【読んだ動機とか】
作者の品田遊(ダヴィンチ恐山)さんのコンテンツが面白くて好きだったので読んでみたけれど、面白いか面白くないかでいうと個人的には面白くはなかった。でも、読んでよかったとは思うし、興味深い作品ではあるので、後から読み返してみたい作品ではある。
【あらすじこんな感じ】
突如世界に魔王が誕生する。魔王は召使から、王の中の王である貴方様はその力で人間を滅ぼすことが使命であると伝えられる。しかし魔王は、王である自分は使命の奴隷ではないと憤り、人類を滅ぼすか滅ぼさないか、人間達からランダムに選出した者達に話し合いをさせて決めようと言う。人間達の結論に納得することができれば、その通りにしようというのだ。選ばれたのは10人の代表者(悲観主義のブルー、楽観主義のイエロー、共同体主義のレッド、懐疑主義のパープル、自由至上主義のオレンジ、??主義のグレー、相対主義のシルバー、利己主義のゴールド、経典原理主義のホワイト、反出生主義のブラック)。人類の命運はどうなるのか。人類滅亡会議がはじまる。
【感想】
地の文がほとんどなく会話形式で進むので、読みやすいといえば読みやすいが、同じような対話がだらだらと続くので、意外と読み切るまでには体力が必要になる。
物語終盤(というか、会議の終盤)まで、反出生主義のブラックが他の追随を許さないといった感じで「出生そのものによってその生命が後に不幸を感じることが確定する。人生には楽しいこともあるからいいじゃないという話ではない。他者によって強制的にこの世界に産み落とされ、人生をスタートさせられるのは悪。人類が子を産めないようにするべき。出生は悪。」という論を推し進めるので、人類滅ぼすなチーム(私が勝手に命名しました)のイエローやレッドがまったく歯が立たないという状況が続き、正直、??主義のシルバーが台頭してくるまではページを捲ることに飽き飽きしてしまった。
これ、産後間もない我が子ラブ♡な女性キャラとか、そうじゃなくても子どもを産み育てた経験があるキャラがひとりでも会議に加わってたら、人類滅ぼすなチームのまた違った言い分も聞けたのかなぁと思う。とにかく、滅ぼすなチームの言い分が弱すぎたのが少し残念だった。あと基本ずっと同じ奴しか喋ってないじゃん。全然会議参加してないサボってる奴いるじゃん。駄目じゃん。
また、この本を手に取る人は、偏見だが反出生派の人間が多いのではないかと思うので、多くの読者がずーっとブラックの言い分にウンウン、と頷くことしかできなかったのではないかと思う。
あとがきには、作者の品田遊さんがこの本を執筆した経緯が記されている。「地球は50億年後、膨張した太陽に飲み込まれ、消える」と彼が子どもの頃読んだ科学雑誌に書かれており、執筆にあたり「いつか滅びることがわかっているのに、なんで人類は繁殖し続けているんだろう」という幼心に抱いた疑問と一種の恐怖が常に念頭にあったという。
作者自身が、本書を「反出生主義について考えるための補助線」、「どちらの主張が正しいのかではなく、異なる種類の正しさがそれぞれどんな水準で成立しているのか考えることをおすすめする」と表している通り、もしも会議の参加者だったならどの立ち位置にいるのかを考えながら読み進めることで、出生についての自分の意見をブラッシュアップすることができ、そのようなツールとしては非常に有用であると感じる。
てか感想めっちゃ長くなったウケる〜
【人におすすめしたい?】
前述の通り「面白い」ではなく興味深い作品なので、娯楽としての読書にはおすすめしない。
ただし、目をパキらせながら「人類は滅ぶべきだ…人類は滅ぶべきだ…」とかブツブツ言ってる友人がもしいたら、即刻この本を貸しつけて温かいお茶とか淹れてあげたいと思う。