マルチェッロ・マッスィミーニのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
読み心地がすこぶる快適で、ミステリー小説を読み進めるような構成の妙。
直前にダマシオの『自己が心にやってくる』を読んで翻訳物の神経科学は僕には早いかもと打ちのめされてたところ、救世主のような救いの手を差し伸べてくれました。しかし、カバーデザインからは堅苦しい印象を受けてたので、読み手を選ぶだろうなと少し惜しい気持ちがある。
意識とは何か?という壮大なテーマに「統合情報理論」という手法によって挑む。解き明かされる謎もあるし、まだ霞が晴れない議論(意識分布図、統合や情報を司るコアなるものの解明)がある。それでも、意識というぼんやりしたでもクリティカルな問題に対して着実に解像度が上がること間違い -
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Posted by ブクログ
意識がいつ生まれるのか。その謎にいどむ統合情報理論。それを推理小説のように、これを調べたらこうだった、次にこれを調べたらこうなっている、だから今度はこうなるのでは、と興味を途切れさせないような語り口で意識の存在への探求へ導いてくれる。脳から小脳を取り除いても意識は存在するという。しかし視床ー皮質系がやられると意識はなくなる。そこに意識が存在するのか?小脳との違いは何か?ニューロン間の接続の仕方によるらしい。左脳と右脳間を結んでいる連絡橋が大脳皮質にはあるが、小脳には存在しない。小脳は各モジュールが単独で存在するらしい。大脳皮質では縦横無尽にニューロン間に接続存在するという。
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Posted by ブクログ
ネタバレやはり意識は「自分の行動・考えを眺めること」だと思う。例えば、他者とコミュニケーションできるだけじゃ足りない。一応犬でも、猫でも、こっちが働きかければ向こうは反応する。犬だったら主人が撫でれば、嬉しいって思うだろうけど、犬が嬉しいって思うのを自分で認知してこそ「意識」だと思う。そうじゃないと、コンピュータが嬉しいって言ってるのと変わらないと思う。それらの違いは「リアルかリアルじゃないか」だけ。
例えば、人間がチャリンコ漕ぐのは無意識っていうし、これと同じ。右ペダル踏んだら左ペダル踏む。犬とのコミュニケーションはこれと一緒だと思う。
もう一個例。映画でありがちな、主人公が目覚めて「ここはど -
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Posted by ブクログ
天才脳科学者の呼び声高いジュリオ・トノーニ氏による「意識」に関する著書。脳科学をベースに情報理論や哲学、詩文など豊かな知識を生かし、意識とは何かに迫る。専門的な内容にもかかわらず一般読者向けに噛み砕いた内容で読みやすい。
トニーノ氏は「ある身体システムは、情報を統合する能力があれば、意識がある。」という命題を掲げ、φという単位を用いて統合情報理論を展開する。1.5㎏のぬめっとした物体に意識が宿るとは、なるほど不思議なものである。800億ニューロンの小脳には意識がないのに200億ニューロンの大脳で意識が生まれるのはなぜか、ダイオードの例を基にした統合有無の話はとても分かりやすい。
AIの飛躍的進 -
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Posted by ブクログ
当たり前に捉えられている意識の不思議と、意識が生じる源となるものは統合情報量であるとする統合情報理論(IIT)について書かれた本。著者の1人がIITを考案したジュリオ・トノーニであったためIITについて詳しく書かれているかと思っていたが、どちらかというと意識の不思議に主眼を置いた内容であった。
個人的に面白いと思ったのは以下の3点である。
①意識の研究には実用性が薄いと感じていたが、臨床現場での患者の意識状態(昏睡、植物状態、最小意識状態など)を判別するために、「意識とは何か?」という問いに答えるのは医療現場では喫緊の課題であるということが分かった点。
②臨床での意識状態の判別結果と、TMS脳 -
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「意識」についての脳の研究
ごく当たり前のごとく扱われているが、
非常に不思議なものである「意識」を、
脳を調べることによって解明していこうという試み。
その定義や、科学的な研究方法の確立、検証、考察と、脳科学だけに収まらない内容。
もちろんはっきりしたことは少ないのだが、
こういった第一歩のような挑戦をきっかけに
将来的に解明されていくのかと思うと、
今読めて良かったと感じる。
それと、
教養を要するような内容で、しかも翻訳本であるのに非常に読みやすい。
一般人向けに書かれたためか、イタリア人の文章がまわりくどくないのか、翻訳者が凄いのか。
とてもすっきりしていてわかりやすい。 -
Posted by ブクログ
物質としての脳からどのようにして主観的な意識体験(クオリア)が生じるのかを説明する「統合情報理論(φ理論)」の解説
●未解決問題
人間の意識には
・「脳内で情報がどのように処理されているか」という物理的過程を扱う「意識のイージープロブレム」と
・「物質および電気的・化学的反応の集合体である脳から、どのようにして主観的な意識体験が生まれるのか」
という二つの問題がある
後者はほぼ解明されていない
●「意識の情報統合理論」
トノーニの研究チーム 脳波計
・「わたし」という主観的な意識は、その意識が体験する身体の所有者にのみ存在するという考え方からスタートし、主観的に体験する情報が統合 -
Posted by ブクログ
意識があるとはどういうことか、という難しい問題に取り組む本。
AIを人工「知能」だとは、ちっとも思わないけれど、このまま、コンピュータが、ニューロン、シナプスをどんどん模倣し続け、どんどん複雑なタスクができるようになってくると、そのうち大概の事は、人間と変わらずできちゃうんじゃないだろうか、とか、そうなった時に、コンピュータには意識ができる時が来るんだろうかとか、気になるところ。
この本は、コンピュータには意識は宿らない説。
難しいテーマの割に驚くほど読みやすい。
しかし、その読みやすさは、肝心な理論の中身をほとんど議論していないからでもある。確かに、数式バンバン出てきて、面倒くさいことを更に -
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Posted by ブクログ
手のひらに乗るくらいの大きさの物質である脳に、どのようにして意識が宿るのかを説いた本。
進化の系統的にどの段階で意識が発生したのかや、人間の成長のどの段階で意識を持つのか、を説明しているわけではない。実はそう思って読み始めていた。実際のところは、意識が生まれるためにはどのような条件を満たせばよいか、が近い。
そして、その答えを導くのが「統合情報理論」である。重要なのは、情報に多様性があり、なおかつ全体が統合されているという、そのバランスである。それをΦという単位で表している。小脳はシナプスが非常に多く多量の情報を扱うことができるが、全体として統合されておらず、意識を宿すことはない。心臓は統合さ