博報堂のクリエイティブディレクター須田和博氏が書いた「使ってもらえる広告」をかなりの期待感をもって読んだ。
その中で印象に残った言葉が、タイトルの「ユーザーを見ろ、クリエイティブを見るな」。
知らず知らず広告制作が目的となって、本来の課題解決の手段ということを忘れてしまう、クリエイターが陥りが
...続きを読むちな考えを戒めるもの。
今に始まったことではなく、昔から何度も聞いてきた広告作りにおける基本中の基本ともいえる言葉だ。
副題「見てもらえない時代」の効くコミュニケーションとあるように、
広告が効かなくなったといわれる現在にあって、はたして効く広告とは?を
須田氏なりに検証し、今後の広告の姿ということでの提言をまとめている。
効かなくなった広告とは、たいていの場合テレビや新聞のマス広告を指すわけであるが、最後まで読んで思うことは、今後効く広告というのは「使ってもらえる広告」で、それは従来のようなテレビCMや新聞広告ではなく、WEBならではの機能性を持たせた広告に見えない、ツールのようなものだというのが須田氏の考え。
つまり、(従来のような)広告なんてもういらない、という声に対しての反論ではなく、残念ながらその通り、という結論なのである。
広告クリエイティブという枠にこだわっているから駄目で、広告という枠を飛び出せば、無限の可能性が広がっているということは間違いないと思う。が、難しいのは、会社の事情でその枠を飛び出せない場合、どのようにしてその枠を飛び出せばよいのか、わかっていてもそのロードマップが描けないことだ。
そういう意味で、自身のmixi年賀状、ユニクロのユニクロックなど、成功事例をベースとした今後の取り組み方の基本はわかるものの、事例が事例だけに、読み終わっていささか消化不良が残った。
読者が、広告の枠の中でもがいている人を対象としているのか、抜け出して新しい世界に行っている人を対象としているのか、その立ち位置の違いで、感想も180度違ってくるのであろうとも推測するが・・・
本書は、電通・佐藤尚之氏の「明日の広告」と同じアスキー新書。
佐藤氏の大ベストセラーを受けてを受けて、博報堂で同じような立場にある須田氏に白羽の矢が立ったと想像するが、内容的にも残念ながら二番煎じという域を脱していない印象。
ただ決定的に違うのは、佐藤氏の明日の広告には、旧来型のアドマンにも温かな視点が向けられていることだ。
そういう意味で、明日の広告での「明日への元気をもらった」という感情とくらべ、あらためて従来の広告の限界(特に中小広告会社における)を知るばかりで、寂しさがつのる複雑な読後感であった。
「ユーザーを見ろ、クリエイティブを見るな」つくづく難しい言葉だと思う。