タイトルのやみ窓はまーまーかな。
①ヤミ織
「天女様は口が耳まで裂けた山姥になって村を祟ったんですって。それ以来、織り物を上手にできる人が少なくなって、どんどん廃れてしまったと伝えられているわ」
ぽすぽす……
今夜も軽く網戸を打つ音が室内に伝わり、窓辺に一人の男がやって来た。 窓を開くと外の空気がひやりと冷たい。湿った土と鼻腔を圧するような樹木の匂いもなだれ込む。 「かみさん、かみさん、拝ませてたんせ」
ぽとぽと…… 今夜も網戸を打つ弱い音が響く。また闇の者がやって来た。
濃紺のカーテンの向こうから、吠えるような風音と女の忍び泣きが、いつまでも、いつまでも、聞こえて。
②ヤミ児
なぜ昼の仕事に固執するのかと自問する。答えは明白だ。闇の窓がいつ閉じてしまうかがわからないから。無職という肩書きになると何かと不便が生じるから。
「あの……赤ちゃんを食べられてしまった親は、当然、天女様を恨みますよね。織り物の神様になったからって素直に信仰できたんでしょうか?」
間引き。貧しさのため育てられない子は生まれてすぐに殺したと、そんな習わしを聞いたことがある
女達もその場に引き据えられ、集められた村人の眼前で荒くれ者達に繰り返し、繰り返し犯された。 「織り物の達者な嬶も、娘共や小っこい息子も嬲られた」男はまるで噂話でもするようにぼそぼそとその有様を語った。「裸に剝かれて手を杭に縛られてな……」 輪姦が果てなく繰り返され、はじめは怯え喚いていた女達もすぐに静かになった。 陵辱が続くうち、泣きも、痛がりもしなくなり、ただ魂の抜けた人形のように野に横たわるだけになっていたと言う。 「使い物にならなくなった女共を、生きたまま烏が突いて……」
③ヤミ花
枯れかけた木の葉がかさついた音を立て、男の瞳が熱を帯び、低い詠唱がいつまでも、いつまでも呪文のように流れ続けていた。
祠の灯り
女が座る祠の中は巨大な満月よりも明るく、壁も天井も綿の実のように白かった。小さな祠のはずなのに奥行きがある。家の土間よりも広く、中は用途も知れない不可思議な調度に満ちていた。
ほーえぇ…… 遠い獣追いの声が、一層途切れながら、里を囲む山々に響き続けていた。
びょう、びょう…… 秋の風が屋根の上で猛る。 もう冬が近い。雪がぶ厚く積もる前に自分はここから消されるのだろう。 遠い昔の沼辺の祠。温めく風にさわさわと揺れていた柳の葉。 ぬめるように静まり返っていた水面。 唇に挟んだ主の指の柔らかさと、祠の灯の温もりが蘇る。夢とも現ともつかなくなったそれらを思い出しながら、平太は浅い眠りに落ちて行ったのだった。