今井照のレビュー一覧
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未曾有の複合災害を通じて、自治体の存在意義に光を当てた本。筆者は原発事故の経験から、いざと言う時に住民の命を救うのは最前線にある自治体であると強調し、自治体再編の議論に一石を投じる。
インタビューでは自治体副首長の葛藤が生々しく描かれており、公人であり私人である自治体副首長の役割葛藤と、同じ被災地域でも自治体毎に異なる利害関係が存在する実情を捉えている。
特に原発立地自治体の大熊町と隣接自治体の浪江町のインタビューが続けて取り上げられることで、お互いがお互いをどのように捉えていたかが読み取れる点は史料として重宝される。
当面は難しいだろうが、もう数十年を経たら、当時の国、県、東電の関係者 -
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2018年初版の本。2018年当時に読んでから、2024年に改めて読み直しましたが、本書の内容は色褪せることなく、むしろより切実に感じられました。
国が出すドキュメントなどをそのまま鵜呑みにするのでなく、(本書のように)批判的な意見も読むことで、より自治体への理解を深めることができると思います。特に(自治体を顧客に持つITベンダーの社員である)自分に響いたのは次の内容でした。
①少子高齢化により労働力に制約が生じるから「業務のあり方」を変革するというのはおかしい。公的部門の役割は、市場原理の社会から疎外されたりする社会的弱者を支えるところにある。そのような「本来担うべき機能」を精査して、そ -
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ネタバレ地方自治よりも国政だと思っていたため、市議会や県議会に全く興味が持てていなかったけれど、この本を読んで地方自治の重要性を知った。
行政はもともと
小単位である市町が行い、
それでできないことを都道府県が担い
それでもできないことを国が行う
という概念だそう。
今は国がトップダウン式に地方のお金の使い方に影響を与えているが、地方自治体こそ地方に住んでいる住民の声を一番反映しやすく、その土地土地にあった最適な仕組みをつくることができると指摘されていた。
自分たちの住む街を快適にするためにもまずは地元の行政に興味を持って、国会議員だけでなく地方議会の選挙にも積極的に参加していこうと思った。 -
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ネタバレ・自治体の役割と合意形成について
我々は社会的な動物であって、組織的集団に属して生活していく以上、意思の調整が必要になる。とりわけ、個人の資力では対応できないときに自治体が必要となるのであるが、それは、個人の負担と受益が一致しないこともあるから自治体が必要であるという帰結にもなる(すなわち、自分の負担と受益が一致するのであれば、役場はいらず特定の事業を遂行する民間でよいが、その地方全体のことを総合的に判断して最適に財源を振り分ける機関が必要なのである)。そして、健全な民主主義の下で合意形成を行うことは、誰もが不満を抱える状態のことである。したがって、選択された結果に対して自分の意見は違うが仕 -
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本書は、2018年7月に総務省の自治体戦略2040構想研究会報告書の方向性に対して、批判的なスタンスである。
本書の中で、特に注目するのが、「6章 自治のゆくえ」のうち「計画による統制」である。国が自治体に策定を求める計画が増加しており、法令上は「任意(できる規定)」や「努力義務」規定であっても、地方創生の地方版総合戦略のように、事実上全自治体での策定が求められているものがあることを、国と自治体は「対等・協力」の関係とした分権改革と遠い世界になってしまったと表現し、厳しく非難している。単に仕事を増やすだけでなく、計画策定を通して、国から自治体に責任が転化されることを問題視しており、著者の指摘は -
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拾い読み。
最終講の第6講縮小社会の中の自治体、での、日本全体の人口減少と地方の人口減少と東京一極集中は関係がなく、かつ、東京への転入者も減っている、という。
東京一極集中が問題なのは経済、政治、文化が集中して東京に人が固定化すること。地方のことを知らないまま東京目線の政策が取られる可能性があるから、なるほど。
それと人口減少は違う問題。
そもそもの前提が間違っているから「地方創生」などという間違った政策がとられる、と。これが本当は誰のための政策なのか?意味深なことが書かれている。
たしかに地方に省庁を移すという発想は政治の集中の弊害を無くそうとするものだろうけど、それで日本全体の人口が増え