渡邉泉のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
「会計学って学問なの?手段・ツールじゃないの?」という評者の固定観念を,根底から打ち破ってくれた本。本書の言葉を借用すると,「日々の取引を正確に記録し,利益を計算する行為」は簿記であり,会計は,「その結果を受けて,企業成果を外部の利害関係者である株主や債権者に報告するシステム」(126頁)である。すなわち,会計は,株式会社の登場によって,損益や資産状況を記した簿記の情報が株主に正確に開示されることを以て,初めて意味を成す。評者の固定観念には,簿記と会計の相違を理解していなかった点に大きな問題が存在していたわけである。
本書の目的は,書名どおり「会計学の誕生」を辿ることにあるのだが,いきなり -
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会計学の成り立ちについて。
ある程度会計を知らないとつまらないと思う。
前半は複式簿記の誕生からキャッシュフロー計算書に至るまでの歴史が詳しく説明される。
終章は途端に著者の主張が強くなり、近年の未来志向の公正価値重視の財務会計への批判が繰り返し述べられる。
信頼性から有用性へ財務諸表に求められることが変化してきている。普段我々の作っている財務諸表の数値というのは一体なんなのだろうという感じ。DCFとか包括利益とかやっているわけだけれど…
「会計が経営の意思決定に役立つ情報をすべて提供できるという思い過ごしをしないことが大切」という言葉がとても印象的だった。
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Posted by ブクログ
東芝の会計不祥事等、会計の信頼性を揺るがす事件を目の当たりにし、今一度会計の役割とは何かを問うべく、複式簿記の生成・発展の歴史を辿った本書。
本書では冒頭において複式簿記の本質を、
“継続記録によるフローの側面からの損益計算と有高計算によるストックの側面からの損益計算の二重計算にあります。複式簿記が複式と呼ばれる最大の要因は、取引を単に借方と貸方の双方に分けて記帳するからでなく、企業損益を費用・収益の変動差額計算と資産・負債・資本の増減比較計算の二面から計算するところにあります”
と定義している。
では、何故それが本質と言えるのかというと、
それは、複式簿記がその揺籃期にあた -
Posted by ブクログ
商業の発展に伴って財産や売買の記録の仕方も変化する必要が生じ、その要求から簿記が誕生・進化していく様子が記載されている。
自分の資産や利益を知りたいと思ったとき、単純には棚卸しをして在庫(ストック)を計上すれば良いように思われるが、その結果の正しさ(途中で不正に商品が横流しとかされていないか?)を証明するために、売買の経過(フロー)を記録する手段として簿記が生まれてきた、とのこと。
著者の専門が会計史ということもあってか、簿記の定義などについてはいささか専門的で細かい話が多く、一般読者としては少々退屈だった。読みにくいと感じる部分もあり、編集があまり入っていないのかな、と感じた。 -
Posted by ブクログ
重金属は、文明にとっての必須元素である。金、銀は宝飾品や富の象徴として重要な役割を果たし、銅や鉄は農具や武器として文明の発展を支えてきた。鉛や錫、水銀なども古くから使用されていたし、最近は各種レアメタルが高度な科学技術の根幹を支えている。
一方で、重金属には、よく知られたように人体への毒性を持つものも少なくない。ヒ素や鉛、水銀は言うまでもなく中毒を引き起こすし、カドミウムやクロムなども廃液処理では必ず問題になる。
本書によれば、そもそも重金属が人体への害を持つ理由は、生物の進化の過程において、重金属に対する暴露が稀な現象であったから、とのことである。一方で、カルシウムやカリウム、鉄、果てはヒ素