川本直のレビュー一覧

  • ジュリアン・バトラーの真実の生涯
    どうして私はジュリアンバトラーの著作もアンダーソンの著作も読むことができないのか。
    どうしてこんなに興味を掻き立てる書評を前にして、インターネットで検索しても検索しても、著作が一冊もヒットしないのか。悲しい。

    20世紀のアメリカでの同性愛に対する偏見が生々しく描かれる一方で、序文から参考文献に至る...続きを読む
  • ジュリアン・バトラーの真実の生涯
    翻訳本かと思うほど緻密に作られたフィクションでした。読み終わった後に感嘆した。

    耽美な文章。
    純愛そして切なくなるような偏愛。
    登場人物の全てが愛らしくとても楽しかった。

    「あとがきに代えて」も作品の一部になっており、作者自身が感想を語る入れ子になっていて面白かった。
  • ジュリアン・バトラーの真実の生涯
    文章というか字面が美しく、史実に忠実な部分は大変忠実で、かつストーリーテリングに富み(表現、変かな)、キャラクターの造形が素晴らしい、希有なフィクション。長さもまったく苦にならなかった。

    主人公のジュリアン・バトラーは、美しく破天で、江口寿史のひばりくん以来の、魅力的な男性の女装キャラ。一方、語り...続きを読む
  • ジュリアン・バトラーの真実の生涯 試し読み増量版

    謎に迫る

    謎に包まれていた偉大な小説家、ジュリアン・バトラーの真の姿に迫る一冊です。基本的には同一作者ならば作品に一貫して何らかの主義や主張が通っているのが普通といえますが、バトラーの場合は毎回作り出す作品によって文体やニュアンス、あるいは主張が統一されておらず、それがためにかえって謎を呼んだ人物といえます。...続きを読む
  • ジュリアン・バトラーの真実の生涯
    博覧な英米文学史に基づく壮大なホラ話。でも愛と書くことについての物語でもあります。

    これがデビュー作なんて!とも思いますが、デビュー作だから詰め込めるものを全て詰め込むことができたのでしょう。(小説家としてはこれから大変なような気もしますが、これを世に出せれば著者は本望なのではないかと推察いたしま...続きを読む
  • ジュリアン・バトラーの真実の生涯
    よく調べてアメリカの小説の翻訳かのように書かれているので驚きである。実際の小説家も見てきたかのように書いてある。翻訳といわれてもわからないであろう。
  • ジュリアン・バトラーの真実の生涯
    これはやばい、きた、滅茶滅茶面白い。
    真実ってある面から見れば、全然意味無いんやねと思わせてくれる。主要参考文献さえもがどこまで事実なのかも分からず、どこまでが本当なのか?と心のどこかで目を凝らそうとするんだけれども、一蹴されることも心地よく感じる。
    いやぁ、小説ってこういうもんですよね、こんなに興...続きを読む
  • ジュリアン・バトラーの真実の生涯
    星5個じゃ足りなくて50個くらいつけたい。今年の1冊は決定した(まだ2月だけど)あまりの面白さに、読みながら何度か本をぶん投げたくなった。人は酷い本を読んだ時だけじゃなく信じられないほど面白い時にも本を叩きつけたくなるんだな。ジュリアンとの出会いの場面が魅力的で(「じゃあ花屋が来るから」)その2ペー...続きを読む
  • ジュリアン・バトラーの真実の生涯
    たいていの文庫本には、本篇の後に研究者による解説が収めてあって、本篇よりもその解説の熱さにグッとくること、良くあります。そういう優れた解説を読んでいる感じでした。

