アーシュラKルグィンのレビュー一覧
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文化人類学的SFの泰斗、ル・グィンの短編集。初期の作品をほぼ発表順に収録しており、作家本人に寄る解説もそれぞれに添えられていて、ある意味贅沢な短編集です。
これ、鴨は10代の頃に旧版を読んでおりまして、ファンタジー系の「解放の呪文」「名前の掟」はいまでも覚えております。子供の頃は「ファンタジーなのに暗い話だなぁ」と感じた記憶が残っております。底の浅い子供時代だったなぁヽ( ´ー`)ノ
この歳になって改めて読んで、短編としての評価は難しい作品が多いな、と思います。といっても読む価値がないかと言うと全然そんなことはなく、要はル・グィン作品の「分厚さ」を理解できるようになったこの歳にして、短編だけ -
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本書は、著者がデビューした1960年頃から1975年頃までの軌跡が概観できる短篇集です。全17篇。
読んでいて真っ先に感じたことは、この作風、コードウェイナー・スミスやジェイムズ・ティプトリー・ジュニア、あるいはハーラン・エリスンの作品を読んでいるときの感覚に似ているということ。それは、読者を置いてけぼりにして勝手に物語が進んでしまっているということ。意味のわからない言葉が出てきても、何の解説もなし。時には脈絡もなく、情景や描写が一転していることもあり、何度も読み返すことに…笑 しかし、作品を読み終えた後には、何となく物語を理解できていて、だからこそ、この作風には魅力を感じるのです。
さて -
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短編集。ル・グィンが書いたファンタジーおよびSF短編、計十七篇を集めた本。中には、ゲド戦記や闇の左手、所有せざる人々、ロカノンの世界など、ほかの長編のもとになった短編がちらほら混じっていて、ファンには嬉しい一冊。
抽象的すぎたり、文章が固くてとっつきにくい作品も、なかには若干混じっているのですが、同時に、胸をうった印象深い作品も、何本もありました。クローンを描いた「九つのいのち」、エンパシー能力をもっているせいでたえず他人の悪意にさらされつづける青年を描いた「帝国よりも大きくゆるやかに」、火星の表面に何者かが残した施設によって、常人とは異なる視野を手に入れてしまった宇宙飛行士を描いた「視 -
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10年間に書いたものをほぼ発表順に収録した短編集。
17編も収録されており、読みごたえはかなりある。
解説が非常に的を射ていて、
『これらが何の説明・先入観もなく雑誌に載ったとしたら
はっきりいって、文句のない完結性を備えた短篇はほんの数篇』
だが
『各短篇が”アーシュラ・K・ル・グィン”という大長篇の部分を切り取った』
ものであるという表現が適切。
正直、彼女の世界観がとても好きな自分でさえ
受け付けられない部分や、理解し辛い部分があった。
短編としてその作品だけ読むには表現しきれておらず不完全な物が幾編かある。
ただ、こうしてまとめて読むことで多少なりともそれが緩和され、
ル・グィンとい -
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ネタバレ著者にどこまでついていけるか。寓話・神話・逸話・昔話。想像力が試された感じがする超・作品集。難解な箇所も多く、読むのに時間掛け過ぎた。完全に理解するには今の自分が持つ知識と時間では足りない。そんな具合で読み続けて印象に残ったのは以下の話。
孤独な異端者らは引き寄せ合い集う「四月は巴里」。
現実逃避ではなく己と向き合い自分探しの旅に出るような、ハヴ・ア・「グッド・トリップ」。
残された一人のクローンのその後の生き方が気になる「九つのいのち」。
最後には星の光が見えて学者も報われるがちょっと切ない終幕の「地底の星」。
など、この本書中ではどこか(解りやすく)前向きに終わる作品が好み。
そ -
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世界観や設定以上に、思索や詩情が印象的な短編集でした。というより、世界観や設定についていけなかっただけ、とも言えるけれども……。
短編集全体としてみると、正直読みにくかった。先に書いたように世界観がつかみにくかったり、設定がよく分からないまま読み進めたものもいくつかあって、ル・グウィンは短編向きの作家ではないのかな、と最初は思いました。
ただそんな短編を読み進めていくうちに、なんだか深遠で厳かな気持ちになってくるような気がします。思索的な文章や物語の世界観が、分からないなりに伝わってくるからこそ沸いてくる不思議な感覚ともいうべきか。
以前読んだ同著者の『所有せざる人々』もなかなかに難しい