川本直のレビュー一覧

  • ジュリアン・バトラーの真実の生涯

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    ネタバレ

    どうして私はジュリアンバトラーの著作もアンダーソンの著作も読むことができないのか。
    どうしてこんなに興味を掻き立てる書評を前にして、インターネットで検索しても検索しても、著作が一冊もヒットしないのか。悲しい。

    20世紀のアメリカでの同性愛に対する偏見が生々しく描かれる一方で、序文から参考文献に至るまで、作者の緻密な技巧に唸らされた。

    ヘテロセクシャル、白人至上主義、男性優位社会。こういった思想は、20世紀のアメリカに限らず日本でも文学の世界に色濃く描かれている。
    文学は時代を写す鏡でもある。そういった作品を読むとき、その時代の社会通念やその裏側を考えながら読む必要があると、改めて感じた。

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    2024年01月13日
  • ジュリアン・バトラーの真実の生涯

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    ネタバレ

    翻訳本かと思うほど緻密に作られたフィクションでした。読み終わった後に感嘆した。

    耽美な文章。
    純愛そして切なくなるような偏愛。
    登場人物の全てが愛らしくとても楽しかった。

    「あとがきに代えて」も作品の一部になっており、作者自身が感想を語る入れ子になっていて面白かった。

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    2023年04月05日
  • ジュリアン・バトラーの真実の生涯

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    文章というか字面が美しく、史実に忠実な部分は大変忠実で、かつストーリーテリングに富み(表現、変かな)、キャラクターの造形が素晴らしい、希有なフィクション。長さもまったく苦にならなかった。

    主人公のジュリアン・バトラーは、美しく破天で、江口寿史のひばりくん以来の、魅力的な男性の女装キャラ。一方、語り部のジョージ・ジョンは名前の通り、凡庸で(と本人は思っている)、真面目、それでいて偏屈で嫉妬深い、とても人間的な人物で、その対称性が物語を転がしていく。
    出てくる諸国の風景もとても美しい。
    トルーマン・カポーティのオカマキャラぶりが痛快。
    しかし、すべての人々が、平等に老いて醜くなり、この世から姿を

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    2023年03月11日
  • ジュリアン・バトラーの真実の生涯

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    博覧な英米文学史に基づく壮大なホラ話。でも愛と書くことについての物語でもあります。

    これがデビュー作なんて!とも思いますが、デビュー作だから詰め込めるものを全て詰め込むことができたのでしょう。(小説家としてはこれから大変なような気もしますが、これを世に出せれば著者は本望なのではないかと推察いたします。)

    ところで主要参考文献にある
    > 吉田健一『米国の文学の横道』垂水書房、一九六七年
    これは『英国の文学の横道』ではないでしょうか。

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    2022年05月08日
  • ジュリアン・バトラーの真実の生涯

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    よく調べてアメリカの小説の翻訳かのように書かれているので驚きである。実際の小説家も見てきたかのように書いてある。翻訳といわれてもわからないであろう。

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    2022年04月20日
  • ジュリアン・バトラーの真実の生涯

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    これはやばい、きた、滅茶滅茶面白い。
    真実ってある面から見れば、全然意味無いんやねと思わせてくれる。主要参考文献さえもがどこまで事実なのかも分からず、どこまでが本当なのか?と心のどこかで目を凝らそうとするんだけれども、一蹴されることも心地よく感じる。
    いやぁ、小説ってこういうもんですよね、こんなに興奮して読んだのは久しぶり。この作家の力量は恐るべしです、次続くんかいな?と余計な心配さえしてしまう。
    とにかく震えて読め、と申し上げまする。

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    2022年04月03日
  • ジュリアン・バトラーの真実の生涯

