岡崎照男のレビュー一覧
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サモアの酋長、ツイアビによるヨーロッパ紀行を通じて感じた文明批判。ツイアビのようなピュアな目でしか見えてこない文明がもたらす暗雲を浮き彫りにしている。
サモアにあるムシロ、ヤシの木などの少ないアイテムに例えて文明が生んだアイテムを語るとこに可笑しみを感じる。数少ないアイテムで約分して語ることができるほど、文明には不要なもので溢れていることを知る。
文明は貯蓄することを知ることで現在より未来を憂うあまり不必要なほど物や金を蓄えるようになる。他に飢えているひとに分けることもせず、自分の所有物を増やし、見張り、不安に心を砕く。
執筆時である1920年から更に狂った方向に文明が進んでいるようにも見受け -
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サモアの酋長ツイアビの文明批判。彼らがキリスト教徒なのが意外だった。白人すなわちパパラギは彼らにキリスト教をもたらし、彼らを救った。しかしパパラギ自身は神を信じてはおらず、金や物や時間を盲目的に信じ、人間至上主義で生きている。サモア人たちはキリスト教がもたらされたことで古くからの偶像崇拝を捨て、大いなる心・神に感謝して平和に豊かに生きられるようになったがパパラギは現世的で金臭い偶像にとらわれ、本当の豊かさや幸せを見失い、サモア人を貧乏だと哀れみながら疲れた顔で生きている。鋭い文明批判だし、ツイアビの語ることはもっともではあるけれど、今このパパラギと同じ価値観に生きる日本で何ができるだろう。まず
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白人が作り上げた文明世界こそ進んでいて、島々で暮らすような未開発な土地で暮らす人々こそ遅れている。
一般的な認識はそうだ。
しかし、ツイアビ酋長は全てが魔法のような文明世界を目の当たりにして、その暮らしを羨むどころか、悲観した。
文明、科学が発達したことにより、物質的豊かさは手に入れたが、それと引き換えに精神的豊かさを失った白人世界。
物質的豊かさは無いものの、精神的に豊かに暮らしている未開発な土地に暮らす人々。
本来人間というものは自然の一部である。
自然、神とつながっているのが本来の姿。
そのつながりを自ら断ち切っていく白人の生活を見たツイアビの言葉は、現代社会を生きる僕達に考 -
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サモア人の酋長が、20世紀初頭に、白人についてポリネシア人向けに語った話をドイツ人が翻訳し出版したもの。パパラギとはヨーロピアン(白人)のことをさす。サモア人酋長ツイアビは、ヨーロッパの国々を回り、白人社会の文化と生活様式を正確に理解し、その思い上がった文明社会に対する批判を仲間達に話した。その話に感銘を受けたドイツ人である著者がドイツ語で出版したところ反響が大きく、瞬く間に多数の言語で出版され白人社会に広がったものである。進んだ科学技術に畏怖を感じながらも自然とかけ離れた生活をし、時間にあくせくして、お金に執着する白人を軽蔑する力強い言葉はとても印象に残った。
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往来堂書店「D坂文庫 2013夏」からピックアップした一冊。
パパラギ(白人)の文明社会に触れた西サモアの酋長ツイアビが、島の人々に語って聞かせている内容をまとめたもの。現代文明への強烈な批判であり、アンチテーゼだ。でも、小手先ではなく、人間の根源に響く話になっているので、ただ批判に終始しているようには聞こえない。
パパラギは「あの職業は尊いとか卑しいとか、しきりにごたくを並べている」が、そもそも「すべての職業は、それだけでは不完全なものなのだ」と説く。そう考えると何かフッと肩の力が抜ける。それは取りも直さず、現代文明の中でいかに肩に力を入れて生きているか、ということの証拠でもある。少し力を抜 -
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ネタバレ南太平洋の島国サモアの酋長ツイアビが、ヨーロッパをその目で見て自国で語ったとされる100年ほど前の演説集である。
第三者の視点から近代ヨーロッパを見て、徹底的な観察と批評がなされる。
それは衣服や金銭、所有に依存した精神などに始まり、あげく時間そのものや、考えることへと移る。
確かにこれらは現代人が見てもより深刻に捉えられる問題であり、もはや世界的に同一の考え方で染まりつつある。
私たちはこれらの概念や、科学技術が支える進歩を義務とした生活から抜け出すことが容易ではない。100年近く前の話だが、時代は続き不動なものとなっているらしく、今読んでも新鮮な驚きがある。
だが最終章近くでそこまで -
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「パパラギ」ツイアビ
白人の世界で1人の人間の重さを測るのは、気高さでも勇気でも心の輝きでもなく、1日にどれくらいたくさんのお金を作る事ができるか?どのくらいたくさんのお金をしまっているかである。
ギラギラ光り、ピカピカ輝き、しじゅう色目を使って自分を目立たせようとしている白人の物は、体を美しくしたとしても、その目を輝かせた事もその心を強くした事もない。
私たちの言葉に「ラウ」というのがあって、これは「私の」という意味であり、同時に「おまえの」という意味でもある。
白人はいつも早く着く事だけを考えている。早く着けばまた新しい目的に呼ばれる。こうして一生休みなしに駆け抜ける。
同じ仕事 -
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「パパラギ~はじめて文明を見た南海の酋長ツイアビの演説集~」
ウポル島、という。
オーストラリアの右上あたりに、サモアという地域があります。島々です。
その中の一つが、「ウポル島」。小さな島です。
少なくとも、この本が書かれたころは、大らかな原始共産制の暮しだったそうです。
1910年代のことです。
その島の酋長のツイアビという人が、いました。
いろいろあって、ツイアビさんは、ドイツに留学したそうです。
ツイアビさんというのは、酋長だったそうですから、ともあれ大人ではあったのでしょう。
さて、そのツイアビさんが、故郷ウポル島の人々に、
「ヨーロッパの人たちは、こんな暮らしをしているんだ -
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本書は、ドイツ人エーリッヒ・ショイルマンにより1920年に発表され、その後1977年にドイツで復刊された原書を、1981年に日本語訳、2009年に文庫にて再刊されたものである。
著者は、まえがきで「この話は、ヨーロッパ大陸の進んだ文明から自分を区別し、解放しようとする原始の人びとの呼びかけであり、それ以外のなにものでもない」、「世界大戦によって、私たちヨーロッパ人は、人間そのものに対する不信を持つにいたった。今こそもう一度、物ごとを調べ直し、私たちの文明は、果たして本当に私たちを理想へ向かわせるものであるかどうか考え直さなければならない」と語っているが、第一次大戦終戦直後のヨーロッパにあって、