経済記者による、バブルを象徴する事件の当事者たちへのヒアリングをまとめた本。
事件後に当事者に取材を当てているだけでなく、事件時・あるいは事件前から接触をしているケースもあり、他の経済事件本とは臨場感が違う。
一番面白いのは終章で、定期的に昼食会を開くほど仲睦まじかった大蔵省と特捜部のキャリア組が
...続きを読む次第に険悪になっていく様が淡々と描かれるところ。
その昼食会にずっと参加していた著者でしか書けない。
この章だけ具体的な単独の事件を追った内容ではないので浮いた感じになっているが、この部分だけでもこの本を読む価値がある。
著者らにとってはバブル崩壊は人生をかけたテーマだという。
何らの解答もまだ得られていないのでは、と。
その事自体にケチをつけるつもりは毛頭ない。
個人としてはそういう人生もあろう。
問題は、日本経済がその後の30年、迷走を続けていることだろう。
その後、アメリカではドットコムバブルもサブプライムバブルも弾けたが、さっさと経済は回復し、平均株価はゼロが一つ違うまでに伸展し。
また、その間バブルだバブルだと言われ続けながら、隣の大陸の経済は膨張を続け、アメリカに覇権を挑むまでになって。
一方で未だに日本はそのときのことにこだわり続け、デフレに苦しみ、人口は減り続け、技術は奪われ、ようやく株価はピーク時の半分くらいまできたところか。
どこかで間違えたからこの結果があるのだろうし、それを知りたいがゆえの著者らのテーマ設定だが、本書でもどこまでいっても決定的な悪人は出てこない。
巨額な賄賂が動いて私腹を肥やしたヤツがいて、とかならわかりやすいがそんなこともない。
当事者に通じた著者らが内側を切り取って現在の視点から見直してみてもなお、皆、それぞれに真面目に仕事をした結果がこれなんです、としか導き出せない。
これはこれで頭を抱える。
強いて言うならば、日債銀の処理や大和銀行の処理などに顕著に見られるが、特捜にせよ監督官庁にせよ、国益よりも正義感が勝る判断をしがちだったのかな、と。
ナイーブさに付け込まれての経済敗戦みたいな総括で自分でも癪だし、それじゃ勝手にブチ切れて国際連盟を脱退してきてからの70年前の敗戦と変わらないじゃないか、という気もするが、案外そういうことかもしれないな、とも思ったり。
国益というと右翼じみた解釈をされるが、そういうところから変えていかないと変わらないんじゃないか、と思うにいたり、
だとしたら朝日の記者だという著者には解けないテーマじゃん、というオチでした。
いや、すべての朝日記者がアサヒると考えてはいけませんが・・・。