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    星5個じゃ足りなくて50個くらいつけたい。今年の1冊は決定した(まだ2月だけど)あまりの面白さに、読みながら何度か本をぶん投げたくなった。人は酷い本を読んだ時だけじゃなく信じられないほど面白い時にも本を叩きつけたくなるんだな。ジュリアンとの出会いの場面が魅力的で(「じゃあ花屋が来るから」)その2ページを何度も読んだ。会話も含めてとっても映像的。実は中身について何も知らずに読み始めて(また!)河出という出版社のイメージも相まって混乱しまくって最後まで読んだ。登場人物も個々のエピソードも混ぜ具合が最高度に凝ってる。最後の参考資料(資料ったって!)の羅列までしっかり読ませた後に印字された、ラスト1ペ

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    2022年02月12日
  • ジュリアン・バトラーの真実の生涯

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    たいていの文庫本には、本篇の後に研究者による解説が収めてあって、本篇よりもその解説の熱さにグッとくること、良くあります。そういう優れた解説を読んでいる感じでした。

    この作品はたしかに、「ジュリアン・バトラーを求めて」の併録を以て完全版、です。本篇と後書き・バトラーとアンダーソン・僕と作者・フィクションとノンフィクション・言葉と肉体・生と死、相反する2つのものが混ざり合いぐるぐるする快感を味わえます。そして、男と女は人間を二分するものではなくただそう呼ばれているものに過ぎず、新しくて古い家族の形と愛(なんと手垢にまみれた、謎にみちた、ワイルドカードだろうか)が描かれます。

    書き溜めてきた小説

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    2022年01月30日
  • ジュリアン・バトラーの真実の生涯

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    妖艶な女装に身を包んだホモセクシュアルの男性として20世紀を生き、世間を震撼させるような文学作品を世に生み出しながら毀誉褒貶の中でトルーマン・カポーティやアンディ・ウォーホルらとの親交で知られたジュリアン・バトラーの生涯を描いた作品。当時のアメリカやヨーロッパの世相、そして何よりもカポーティなどの多数のアメリカ文学に名を連ねる作家・有名人たちとのスキャンダラスな逸話が面白すぎる。

    ・・・のだが、ジュリアン・バトラーという作家は実在しない。著者が作り上げた架空の人物である。でありながら、この語り口や実在の人物たちとのエピソードの数々はいかにもすべてが史実のような信憑性を読者に与えるには十分すぎ

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    2021年12月31日
  • ジュリアン・バトラーの真実の生涯

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    芸術をめぐる、無邪気な天才肌と実直な凡人との物語は既視感あるけれど、彼らが繰り広げる悲喜劇はやはりとっても面白い。
    虚構をリアルに落とし込む、作者の筆力と知識と熱量に圧倒された。

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    2023年11月07日
  • ジュリアン・バトラーの真実の生涯

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    記憶の捏造。緻密に作り込まれた虚構により、バトラーは存在を与えられたのでしょう。フォレストガンプや歴史物もにたようなものか。

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    2023年08月06日
  • ジュリアン・バトラーの真実の生涯

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    本編は当事者による回顧録という形でジュリアンバトラーの人物像やその関係性を描き、あとがきは第三者による調査で当事者が語らなかったことを解明して真実を添えるという構成なのかな。
    ジュリアンバトラーを裏で支えた人物との共依存や愛憎や破滅的な生活は、何となくイメージしていたものとピッタリ合って、実在する作家や著書も登場するためどこまでがリアルかの境目がわからなくなるが、それがこの本の狙いなのだろうか。アメリカの文学やローマ時代の知識が足りないため理解出来なかった点も多かったのが自分的には悔しい。
    今は当時に比べたらLGBTQに理解があるように見える時代だけどこの本の舞台になった時代の方がその本質があ

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    2023年06月17日
  • ジュリアン・バトラーの真実の生涯

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    ジュリアン・バトラーの作品を読んでみたくなった。
    本編、あとがき 全てに魅了された。

    1冊がドキュメンタリーになっている。
    こんな作風もあるのかと、新たな読書体験とともに膨大な参考文献。
    まさに、圧巻なデビュー作!
    イッキ読みを推奨します。

