トム・フランクリンのレビュー一覧
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少年二人の友情と、それが壊れてからの長い年月。25年後に再びめぐり合った二人の運命が、簡潔に接続詞を省いて積み重なっていく文章で書き表されている。読みやすくひざびさに読後感のいいミステリだった。
底辺にある黒人と白人という人種問題も重くなく理解できるもので、効果的だった。
ホラー小説を愛するラリー・オットは41歳になった今、人里はなれた家で一人で暮らしている。父親から受け継いだ自動車修理工場を持っているが誰も来ない。その理由は過去の事件にあった。
ゾンビの仮面をかぶった男が彼の家に侵入して至近距離から胸を撃たれ、ラリーは倒れた。そこから物語の幕が上がる。
黒人のサイラス・ジョーンズは母親 -
Posted by ブクログ
…小説で泣いたの久しぶりです。
だいたい、帯や裏表紙に書いてある「感動の~」とか
あんまり信用しない上に、
単なる売り文句だと思っているのですが、
いやー…良かった。これは良かった。
解説にもありますが、
余韻を楽しむ作品と云っていい程。
冒頭から憂鬱な気持ちに蹴落とされ、
そのほの暗いローテンションのまま淡々と進んでいきます。
ので、挫折しがちな文体かも知れませんが、
其処を超えて此のラストは味わっていただきたく。
こないだまで読んでいた東江さんの邦訳に比べたら、
あんまり技巧的さを感じない
訳文なのかもしれませんが、
その堅さもかえって良かった気がします。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ風変わりなタイトルは、ミシシッピー(Mississippi)の綴りを覚える時に、アメリカの子供が歌う歌詞の一部だということ。
アメリカ南部を舞台に殺人容疑をかけられている白人と、野球の夢を諦め地元に帰ってきた黒人下っ端警察官の、元同級生がおりなす物語
最後のあっと驚く仕掛けもあり、ミステリーとしても評価できるが、どちらかというと人間ドラマとしての読み方をしてしまう。二人の主人公と周囲の人間たちの悲哀と少しばかりの癒しが、ジワジワ心にしみてくる。読み終わった後の余韻がたまらなくいい。
友情、人間の信頼関係って簡単に崩れるけど、時間をかけてじっくり癒せるものでもあるんだなぁ。
主人公の一人ラリ -
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1927年にミシシッピ川流域でアメリカ史上最大の洪水が起こったことはとても有名な史実であるにも関わらず、米国民の大方からは忘れられているという。その時代、その災害のさなかで密造酒作りを稼業に選んだ夫を持ったディキシー・クレイは、幼い子を洪水で失い、今では自ら密造酒作りの日々を送っている。
そこに一家惨殺の生存者である赤ん坊をひょんなことから連れ歩いていた密造酒取締官インガソルが現れ、ディキシー・クレイのもとに神の子を授ける。それが皮肉な運命の出逢い。水は方々で土手を決壊させ、多くの街を水底に呑み込んでゆく。この世の終わりとも言うべき1927年の世界の中で葛藤する男と女の出逢いを描く、南部 -
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『そのあとは、野原の向こうの林から昼が流れ果て、夜が居つくまで、フロントポーチにつくねんと座っている。どの日もちがう、どの日もおなじ』
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テキサスの大都会の一番の通りといえども、最も賑わうショッピングエリアから西へ15分も行けば、「町はずれ」の雰囲気が漂い始めるほどに建物と建物の間隔は広がり、駐車場に車が疎らなショッピングモールも出現し始める。そんなエリアに建つホテルにて「ねじれた文字、ねじれた路」を読む。
もちろん、ミシシッピ川はテキサスを横切ってはいない。隣のルイジアナからメキシコ湾に注ぐ泥の河。しかし、ここもディープサウスと並ぶ保守の州。白人のみが不動産を購入できる元大統領の住む一角 -
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アメリカの作家トム・フランクリンの長篇ミステリ小説『ねじれた文字、ねじれた路(原題:Crooked Letter, Crooked Letter)』を読みました。
ここのところミステリ小説はアメリカの作家の作品が続いています。
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デニス・ルヘイン、ジョージ・ペレケーノス、デイヴィッド・ロブレスキー絶賛。
アメリカ探偵作家クラブ賞受賞作家が贈る感動のミステリ
ホラー小説を愛する内気なラリーと、野球好きで大人びたサイラス。
1970年代末の米南部でふたりの少年が育んだ友情は、あるきっかけで無残に崩れ去る。
それから25年後。
自動車整備士となったラ -
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「自分は通り過ぎていく人間だと思っていた。
上を通り、下を通り、通り過ぎる。」
孤児で第一次大戦で兵役を経て、密造酒取締官を業としている主人公インガソルは、自分の人生をそう考えていた……一人の赤ちゃんを拾い、一人の女性と出会うまでは。
1926年から27年夏までに幾度も発生したミシシッピ川流域の記録的な洪水。
いつ終わるともしれない長い雨によって、繰り返しミシシッピ川とその支流が氾濫し、人人の生活を壊していった。
特に、農業労働力であるアフリカ系アメリカ人の被害は甚大で、直接被害がなくても農場が駄目になり職を失うことにもなった。
物語は1927年4月、アメリカは有名な「禁酒法」の時代、弱弱 -
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しかしアメリカ人はこういうのが好きだなぁ~。
デニス・ルヘイン、ジョン・ハート……
閉鎖的な田舎町、貧困、人種差別、レイプ、銃、酒、麻薬、家庭内暴力……。
ミシシッピの田舎で友人だった二人
白人でホラー好きで人付き合いの苦手な子と、黒人で母と二人シカゴから流れてきた野球好きの子。仲が良かったはずの二人がいつの間にか離れていく。
二人の距離が広がった少女の失踪から25年、再び事件が起こり二人は……。
25年前と現在が二人それぞれの視点で描かれ、最初の100ページは苦労した。
ミステリーではなく文芸小説だと思って、唐突に切り替わる時間と視点に慣れ始めると、独特の雰囲気の中、ドーンと沈み込み浸る -
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Posted by ブクログ
「ラザフォード家の娘の行方がわからなくなってから八日が過ぎて、ラリー・オットが家に帰ると、モンスターがなかで待ち構えていた」
いかにもミステリらしい謎めいた書き出しに興味は募るが、正直なところ犯人はすぐわかってしまう。なにしろ<おもな登場人物>に名前が出ているのが11人。ミステリのお約束として、犯人は必ずこの中にいるはず。そのうち二人の被害者は除外して、残りは九人。その中の三人が捜査関係者で一人は視点人物のサイラス。警察官が犯人というのもあるが、ここは南部のスモールタウン。みな顔見知りだ。仕事以外につきあいのない都会とは訳がちがう。
もう一人、ラリーという視点人物がいる。登場するなり何者か -
Posted by ブクログ
ネタバレミシシッピ州の田舎町で40代の自動車修理工が銃で撃たれる事件が起きた。被害者のラリーは瀕死の重傷。しかし、ラリーはちょっと特殊な人物だった。というのも彼がまだティーンエージャーだった25年前。同級生のシンディが行方不明になり、ラリーはその事情を知っている重要参考人だったのだ。
そして、つい最近も女子大学生が行方不明になり、ラリーは再び容疑者とされていたのだ。
その街で治安官をしているサイラスはラリーと幼馴染だった。一度街を出て、治安官として戻ってきた彼は、疎遠になっていた筈のラリーの身辺を調べ始めるうちに、少年時代のラリーとの記憶が徐々に蘇り始める。そこには、当時は気づかなかったサイラスとラリ