マリオ・リヴィオのレビュー一覧
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数学の辿ってきた軌跡を辿り、数学と世界の関係を考える。思慮に満ちた楽しい本だった。
問いを得て想像力と可能性を広げることで心が豊かになる、という教訓的な締め方も個人的に好きだった。
↓以下、この本を読んで考えた私見。
数学は人類の発明であり、世界について知るための有効な道具である。自然に則した認識的な公理に端を発して演繹的に厳密に組み上げられていく数学のプロセスと、対称性をもち秩序に満ちた世界との相性が非常によいために、数学の導く世界と実世界が高い精度で一致する。ただし、数学が表すのは世界のごく一部であり、数学や言語では表せないがゆえに私たちには認識できないものが世界には限りなく溢れている -
Posted by ブクログ
大変読み応えのある内容。
宇宙物理学者である著者が、5人の偉大な科学者である、ダーウィン、ケルビン、ポーリング、ホイル、アインシュタインの偉業と、それぞれの偉業に伴って生じた彼らの「ミス」に着目し、その意義と貢献についてまとめた一冊。
彼らのミスは単純な誤りなどではなく、次の世代の研究にモチベーションとなるようなヒントを与えて、現代科学の進歩に大きく貢献してきたんだということがよくわかりました。
科学者どうしの当時の手紙のやりとりや、関係者への取材、著書や論文の内容など、著者がそれらを丁寧に調べてまとめており、事実関係をまとめるだけでも大変な手間がかかっている本でもあるなと思いました。
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Posted by ブクログ
新聞の書評で見て非常に興味をそそられたので早速読んでみたのですが、やはり正解でした。
ダーウィン、ケルヴィン、ポーリング、ホイル、アインシュタインという5人の科学者について、主要な科学的業績のわかりやすい説明とともに、特にそれぞれの晩年彼らが陥った、結果として誤っていた自説に対する固執を描かれており、科学の勉強になると同時に、非常におもしろい人間ドラマにもなっています。
ただ、自身科学者である作者の一貫した立場は、たとえ結果としては誤っていた説であろうと、世界の有様について深く考えた大きな仮説というのものは、それ自体として大きな意義のあるものであり、世の中に対する影響力の小さな「正しい説」より -
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遺伝のメカニズムを勘違いしていたチャールズ・ダーウィン。地球の熱伝導率が一定だと決めつけて地球の年齢を大幅に間違えたウィリアム・トムソン(ケルヴィン卿)。DNAが三重らせんだと主張したライナス・ポーリング。宇宙は定常であると信じたフレッド・ホイル。宇宙定数を自ら否定したアルベルト・アインシュタイン。科学史にその名を残した偉人たちがその業績の裏でどのような間違いを犯し、なぜそのような間違いをしてしまったのかを追求したノンフィクション。
偉人もひとりの人間であり、その間違いもまた至極、人間的でした。特にポーリングのエピソードがなかなか面白く、彼はライバルたちを出し抜くために思いついた「DNAの三 -
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ゲーデルとアインシュタインのエピソードが面白い。
数学的対象が実在するかどうかについては断片的に書かれすぎてていまいち頭に残らない向きもある。海中で生きるクラゲのように外界から連続的な刺激しか受けない生き物に離散的な自然数の概念が生じうるか?という問題は一考の価値がある。ただ、人間が感覚する外界も突き詰めれば連続的なものしかないのでは? 前景と背景を区別する境界を認知して1つ2つと離散的に対象を数えられる能力は自明ではなく、そんな能力が自然に発生しうるのは何故かと考えると、やはり自然数は何らかの意味で自然にあるんじゃないかとも思えてくる。 -
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数式を使わずに、数学とは何かを歴史から掘り起こして説明している。文系頭には最高の数学説明書。数学は発見か発明か、というのが背後にある大きな命題。発見であるということは、もともと自然の中にある規則的なものを数学という形で表すことができることを「発見」したという意味。逆に発明であるということは、ヒトの頭が数学を作り出した、という意味。神は発見か発明か、という問いと同じだ。神が自らの想像で人間を作ったのか、人間が自らの想像で神を発明したのか。
アルキメデスやピタゴラス、ガリレオ、ニュートン、ラプラスなど、数学が得意でない私でも一応は知っている人々の話を通して、カオスや非ユークリッド幾何学、ひも理論ま -
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この世界のいろいろな物事を説明し予測できてしまう「数学」は人類が発明したものなのか、それとも発見しているものなのか、という視点から数学の歴史を振り返る。
明確な結論はもちろん出ない。しかし人類が世界を前に数学的概念を作り出してそれを使って眼の前に広がる、あるいは目に見える範囲をずっと超えた世界も含めて表現しようとしてきたこと、そしてそれが驚くほど成功していることは間違いない。世界が数学で表現できて我々の生活がその恩恵をいつも受けていることは、普段は何気なく当たり前と感じてしまうが改めて考えてみると純粋に驚きを禁じ得ない。この「普通の事を改めて考えてみる」のを徹底するのが数学であり哲学だ。この本 -
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チャールズ・ダーウィンやケルヴィン卿、ライナス・ポーリング、フレッド・ホイル、アルベルト・アインシュタイン。偉大な科学者が犯した失敗を偉業とともに紹介している。失敗といっても寝坊して学会に遅刻したとか、そんなレベルではない。あくまでも仕事(研究)での失敗だ。高度な失敗であるため、科学に疎い人は、何が失敗なのか分からないと思う。それでも、種の起源のダーウィンから相対性理論のアインシュタインまで、異なる分野の科学者だと思っていたが、どんどん繋がっていく様は意外性を感じられる。一般人が楽しみで読む本ではないが、科学史に興味がある人は読んでおいて損はない。
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ダーウィン、ケルヴィン、ポーリング、ホイル、アインシュタインという、歴史上の偉大な科学者たちの「世紀の過ち」を取り上げ、なぜ彼らが間違いを犯したのか、なぜそれは修正されなかったのかについて検証されたもの。技術の未発達や宗教的なバイアスも大きな要因だが、それ以上に競争、間違いを認めたくないという感情、単純な見落とし、過剰な礼賛など、実に人間ぽいことが積み重なっての出来事なんだなあ。これ、企業経営にもかなり当てはまることだと思う。ただ、後の世から見れば結果的に間違いだったことでも、それを検証しようとする動きは科学の発展に大きく貢献している。実力がないと「世紀の過ち」も起こせないのである。
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Posted by ブクログ
ダーウィンの「パンゲン説」、ウィリアム・トムソン(ケルヴィン卿)の地球の年齢、ライナス・ボーリングのDNAの三本鎖モデル、ホイルの定常状態宇宙論、アインシュタインの宇宙項を偉大なる失敗と名付けて、その失敗を行った偉大なる科学者の偉業と失敗を巡るストーリーを順に紡いだもの。これらの「失敗」があまりにも偉大であるがゆえに一般化には向いていないので、「失敗」という観点でパッケージ化してみたものの思ったよりもエッジが立っていない印象を受けた。進化論、地球論、生命科学、宇宙論、といった現代科学の基礎を広くカバー(あとは量子論が足りないくらい)をしているところはいいところ。各科学理論に関する当時の論争に関