天涯孤独の少年が、甘いお菓子への憧憬を心の支えに戦争に突入して行く苦しい時代を生きていく。
作者の実体験を基にしているとのことで、主人公の少年の心情が丁寧に描かれている。
課題図書にもなっているということで、児童文学色が濃く読み易い。
時代と言うこともあるのだけれど、これでもかと言うほど襲い掛かる
...続きを読む不幸や苦しみの中に、希望を見出し、人間としての尊厳に悩み迷いながら生きていく少年に逞しさと感傷を感じた。
少年の放浪の人生にもいくつかの出会いがあり、少年を明るい方向へ導いてくれているのだけれど、個人的には遠山刑事との交流が一番好きだ。
この人の心の広さには感服する。
感化院を出て仕事に就いた後初めての休日に少年が刑事を尋ねたシーンには、知らずに涙が零れた。
大人になってからでも十分心に響いてきたけれど、できれば子供のうちに読んでおきたかったという気がする。