江利川春雄のレビュー一覧
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2013年4月、自民党教育再生実行本部が発表した「成長戦略の資するグローバル人材育成部会提言」.これに連動して経済同友会が「実用的な英語力を問う大学入試の実現を」を提言.さらに6月 安倍内閣が「第二期教育振興基本計画」を閣議決定.政治家も財界もTOEFLの実態を知らずに提言を出していることに危機感を抱いた著者たちの行動が記されている.英語教育について明治時代から様々な提案が成されてきたが、はっきり言ってうまく行ったものはない.その原因は丸山真男が「日本の思想」で喝破した次の主張に尽きるのではないか.「ずっと後になって、何かのきっかけで実質的に同じテーマについて論争が始まると、前の論争の到達点か
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日本軍での教育を中心に、幕末から戦後までの外国語教育史を紹介する一冊。「続・日本軍兵士」では日本の兵站・衛生能力不足を実感したが、本書では日本の語学教育の不足を思い知らされた。どちらも近代化から無理をして太平洋戦争に突き進んだ姿が見られる。その一方で米軍の日本語教育は徹底しており、両国の力の差を改めて感じた。
・海軍機関学校で嘱託教官として英語を教えた芥川龍之介から夏目漱石夫人に宛てた手紙の一文「生徒は皆勇敢な奴ばかりで、あらゆる悪徳は堂々とやりさえすれば何時でも善になるが如き信念を持っています(事によると、この信念は軍人の間に共通な信念かもしれません) 」は、後の日本軍の行動を予感させる -
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幕末から明治維新、近代国家日本を作っていく歴史を外国語の習得という観点で再考する。
ちょうど自分の興味関心と完全に合致してることもあって、めちゃくちゃ面白かった。
「明治維新」 教科書の上では、黒船来航を契機に鎖国体制が解かれ明治政府が樹立、文明開化によって外国語が盛んに取り入れられました、というようなストーリーで語られるイメージがあるけど、この時代の変遷をつぶさに見ていくと、ペリー来航以前から外国船は日本に来ており、幕府諸藩も欧米文化を取り入れようと外国語を学んでいたことが分かる。当時のエリートたちはみんな英語を学んでいた。体系化された辞書や文法書の類いも無いなかで、列強に対抗する知識を得る -
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英語教育史の第一人者である江利川春雄氏の、『英語と日本人』に続くちくま新書第二弾。前作が、「日本における英語受容とその教育の歴史」を鳥瞰する、いかにも入門書といった様相の著作だったが、今回は「幕末と明治時代」に時代を絞って――蘭語と仏語と独語にも目を配りつつ――英語が明治維新に与えた影響について考察・解説している。
巷間では「90年代以降グローバル化の波が〜〜」といった言説が多く見受けられるが、そもそも幕末いや大航海時代以降から、既に「グローバル化」は始まっていたわけで、ずっと鎖国体制だった江戸日本は、その世界的な趨勢とは無縁で牧歌的な無風帯に居た。ところが、作者が喝破しているように、その幕末 -
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途中眠くなるところもあって、読み進めるのに時間がかかったけど、最後まで読んで良かった。
私は国語主義者で、外国語教育なんて最低限で良いと思っていたが、そんな考えもずっと昔から議論されてきたものってこと!でも、これ読んでますます国語主義への想いが強くなった。
子どもの英語教育にもやもやしてる人、読んだら良いと思う!出来なくて当たり前で、その先をどうするかは個人の問題だって割り切れる気がする。
本当に外国語が必要になったときに、何語であっても基本的な学び方をわかってたら、どうにかなるよ!
そして、AIが発達して機械翻訳が完璧になりつつある今、外国語学習の意義って大きく変わってくると思う。そ -
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先週、大学入学共通テストが行われた。
毎年、受験生が問題作成者に振り回されているが、英語もその中に入る。
去年の長文問題を見て、TOEICみたいに長くなっている印象を受けた。
問題のみならず、文部科学省の民間の英語試験を大学受験の評価に活用しようとしたとき、学校教育とかけ離れた問題や受験料などで、取りやめになった。
高校までで、習う単語数は4~5000語。
よく話題になる試験にTOEFLがある。TOEFLは、アメリカやカナダの大学や大学院を受験する外国人が受ける試験で、内容はアカデミックだ。
文科省の指導要領に沿った教育だけではとてもではないが -
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先週の大学入学共通テストが開催された、。数多くの受験生が苦しんでいるのが英語。
「入試問題と参考書からみる英語学習史」というこれまでお目にかかったことのないのが今回の本。
読んでいて不思議なのは政財界の要請で文部科学省が「実践的コミュニケーション能力」重視だ。
英会話、英会話という「英会話市場主義」あるいは「英会話カルト教」がはびこることになったが、果たして昔と比べてオーラルコミュニケーションとやらは伸びたのかな。
リーディングやリスニングで、正確に理解できないで何を話したり書いたりできない。
外国語学習に文法を理解するのは、交通ルールを知らずに車を運転 -
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面白い。
が、しかし固い。半分論文半分一般書ぐらいの感覚だろうか。論文の引用も多数あり、興味深い論文はネットで調べる事も出来るため興味のある読者には非常に有益である。また参考文献、索引まであり、本書を孫引きして本を執筆出来そうだ。
上記の通りのような適切な引用方法は、一般書として本書を読む際にはカッコ書き、引用元記載、原文引用入り乱れており、正直読みにくい。興味を持った読者も論文的に斜め読みするしかないだろう。
終章は半分おまけだろうが、「なぜ英語論争は延々と繰り返されるのか」という問いに対して、論争にけじめをつけない日本人として切っている点も面白い。が、本書テーマと少し逸脱しているために軽く -
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タイトルに興味を惹かれ、読み出した一冊。なかなかに興味深い。
幕末から明治にかけて、西欧近代国家に追いつき追い越すことを国是とした日本は、貪欲に外国語を学び、西欧の進んだ知識を取り込んでいく。しかし、時代が下り帝国主義を突き進む中、日本の軍隊は外国語教育、特に英語教育を怠り、その情報処理能力も低下したと著者は指摘する。
印象的だったのは、序章で紹介されたアメリカ軍による日本語教育である。アメリカは敵国を理解するべく徹底して日本を研究してかかる。その中には当然日本語も含まれ、十数校の日本語学校で数万人に集中訓練を施したという。注目すべきは将兵向けの教科書の冒頭に載せられた言葉。
Help! -
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西洋の知識を吸収するために英語を学ぼうとした明治時代から、受験地獄が社会問題となる大正、戦前、敵国語とされた戦中を経て、大学全入時代に突入する現代までの、英語の入試問題、参考書、予備校、通信教育の歴史。
帯には「『本音の』英語学習史」、あとがきには「『裏の』現実」と書かれていて、これまで英語教育学でもなかなか習ったことのない、日本人としての英語学習に焦点をあてている点が、まずユニークで面白い。受験勉強を経験し、例えば伊藤和夫の参考書を使って勉強したことのあるおれのような読者にとっては、受験英語に対する色々な「思い」を感じながら読むことができる。
今でこそ、ピンからキリまで参考書が出回って