    この作品はたしかに、「ジュリアン・バトラーを求めて」の併録を以て完全版、です。本篇と後書き・バトラーとアンダーソン・僕と作者・フィクシ...続きを読む
  • ジュリアン・バトラーの真実の生涯
    妖艶な女装に身を包んだホモセクシュアルの男性として20世紀を生き、世間を震撼させるような文学作品を世に生み出しながら毀誉褒貶の中でトルーマン・カポーティやアンディ・ウォーホルらとの親交で知られたジュリアン・バトラーの生涯を描いた作品。当時のアメリカやヨーロッパの世相、そして何よりもカポーティなどの多...続きを読む
  • ジュリアン・バトラーの真実の生涯
    芸術をめぐる、無邪気な天才肌と実直な凡人との物語は既視感あるけれど、彼らが繰り広げる悲喜劇はやはりとっても面白い。
    虚構をリアルに落とし込む、作者の筆力と知識と熱量に圧倒された。
  • ジュリアン・バトラーの真実の生涯
    記憶の捏造。緻密に作り込まれた虚構により、バトラーは存在を与えられたのでしょう。フォレストガンプや歴史物もにたようなものか。
  • ジュリアン・バトラーの真実の生涯
    本編は当事者による回顧録という形でジュリアンバトラーの人物像やその関係性を描き、あとがきは第三者による調査で当事者が語らなかったことを解明して真実を添えるという構成なのかな。
    ジュリアンバトラーを裏で支えた人物との共依存や愛憎や破滅的な生活は、何となくイメージしていたものとピッタリ合って、実在する作...続きを読む
  • ジュリアン・バトラーの真実の生涯


    ジュリアン・バトラーの作品を読んでみたくなった。
    本編、あとがき 全てに魅了された。

    1冊がドキュメンタリーになっている。
    こんな作風もあるのかと、新たな読書体験とともに膨大な参考文献。
    まさに、圧巻なデビュー作!
    イッキ読みを推奨します。
  • ジュリアン・バトラーの真実の生涯
    怪作。
    本編よりも、あとがきで、その怪作ぶりが際立つ。
    こんな書き手が存在することが、なんか嬉しい。
  • ジュリアン・バトラーの真実の生涯
    エンパイアステートビルを頂点とした摩天楼は威圧的で、悪党の砦のようだったとの表現がある。超高層ビルが住環境を破壊することは随所で指摘される。芸術家的なセンスも破壊するものである。東京電力管内では2022年3月22日に停電の可能性が生じた。エレベータに依存する超高層マンションの住みにくさが改めて注目さ...続きを読む
  • ジュリアン・バトラーの真実の生涯
    アメリカ文学が全くわからないために、この本の本当のすごさはわかりませんでしたが、ものすごい質量の本でした。圧巻。知識がなくて、どれが実在の人物なのか不明。その程度の人間が読んでも読ませてしまうのがまた、すごかった。少し前のアメリカでの同性愛者目線で切り取った純愛物語として読みました。
    ★4なのは私の...続きを読む
  • ジュリアン・バトラーの真実の生涯
    1950年代に同性愛や過激な性描写で話題となったジュリアン・バトラーという作家、彼を支えたパートナーのジョージ・ジョン(アンソニー・アンダーソン)による回顧録。ジュリアン・バトラーを知らなかったが、それでも十分魅力的な作品だった。回顧録は作家が書いているので理路整然としていて本人を知らなくても十分楽...続きを読む
  • ジュリアン・バトラーの真実の生涯
    ナボコフの『セバスチャン・ナイトの真実の生涯』から借りた表題からも分かるように、世に知られた著名人の人生をよく知る語り手が、本当の姿を暴露するというのが主題だ。それでは、ジュリアン・バトラーというのは誰か。アメリカの文学界で、男性の同性愛について初めて書いたのは、ゴア・ヴィダルの『都市と柱』とされて...続きを読む
  • ジュリアン・バトラーの真実の生涯
    あたかも実在した作家のドキュメンタリーっぽい構成で書いたという着想が面白い。実際の実在した人物や出来事をうまく絡ませながら幻の作家をこの世に作り出した作品としては秀作と言ってよい。いかんせん、長い。無駄に長い。しかも小説内で架空の小説の筋書きの説明とかって要る?アレキサンドロスの件あたりはほんと苦痛...続きを読む