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    2022年08月15日
  • ジュリアン・バトラーの真実の生涯

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    怪作。
    本編よりも、あとがきで、その怪作ぶりが際立つ。
    こんな書き手が存在することが、なんか嬉しい。

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    2022年07月16日
  • ジュリアン・バトラーの真実の生涯

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    アメリカ文学が全くわからないために、この本の本当のすごさはわかりませんでしたが、ものすごい質量の本でした。圧巻。知識がなくて、どれが実在の人物なのか不明。その程度の人間が読んでも読ませてしまうのがまた、すごかった。少し前のアメリカでの同性愛者目線で切り取った純愛物語として読みました。
    ★4なのは私の教養のせいです。この本自体は★5の価値あり。

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    2022年03月02日
  • ジュリアン・バトラーの真実の生涯

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    1950年代に同性愛や過激な性描写で話題となったジュリアン・バトラーという作家、彼を支えたパートナーのジョージ・ジョン(アンソニー・アンダーソン)による回顧録。ジュリアン・バトラーを知らなかったが、それでも十分魅力的な作品だった。回顧録は作家が書いているので理路整然としていて本人を知らなくても十分楽しめた。また日本版の著者の熱意も十分に伝わってきて読み応えがあった。世界を揺るがしたジュリアン・バトラーだが、妙に特別視されるわけでなく、弱いところ、強いところがある一人の人間として描写されており、彼を取り巻く人々たちの良い関係性が描かれていた。

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    2021年12月26日
  • ジュリアン・バトラーの真実の生涯

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    ナボコフの『セバスチャン・ナイトの真実の生涯』から借りた表題からも分かるように、世に知られた著名人の人生をよく知る語り手が、本当の姿を暴露するというのが主題だ。それでは、ジュリアン・バトラーというのは誰か。アメリカの文学界で、男性の同性愛について初めて書いたのは、ゴア・ヴィダルの『都市と柱』とされているが、ジュリアン・バトラーの『二つの愛』はそれに続く同性愛文学のはしり、とされている。

    一九五〇年代のアメリカでは、同性愛について大っぴらに触れることはタブー視されていた。ジュリアン・バトラーのデビュー作も、二十に及ぶアメリカの出版社に拒否され、結局はナボコフの『ロリータ』を出版した、ある種いか

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    2021年10月30日
  • ジュリアン・バトラーの真実の生涯

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    ねぇ、ジュリアン。なんで何もかもが決まりきったように消えてなくなるのかしらね。人生ってなんでこんなに忌々しく、下らないんでしょうね

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    2025年04月27日
  • ジュリアン・バトラーの真実の生涯

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    あたかも実在した作家のドキュメンタリーっぽい構成で書いたという着想が面白い。実際の実在した人物や出来事をうまく絡ませながら幻の作家をこの世に作り出した作品としては秀作と言ってよい。いかんせん、長い。無駄に長い。しかも小説内で架空の小説の筋書きの説明とかって要る?アレキサンドロスの件あたりはほんと苦痛だった。
    ゴーストライターとしてバトラーを支えるジョージの献身な生涯は読みごたえがあった。
    実在した人物としてなんの先入観も持たずに読むと長ったらしいのを省けばいい作品だと思う。作中に出てくる数々の本のタイトルにかなり興味を持ったので時間があれば読みたいなぁと思う。

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    2022年05月16日
  • ジュリアン・バトラーの真実の生涯

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    序章を読み続いて本文Iを読み始めたときは買ったことを後悔もしたが読むのをやめるのも腹立たしいので最後まで読んでしまった。ジュリアン-バトラーとジョージ-ジョンソン(アンソニー-アンソン)との関係は離れることの出来ない腐れ縁になっていく話だ。読み終わってみればなかなか重たい話だった。

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    2022年04月04日