仕事を増やすだけでなく、計画策定を通して、国から自治体に責任が転化されることを問題視しており、著者の指摘は非常に納得するものである。
また、また、現在の地方自治制度の問題点として、多様な地域社会を反映する多様な自治体に対して、全国一律、画一的な「標準化・共通化」を押し付けていることを挙げている。そもそも、国レベルで、標準化・共通化が必要な業務は自治体そのものの業務とは言えないとも指摘している。
この点で、総務省の報告書が、自治体行政の標準化・共通化、行政のスタンダード化を志向していることと基本的な考え方を異にしている。
個人的には、地方分権改革を経てもなお、現行の国の機関、自治制度上、地方自治体は国の政策のアウトプットを担う側面は大きく、その点総務省の報告書の言うように標準化や共通化は必要でないかと思う。また、報告書の趣旨としても、すべての業務を標準化、共通化できる業務と捉えておらず、できるものについて進めることで企画や住民サービスに人材を充てることを目的としているのではないか。
著者の言うように標準化できるものはむしろ国がやるべきという主張は正しいように思われるが、国の機関で担うには新たな地方機関の新設や人の関係上難しいだろう。