奥山俊宏のレビュー一覧
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経済の知識もなく、バブル経済事件と言われても、何のことか具体的に思い起こされることもない経済オンチである。しかし、この本を読んで、複雑で難解な事件の一端を知ることとなり、時代の大きなうねりの中で人生を狂わされ、大きな代償を払うことになった人々の人間ドラマに大きく感情を揺さぶられた。バブル絶頂期に放漫経営で銀行に多くの損失を積み重ねた経営陣は、巨大な利益を手に逃げおおせ、たまたま悪い時に、いるべきでない場所にいたと言うだけで、多大な犠牲を強いられる理不尽に、怒りが収まらない。
ひとつ新鮮に感じたのは、大蔵省や政権の腐敗と失政に国民が怒り、為政者の決断に変更を迫っていたということだ。不正を怒り -
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資料集、事例集としても教材としても秀逸。これ一冊で内部告発の歴史や実例、公益通報者保護法の成立や改正までが詳しく理解できる。今の世の中の「当たり前」に至るまでには、厳しい戦いがあった。告発される側の方が常に強い立場だ。だからこそ、揉み消したり、報復したりと、やりたい放題、弱者を虐げた。「世の正義」対「組織の論理」。
ベトナム戦争での機密文書をダニエル・エルズバーグ博士がニューヨーク・タイムズに提示した事例。ニクソン大統領は極秘文書の漏洩事件として差し止めを求めたが最高裁判所は応じず。有名なペンタゴン文書だ。その後、博士は機密文書の窃盗罪で起訴されるが、ホワイトハウスの工作員による盗聴などを理 -
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僕は記者会見の映像を見ていないので詳しいことはなんとも言えないんですけれど、一つ言えるのはあの場で言ったことを家や仕事や故郷を失った福島県の人の目の前で同じことを繰り返せますか?ということです。
この本が朝日新聞の記者が東京電力のすべての会見現場に立会い、東電側の社員と自分を含め貴社との一ヶ月のやり取りをつぶさに記録したものでございます。何の本からは忘れましたが
「東電の人間は官僚以上に官僚的だ」
という言葉が、この本を読んでなるほどなと納得するにいたりました。
僕は朝日新聞を読まないので、いま、震災から一ヶ月間の縮刷版を読んで事件および震災の足取りをたどっていますけれど、震災および原発事 -
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経済記者による、バブルを象徴する事件の当事者たちへのヒアリングをまとめた本。
事件後に当事者に取材を当てているだけでなく、事件時・あるいは事件前から接触をしているケースもあり、他の経済事件本とは臨場感が違う。
一番面白いのは終章で、定期的に昼食会を開くほど仲睦まじかった大蔵省と特捜部のキャリア組が次第に険悪になっていく様が淡々と描かれるところ。
その昼食会にずっと参加していた著者でしか書けない。
この章だけ具体的な単独の事件を追った内容ではないので浮いた感じになっているが、この部分だけでもこの本を読む価値がある。
著者らにとってはバブル崩壊は人生をかけたテーマだという。
何らの解答もまだ得 -
Posted by ブクログ
本書は、朝日新聞報道局に所属する記者が東京電力の原発事故の取材をリアルタイムでネットで配信した内容を中心に加筆したものであるが、その2011年3月11日から4月13日の記録には驚愕するものである。その迫真迫る危機の様相と迫力ある内容は、当時の新聞報道を大きくしのぐすごいものだ。
福島原発における危機が、まるでタワーリングインフェルノのようなパニック映画を大きく上回る想像を絶した危機であったことがよくわかる。そして、この危機が決して一過性のものではなく、周辺住民の避難、放射性物質の除染、廃炉などまだまだ続くことを考えると、危機はまだ終わっていないことを痛感させるものである。
本書を読んで感 -
Posted by ブクログ
自行が発行した債券(金融債)を顧客に買わせ、それを担保とした融資を「ノーリスク」と表現し資金使途も確認せず過剰に貸し出す。破綻の危機にある融資先に自行職員を送り込み、自行に有利な偏頗弁済をさせる。大蔵省(当時)担当局長の意を忖度するあまり、海外当局への事故報告を怠ることのリスクを見失う。不良債権の早期処理を標榜しながら、個別の銀行の問題では資産査定のエンピツを舐める弥縫策に終始する…
ひどい話だと思うが、これらがバブル期特有の奇特な症状であるとも言い難いのが虚しいところ。おそらく今後金融システムに異常が起こるたび、似たようなことは起こるだろうし、今現在も程度の差はあれ密かに行われているはず。